教育のデジタル化が急速に進む中、映像授業や学習支援アプリの活用は当たり前のものとなりました。しかし、これらのツールを効果的に活用し、真の学習効果を引き出すためには、専門的な知見と経験に基づいた指導が不可欠です。
今回お話を伺った伊丹氏は、大手教育企業の映像講師として活躍する傍ら、独自の教育研究所『SRP教育研究所』を運営しています。家庭教師のトライ(Try IT:トライ イット)など、複数の教育プラットフォームで中学理科の講師を務め、さらには映像授業を行う講師への指導も手がける伊丹氏は、まさに映像教育のプロフェッショナルと言えるでしょう。
教科の専門家による徹底した個別指導と、最新の教育テクノロジーを効果的に組み合わせた独自の教育メソッド。そして何より、生徒一人一人の可能性を最大限に引き出そうとする熱意。今回のインタビューでは、伊丹氏の教育に対する深い見識と情熱に触れることができました。
SRP教育研究所の3つの指導形態と特徴
ーまずSRP教育研究所の指導形式や講師陣について教えてください。
伊丹龍義 理数系代表:SRP教育研究所では、大きく3つの部門を展開しています。月島校・森下校での対面による個別指導、オンラインでの個別指導・少人数指導、そして地域を限定した家庭教師サービスです。一般的な個別指導塾との最大の違いは、講師陣が全員社会人であり、さらに教科もしくは教育学の専門家のみで構成されているという点です。
特に中学受験や中高一貫校生へのサポートに力を入れており、多くの実績を上げています。生徒一人一人の学力や目標に合わせた丁寧な指導を心がけています。
ーオンライン指導について、具体的にどのようなツールや支援体制を整えているのでしょうか?
伊丹:オンライン指導においては、「学びエイドマスター」や「Studyplus(スタディプラス)for school」など、実績のある学習支援ツールを活用しています。これらのツールを効果的に組み合わせることで、対面指導に劣らない学習環境を実現しています。
映像教育のエキスパートとしての実績と経験
ー伊丹先生は映像教育の分野でも幅広く活躍されているそうですね?
伊丹:はい。現在、「家庭教師のトライ」の映像授業「Try IT」中学理科講師だけでなく、映像授業「学びエイド」での鉄人講師、オンライン予備校「リカベスク」顧問等も務めています。また、自身の講義動画も多数配信されています。特に中学理科の映像講師は全国的にも数が少ない状況で、その分野におけるスペシャリストとして活動しています。
ーSRP教育研究所を立ち上げられた経緯について教えていただけますか?
伊丹:私が大学院に在籍していた頃、周囲の多くが塾講師のアルバイトをしていました。しかし、一般的な塾講師としては自分が思い描くような教育を実践できない、また専門性を十分に活かしきれないという課題を感じていました。そこで、同じような想いを持つ仲間たちと「自分たちで理想の教育の場を作ろう」という考えのもと、SRP教育研究所を立ち上げました。
2015年頃からは映像教育事業にも参画し、比較的早い段階からこの分野に携わってきました。現在では映像授業を行う講師への指導も担当しており、教育のあり方そのものを追求する立場にいます。また学習塾だけでなく、学校現場での映像や機材の活用についても、積極的に関わっています。
映像授業の効果的な活用と学習戦略
ー生徒の成績向上において、映像授業をどのように活用すべきでしょうか?
伊丹:映像授業の活用には適切なタイミングと目的が重要です。例えば、教科書の内容理解が難しい段階での予習用として、あるいはテスト直前の復習用として効果的です。「家庭教師のトライ Try IT」の映像コンテンツは、教科書の前段階でイメージを作ることを重視しており、教科書を読む準備段階として非常に有用です。
また、問題演習における解説動画としても効果的です。従来は問題集の解答解説を読むだけでしたが、動画による解説があれば、まるで授業を受けているような形で理解を深めることができます。
ただし、映像授業はあくまでもインプットの手段であり、自分で考え、調べ、理解を深めていく過程は必要不可欠です。特に重要なのは、「疑問を持つ」という姿勢です。教科書を読んで「なんとなく見た」で終わるのではなく、「なぜだろう?」という疑問を持ち、それを調べる技術を身につけることが大切です。
効果的な映像学習のポイント
ー映像授業を行う際、特に意識されていることはありますか?
