「へこたれない心を育てる」- 創業10年、楽珠そろばん教室が描く21世紀型そろばん教育

『そろばん、まだやってるの?』

デジタル時代の今だからこそ、そろばん教育の価値を見直す動きが静かに広がっています。兵庫県で10年近く子どもたちの成長を見守ってきた『楽珠そろばん教室』は、その代表的な例と言えるでしょう。

月謝5000円台という親しみやすい価格で、幼児から大人まで幅広い層が通う同教室。特徴的なのは、従来の教室での指導に加え、オンラインレッスンも積極的に取り入れているところです。「朝の6時半から行う朝練」や「土曜日の暗算講習」など、ユニークな取り組みも好評を集めています。

『子どもたちの可能性を広げるのは、いつの時代も変わらない』と語るのは、代表の畠中卓人氏。2025年の創業10周年を前に、新たな挑戦を始めています。

計算力向上はもちろん、集中力や粘り強さも自然と身についていく。そんなそろばん教育の魅力を、現代の子どもたちに届けたい―。伝統と革新が調和した同教室の取り組みから、新しい学びの形が見えてきます。

伝統的な学びと現代のニーズの融合

ー まず、楽珠そろばん教室の概要について教えてください。

畠中 卓人(はたなか たくと)代表幼児から大人の方までを対象としたそろばん教室を兵庫県で展開しており、教室での対面指導とオンライン指導の両方を提供しています。現在、幼稚園児から大人まで幅広い年齢層の生徒さんがいらっしゃいますが、特に幼児と小学生がメインのターゲットとなっています。

ー そろばん教室を始められた経緯について教えてください

畠中:来年の4月で丸10年を迎えます。この教室は私自身がゼロから立ち上げましたが、父も兵庫県の東側、神戸から大阪エリアでそろばん教師をしていました。そこで2年間修業した後、エリアを変えて独立したのが始まりです。

ー 10年前といえばすでにIT化が進んでいた時代ですが、なぜそろばん教室を始めようと思われたのですか?

畠中:この業界は非常に長い歴史があり、検定試験の仕組みも70-80年前からあります。かつては銀行就職にそろばんの資格が必要だったという時代もありましたが、電卓やパソコンの普及で一旦は需要が落ち着きました。しかし、現在は脳トレや計算力向上といった観点から、新たな需要が伸びています。

スピードと正答率のバランスを上げていくという特徴は、勉強全般の準備段階として非常に有効です。そのため、10-15年前からそろばん教師の役割も変化してきています。親が子どもに習わせたい習い事のランキングでも、常に5-8位くらいをキープしています。

時代に合わせた新しい教育スタイル

ー オンラインでのそろばん指導についてどのようにお考えですか?

畠中そろばんとオンラインの相性は非常に良いと考えています。様々な習い事がオンライン化している中で、そろばんは特に適していると感じます。手元をしっかり映していただければ、指の形や動かすペースなどがよく見えるので、効果的な指導が可能です。

例えばピアノ教室では1対1の指導が基本で、20人程度見るのが限界ですが、そろばんの場合は同時に20-30人を指導することができます。そのため、講師の効率も良く、生徒さんの費用負担も抑えることができます。

オンライン指導の革新性

ー オンライン指導の具体的な取り組みについて、もう少し詳しく教えていただけますか?

畠中教室とオンラインの講師は完全に分けて運営しています。教室コースの方とオンラインコースの方、それぞれいらっしゃいますが、例えば教室コースの方が振替でオンラインを利用することも可能です。

オンラインコースはZoomを使用した双方向のレッスンを提供していますが、それ以外にも50-70本ほどの指導動画も用意しています。例えば宿題をしている時にやり方が分からなくなった場合など、これらの動画を見ながら自分で進めることができます。

このように、同じ月謝で受けられるサービスを増やしていく方針で運営しています。特別練習として、朝練や暗算講習、上級者講習などを追加料金なしで提供しているのも、そのような考えからです。

独自の教育メソッドと目標設定

ー 生徒さんへの指導で特に意識されていることはありますか?

畠中:そろばんには昔からある素晴らしい仕組みがあります。特に目標達成型の習い事として、定期的な検定試験を活用しています。具体的な目標があることで子どもたちは頑張ることができます。

そろばんは一度習得した能力が大きく低下することはありません。例えば小学生の時に1級を取得すれば、それは一生の誇りになります。おじいちゃんおばあちゃんになっても孫に言える、死ぬまで残る頑張った証になるのです。そういった価値を子どもたちにしっかりと伝えていくことを大切にしています。

脳の活性化と学習効果

ー そろばん学習は脳の発達にも良い影響があるのでしょうか?

