「子どもの可能性を引き出す」荒木式コオーディネーショントレーニングを通じて、教育相談から運動指導まで一貫したサポートを提供

今回は、NPO法人 Human Co-ordination Academy ふくしま様にインタビューさせていただきました!

東日本大震災をきっかけに設立された団体が、荒木秀夫徳島大学名誉教授考案のコオーディネーショントレーニングを通じて、子どもたちの心身の健全な発達をサポート。運動能力の向上だけでなく、教育相談にも注力し、子どもたちの抱える様々な課題解決に取り組んでいます。


福島から栃木へ、幅広い地域で展開する運動支援活動

ーどのような地域でどういった活動をされている団体なのか教えてください。

私たちは、福島県の白河市に拠点を置き、福島県は白河市、浅川町、平田村、いわき市、棚倉町等を中心に、栃木県は足利市を中心に、荒木秀夫徳島大学名誉教授が考案されたコオーディネーショントレーニング(Co-dination Training)を通して、当法人顧問である荒木先生ご指導のもと、幼児から高齢者まで運動指導や支援、また市や幼稚園・小学校等と連携して先生方を対象とした学校支援等を行っている団体です。

震災の経験から生まれた「自分の身は自分で守る」という使命

ー団体を始めたきっかけや経緯について

東日本大震災がきっかけです。東日本大震災当時、公立中学校の教員をしており、中学生は誰ひとり亡くなりませんでした。しかし、その前に卒業生として出した子たち(高校生)のなかには、震災で亡くなった子もいました。

この経験を通して、自分で自分の身を守れる子を育てたいという思いがあったのですが、どうすればそれが可能かと考えた時に、荒木先生のコオーディネーショントレーニング理論を広めることだと思いました。実は、自分自身で判断して逃げて生き延びることができた中学生というのが、この荒木先生のコオーディネーション理論を取り入れた指導をしていた子たちでした。この経験から、荒木先生のコオーディネーショントレーニングをもっと普及させ、多くの人が自分自身の身を守れる、

そして、自身で考え行動できるような人間になれるよう尽力したいという思いから、このNPO法人を立ち上げようと思いました。

デジタル時代の子どもたちが抱える三つの課題

ー団体様の活動を通して解決したい世の中の課題について教えてください。

一つ目は、実感の伴わない言語理解が多いように感じます。新型コロナウイルス感染症が蔓延したことがきっかけで、スマートフォンやタブレット端末の使用年齢の低年齢化が進んでいます。その結果、実際に身体を動かしたことのない子どもが、SNSやインターネット上の世界での経験しかなく、それが実際のコミュニケーショントラブルやSNSトラブルに繋がっているように感じます。

二つ目は、運動面と学習面の向上と言った意味でも課題は感じています。例えば、海外であれば算数は体育館で実際に身体を動かしてプラスマイナスの計算をできるように学習する、といったことを行うこともありますが、日本では、身体を動かして学習するということが少ないので、そういった意味でも体感することで学習するということができるのでは、と考えています。

三つ目ですが、今の子どもたちは会話の中の言葉の意味を分かっているようで分かっていない、といったことも課題として感じています。その言葉を使うことで、どのような意味合いとなるかといったことや、「相手の意を汲む」「行間をよむ」といったことができずに言葉の表面上のやり取りしかできないことで、トラブルが起きてしまうという事もあります。

コミュニケーション能力低下についての問題は、これまでも指摘されてきていますが、昨今はその様相が変わってきていると思います。いずれにしても、荒木式コオーディネーショントレーニングは、運動面だけではなく学習面にも効果がある、といったものですので、どんどん広めていくことで課題を解決していけたらと考えています。

子どもの自主性を重視した指導アプローチ

ー団体を運営していく中でお客様と関わる際に意識していること、気をつけていることを教えてください。

まず、子どもたちにコオーディネーショントレーニングを指導する際には、荒木式コオーディネーショントレーニングで最も大切な「子ども自身に考えさせること」と「正しく褒めて正しく叱ること」を意識しています。どうしても、目の前の子どもたちのなかで、他の子と同じようにできない子がいると不安になったり焦ったりして、必要以上に関わり過ぎてしまったり、話しかけすぎてしまったり、最悪な場合子どもの身体に触って無理矢理身体を動かしたりする人がいます。しかし、私たちがコオーディネーショントレーニングの指導に当たる際には、指導者の「立ち姿」「言葉がけ」「声の高さ」「表情」等、様々なことが刺激となって伝わるということを念頭において、指導します。そのため、無理矢理させるのではなく、あくまで自分自身で入るタイミングであるとか、走る速さであるとかを考えさせて、自分で活動に取り組むように、工夫をしています。

荒木式コオーディネーショントレーニングは、「エクササイズ」ではなく「ムーブメント」であり、ただトレーニングメニューを行えばよいのではなく、いかに子どもたちを見取ることができるかがポイントです。その見取り方を含め、日々勉強しながら指導に当たるようにしています。

教育相談と運動指導の融合による独自のアプローチ

ー今後強化していきたい点について教えてください。

同じく荒木式コオーディネーショントレーニングを普及・実施している団体は他にもあるのですが、運動能力面やスポーツ面に重きを置いているという特徴があるかと思います。一方、私たちの団体は、指導者が元教員ということもあり、子どもたちの様々な問題を解決できるように教育相談面に力を入れた活動を実施しています。例えば、何かしら課題を抱えている子どもたちは、特徴的な動きをします。そのような子のトレーニングを実施後に、園長先生・校長先生や担任の先生、保護者の方等とお話をさせていただいて、その根本的な原因をみんなで解決していきましょうという活動をしていますので、この活動をもっと広めていけたらと思っています。

また、最初は福島県における東日本大震災での影響を考えて県内の課題を解決するための活動をしよう、という思いがきっかけとなって活動を始めたのですが、実際に活動を始めてみると全国的に新型コロナウイルス感染症の影響から課題を抱えているお子さんや先生方や保護者の方が非常に多いことが分かりました。ですので、全国各地どこでも足を運べたらと考えていますし、ご協力いただける団体さんがいましたら、ご協力いただきながらこの相談事業を広めていけたらと思います。

楽しみながら成長できる場所づくりを目指して

ーこの団体に入会を検討されている保護者の方にメッセージ等あれば教えてください。

「トレーニング」と聞くと、どうしても「きちんとできないとダメなのか」と不安を抱える方が多いと思うのですが、まずは「楽しく身体を動かすこと」がスタートだと思います。また、私たちが実施するトレーニングは、あくまで「運動遊び」として参加いただければと思っています。ですので、ぜひ、荒木式コオーディネーショントレーニングを初めて聞いたという方ですとか、コオーディネーショントレーニングの実施を希望される園や学校、団体そして保護者の方などおりましたら、お声がけいただければと思います。