伊丹:映像授業は基本的に一方通行のコミュニケーションになりがちです。基本的に生徒からの反応が得られない環境での撮影となります。予備校の一部の授業では、ライブ受講者がいる状態での撮影もありますが、一般的には生徒不在の状況での撮影が主流です。そのような環境でも効果的な授業を行うために、常に受講生をイメージしながら、分かりやすい説明を心がけています。
ー成績が伸び悩む生徒へのアプローチについて、特に意識されていることはありますか?
伊丹:私の指導方針は、「興味を持つきっかけを用意する」ことです。面白そうなものを準備し、生徒の興味を引き出すように心がけています。ただし、最後の一歩は必ず生徒自身が踏み出さなければならないと考えています。
特に理科については、物理・化学・生物・地学の4分野全てに興味を持つ生徒は稀です。そのため、苦手分野でもイメージを掴めるような指導を心がけ、安定した成績が取れるよう支援しています。重要なのは、自分で考えて疑問を持ち、それを調べる習慣を身につけることです。
適切な入塾時期と学習プロセス
ー具体的な入塾時期や学習の進め方について教えていただけますか?
伊丹:中学受験に関して、入塾時期は小学5年生からが適切だと考えています。これは一般的な塾より1年遅いタイミングですが、小学4年生の段階で学習のためのスタンスを身につけ、本格的な受験勉強は5年生から開始するというスケジュールを推奨しています。
在籍時期・期間は生徒によって様々で、中学受験後に卒業する生徒もいれば、中高一貫校でのサポートを継続し、高校3年生まで、さらには浪人生として指導を受ける生徒もいます。それぞれの目標や状況に応じて、柔軟に対応しています。
教育におけるSRP教育研究所の意義
ーSRP教育研究所の最大の強みについて教えてください。
伊丹:当研究所の最大の特徴は、専門家が1対1で生徒一人一人に合わせた授業を提供していることです。例えば、数学を例に取ると、その分野に深い興味を持ち、専門的に学んできた講師は、教科の面白さをより効果的に伝えることができます。
中学生向けの数学を教える上で、高度な専門性が必要かどうかという議論はあるかもしれません。しかし、その教科に本質的な興味を持ち、深く学んできた人間だからこそ、教科の面白さや魅力を効果的に伝えることができると考えています。この専門性の高さが、私たちの大きな強みとなっています。
今後の展望と技術革新への期待
ー今後の展望についてお聞かせください。
伊丹:特定の方向性を定めているわけではありませんが、年々新しい技術が登場する中で、教育の効率化できる部分はまだまだあると考えています。新しいツールや技術が登場した際に、それらを効果的に活用できる態勢を整えておきたいと思っています。
科学技術の進歩によって学びを効率化できる可能性は常にあり、その可能性を追求し続けることが重要だと考えています。ただし、技術に依存するのではなく、あくまでも補助的なツールとして活用していく姿勢を大切にしています。
受験生と保護者へのメッセージ
ー最後に、これから受験に向かう生徒さんやその保護者の方へメッセージをお願いします!
伊丹:受験において、100%の準備ができることはまずありません。重要なのは、残された時間で何をすれば合格の可能性が高まるのかを見極めることです。特に直前期は「あれもこれも」と欲張りがちですが、最も効率の良い対策を選び、それ以外を潔く切り捨てる勇気も必要です。
人生において様々な試験に直面することになりますが、完璧な準備ができる機会はほとんどありません。今できることを確実に行い、本番で最大限の力を発揮できるよう、生徒と保護者が一緒に考えていくことが大切です。特に受験直前期は、優先順位を明確にし、効率的な学習計画を立てることが重要です。
これまでの経験から、焦って多くのことに手を出すよりも、基本に忠実に、確実に得点できる分野を磨き上げることをお勧めします。受験はゴールではなく、むしろ新たな学びのスタートラインです。この機会を通じて、生涯にわたって活用できる学習習慣を身につけていただければと思います。