畠中受験勉強や一般的な学習においても、「いかに正確に、いかに速く」という要素は重要です。もちろん、教科によって記憶力や理解力など、必要な能力は様々ですが、どの科目でもテストでは速さと正確性が求められます。

そろばんの上級者は6桁や7桁の暗算を一瞬でこなすことができ、そのレベルまでいかなくても、しっかり練習している生徒は計算スピードと正確性において優れた能力を身につけています。これは算数だけでなく、あらゆる学習場面で活用できる能力だと考えています。

人間力の育成

ー 「へこたれない心を育てる」という楽珠そろばん教室の理念について、詳しくお聞かせください。

畠中:そろばんの検定試験は、10級は比較的簡単で、必要な努力量も多くありません。しかし、8級、7級、6級と上がっていくにつれて、必要な努力量は大きく変わってきます。それまで同じくらいの努力で進めていた子どもたちが、突然壁にぶつかることがあります。

しかし、その壁を超えるごとに精神的にも強くなっていきます。実は、頑張らずに成功してしまう経験というのは、子どもにとって不幸な体験になりかねません。大人になってから苦労してしまうことが多いのです。むしろ、頑張っても結果が出ない経験の方が、次につながると考えています。

そろばんは非常にプリミティブな世界で、努力なしには結果が出ません。少しずつでも確実に前進していく、その過程で勉強以外の場面でも必要な能力を身につけることができます。

充実のコース展開とクラス設計

ー 提供されているコースやプランについて詳しく教えてください。

畠中:大きく分けて教室コースとオンラインコースがあり、週に何回通うかによって料金が変わってきます。そろばんは集団個別指導が基本で、習熟度に関係なく同じ部屋で指導することができます。

しかし、塾のような一斉授業とは異なり、1人の先生が教えられる人数には限りがあります。例えば、丁寧に教えたい場合は6人程度、時間を計って練習する場合でも30人程度が限度です。

特徴的なのは、特別練習の提供です。毎週月曜日の朝6時半からの朝練、土曜日朝8時からの暗算講習、そして月1回の上級者(3級以上)向け講習を実施しています。これらは全て追加料金なしで参加できます。暗算講習には海外からの参加者もいらっしゃいます。

保護者層の特徴と教室の魅力

ー そろばん教室に通わせたいと考える保護者の方々に共通する特徴はありますか?

畠中本質を求める方が多いですね。最近の習い事には「映え」を重視するものも多いですが、そろばんを選ぶ保護者の方々は、その効果を本当に期待している方が多いです。

当教室は月謝5,000-6,000円程度で通える、比較的大衆的な価格帯の習い事です。しかし、家賃が100万円、150万円するようなマンションにお住まいの方々も通われています。年収に関係なく、シンプルで素朴な方が多く、子どもの教育における本質的な価値を理解されている印象があります。

今後の展望と新たな挑戦

ー 今後、どのような点を強化していきたいとお考えですか?

畠中:大きく2つの方向性があります。1つはそろばん大会の拡充です。現在年2回開催している大会をさらに増やし、競技性やエンターテインメント性を高めていきたいと考えています。

従来のそろばん大会といえば、読み上げ暗算やフラッシュ暗算、紙のプリントで時間を計るといったオーソドックスなものでした。しかし、これからは例えば対面で後ろにスクリーンを設置し、クイズ番組のようなボタンを使って、分かった人が手を挙げて勝ち抜いていくような、より子どもたちが夢中になれる競技を作っていきたいと考えています。

2つ目は事業展開の拡大です。この業界は高齢化が深刻で、60代でも若手と言われるほどです。実際、オンラインで体験に来られる方の中には「通っていた教室が閉鎖された」という方も多く、さらには「先生が亡くなった」というケースも少なくありません。

そろばん教育は非常に価値のある文化ですので、これを守り、さらに発展させていく必要があります。そのため、現在は兵庫県のみの展開ですが、フランチャイズ方式で鳥取や横浜、東京などへの展開を計画しています。

そろばんは生涯の誇りになる

ー 最後に、入塾を検討されている生徒・保護者の方へメッセージをお願いします!

畠中:そろばんは古いイメージがあるかもしれませんが、根源的で古き良き習い事です。費用対効果も高く、効果の高い学びを提供できます。実際に教室で学ぶ子どもたちの表情を見ていただければ、その楽しさや価値が実感できると思います。ぜひ一度、体験にいらしてください。