書の芸術性を追求する『書魁社』―伝統文化を現代に伝える教室の挑戦

幼児から高齢者まで幅広い世代に向けて、単なる文字の練習にとどまらない書道の魅力を伝える「書魁社」。芸術としての書の表現力を大切にし、生徒一人ひとりが自立して独創的な作品を創り出せるよう指導しています。今回は書道教室としての特徴や指導方針について詳しく伺いました。

幅広い世代に向けた多様な書道指導

ー初めに、どういった方を対象にされていて、どのような指導を行っている教室なのか、教室の内容について詳しく教えてください!

 年代は本当に幅広く対応しています。基本的に小学校で国語科書写が始まるのは小学3年生からですが、当教室ではそれよりも早い年長くらいの未就学児、幼稚園生くらいから始める子もいますし、一方で定年退職されて新たな趣味を探されている60代や70代の方々もいらっしゃいます。このように非常に幅広い世代に対して、筆と墨と紙で字を書く楽しさを伝えています。

また、単に手習いとして字の練習をされる方もいれば、芸術としての書、いわゆる書のアートとしての側面を追求したいという方もおられます。当教室では、そうした多様なニーズに応えられるよう、幅広い指導を心がけています。

書道との出会いから教室運営に至るまで

ー書道教室を始められた経緯やきっかけについて教えてください!

私自身がもともと書が好きで、小学校くらいから続けてきました。高校、大学と進学する中で、より専門的に書について学んできたので、その経験や知識を活かせる職業として選びました。

ちょうど家業として書道のテキストを発行する会社がありましたので、そちらの仕事をする傍ら、高校の現場で芸術科書道の教員も務めつつ、自分の教室を運営して先ほど申し上げた幅広い世代の方々に書道を教えているという形です。

単なるコピーではない、表現としての書道を追求

ー他の教室にはない特徴や、書魁社さんの最大のアピールポイントについて教えてください!

 一般の方が考える「お習字」や「書道」のイメージというと、左にお手本、いわゆるゴールのようなものがあって、それを右側にどれだけ精巧にコピーできるかという、言葉は悪いですが「競技」のようなイメージが強いと思います。

もちろん、綺麗な文字を書くということは、まだ書き順も知らない子供たちや、上手な字が書きたくても書けない方にとっては、お手本があってそれにどうやったら近づけるかを導くことも大切な指導の一つです。

しかし、さらにその先にある「表現としての書」、つまり文字を使って自分を表現するという芸術としての書の魅力も知ってもらうことを大切にしています。そうなると、それぞれの個性に合わせた文字、専門的には「書風」と呼びますが、そういった自分だけの書の作風を見つけたり、身につけていくことが次の新しい楽しみになります。

当教室では、そこまで指導して、変な話ですが「自立」して、自分の力でどんな文字でも書けるように育てるところまで指導させていただいているのが、私たちの強みだと思います。

自立した書き手を育てる指導方針

ー受講されている生徒さんを指導する際に、特に気をつけていることや意識していること、教室全体の方針などあれば教えてください!

 まさに先ほど申し上げた通り、最終的には自分でお手本や参考がなくても独創的に書けるという「自立」を目指しています。そのため、最初から人それぞれのレベルによりますが、すぐにお手本を与えるのではなく、「自分だったらこの課題をどういう風に書きますか?」と考えさせるようにしています。

最終的に自分の力で書くことが目標であるということは、小学生から大人まで全ての生徒さんに共通して伝えています。もちろん最初からできる人はいませんので、徐々に「補助輪を外してあげる」ような感じでお付き合いしていきます。

重要なのは、単に左にあるものを右にコピーして終わりではないということを意識的に根付かせることです。これが当教室の大切にしている指導方針です。

書道の魅力を広く伝えていくために

ー今後どういった点をより強化していきたいとか、これから更に取り組んでいきたいことがあれば教えてください!

 現代は様々な習い事が多様化していますので、特に子供世代にとって、書道はどうしても地味に映りがちです。書に限らず、絵画などの芸術分野も同様だと思いますが、どうしても地味で時間もかかる分野は、なかなか継続するのが難しかったり、始める人も段々減少し、継続する人も少なくなっている傾向にあります。

しかし、書道は非常に純粋で素朴な行為でありながら、大切な文化です。その価値を知ってもらうために、間口を広げていきたいと考えています。若い世代だけでなく年配の方々も含め、様々な世代の方々に書の魅力を伝えていくことを大切にしていきたいと思います。

継続することで得られる達成感を大切に

ー最後に、ご入会を考えられている生徒さんや保護者の方々へメッセージをお願いします!

 先ほども少し触れましたが、書道は「パッパッと」自分の成長が実感できたり、すぐに結果が見える分野ではありません。しかし、長く続けて根気強く取り組んだ人こそが得られるものがあります。

もちろん気軽に始めていただくのも良いのですが、長く継続していただくことで、ご自身が満足する字が書けるようになることを目指していただきたいと思います。その過程で得られる達成感や喜びは何物にも代えがたいものです。ぜひ書道の世界に触れてみてください。