「子どもたちが自分らしく輝ける社会を」。そんな想いを胸に、NPO法人ハーモニークラブは絵本と音楽を融合させた独自のパフォーマンス「えほんライブ®︎」を展開しています。代表の井上さんは、二人の息子の子育てを通じて「個性を認め合うことの大切さ」に気づき、その経験を活かした活動を始めました。現在は、子どもたちの自己肯定感を育むだけでなく、保育士支援や学生ボランティアの受け入れなど、活動の幅を広げています。

活動概要と設立の経緯
ー NPO法人ハーモニークラブについて教えてください。
井上さん:私たちは、子どもを通して大人にも働きかけることを目指し、オリジナルの音楽と絵本を融合させた「えほんライブ®︎」というパフォーマンスを、関西を中心に教育保育施設で実施しています。
このライブを通して、自己肯定感を育む心の教育を保育や教育現場に浸透させることを目指しています。子どもたちが自分を大切にし、周りの人を愛する心を育めるよう、心に響く絵本と音楽を届ける活動を行っています。
ー 具体的な「えほんライブ®︎」の内容を教えていただけますか?
井上さん:プロジェクターで絵本の映像を投影し、物語を語りながら途中で歌を織り交ぜていく形式です。対象年齢によって内容や長さを変えており、0〜1歳児向けは5分以内、小学生や年長児、大人向けは20分弱のライブとなっています。現在10作品ほどを保有しています。
自己肯定感を育む取り組み
ー えほんライブ®︎を通して、どのように自己肯定感を育んでいるのでしょうか?
井上さん:絵本の物語と歌に「自分らしさとは何か」「自分を受け入れること」「多様性を認め合うこと」といったメッセージが含まれており、様々な個性を持った仲間を受け入れ、お互いの良さを見つけ、助け合うことでどのような結果が生まれるかを描いています。
これらを体験することで、子どもたちが自分の心に寄り添い、自分をそのまま肯定できるような体験ができるようになっています。
設立のきっかけと想い
ー 活動を始められたきっかけを教えてください。
井上さん:設立のきっかけは私自身の子育て経験にあります。個性的な息子たちを育てる中で、学校教育になかなか馴染めない子ども達を見て、当初は自分の育て方を責めていました。しかし心理学の勉強や自己分析を通じて、それが息子たちの個性であることに気付きました。
私自身の気付きから、自分の心の中で起きていることが現実を作っているという認識に至り、2010年頃に「絵本と音楽で表現して、子育て中の親御さんや保育関係者に届けたい」と考えました。姉が元漫画家で、私自身も音楽活動の経験があったことから、二人で制作を始めることにしました。
特別な事情として、姉が末期がんと診断された時期と重なりましたが、「好きなことをすることで免疫力が上がるのではないか」と考え、制作を進めました。姉と姉の娘の協力により、2011年2月に最初の絵本を自費出版し、初めてのえほんライブ®︎を開催することができました。
活動の特徴とアピールポイント
ー ハーモニークラブの特徴やアピールポイントを教えてください。
井上さん:もちろん、自己肯定感を育むという活動が大きな特徴ですが、それ以外にも様々な取り組みを行っています。特に力を入れているのが保育士さんへの支援です。保育オンラインサロンを運営し、現場の保育士さんと一緒にコンテンツを作り上げています。
例えば、子どもたちの生活習慣が楽しく身につくような保育ソングを制作しています。「オムツからパンツになったらかっこいいぞ」というパンツーマンの歌や、苦手な野菜が食べられるようになる歌など、保育現場のニーズに応えた曲作りを心がけています。
また、保育士さんの自己肯定感を高めることで、子どもたちの自己肯定感も育まれると考え、保育士同士の交流の場も提供しています。さらに、保育を目指す学生さんのボランティア活動も積極的に受け入れ、学生支援も行っています。
子どもたちとの関わり方で意識していること
ー 保護者の方やお子様と関わる際に、意識されていることはありますか?
井上さん:私自身の子育て経験から、特に意識していることがあります。例えば、えほんライブ®︎を落ち着いて見られないお子さんがいらっしゃった時、保護者の方は「すみません、周りのお友達に迷惑をかけて…」と申し訳なさそうにされることがあります。そんな時、私は必ず「お子様は、そのままで良いんですよ」とお伝えしています。
何より、保護者の方がお子様のありのままを受け入れ、安心できる場所を作ることを意識しています。それが、子どもたちの健やかな成長につながると信じているからです。
今後のビジョン
ー 今後の展望について教えてください。
井上さん:現在、地域に根ざした新しいプロジェクトを進めています。具体的には枚方市の天の川伝説をモチーフにしたえほんライブ®︎を制作中で、将来的にはこれを子ども参加型のえほんライブ®︎や子どもミュージカルとして展開したいと考えています。地域の子どもたちの自己肯定感を育むとともに、地域への愛着を深め、地域活性化にも繋げていくことを目指していきます。
保護者の方へのメッセージ
ー 最後に、保護者の方へメッセージをお願いします。
井上さん:学校教育の中では必ずしも評価されない個性でも、社会に出てから輝く可能性があります。そのため親として最も大切なことは、子どもに対する「自分は愛されている」という実感と、心の拠り所を育むことです。
ぜひ、お子様と一緒にえほんライブ®︎にお越しください。毎月第2・第4木曜日の午前10時から、枚方市牧野図書館で開催しています。えほんライブ®︎の後には、工作や交流の時間もあり、親子で楽しめる内容となっています。「自分は自分でいい」と思える子どもの姿を、一緒に見守っていけたら嬉しく思います。