プロアスリートの経験と情熱を活かし、子供からシニアまで幅広い世代の健康をサポートするNPO法人「BMKGスポーツプロダクション」。
同団体では、子供たちが本気で向き合う大切さと「夢中になれること」の価値を大切に、一人ひとりの可能性を最大限に伸ばす活動をされています。
今後は有明に新しく出来た有明親水海浜公園のビーチコートを使用したプログラムも運営予定とのことです。
代表の元競輪選手の後藤圭司さん、元ビーチバレー選手の南谷綾華さんに心身ともに健康な社会を目指す情熱的な取り組みについて、お話を伺いました。
幅広い世代に健康をテーマとした活動を展開

ー「BMKGスポーツプロダクション」ではどういった方を対象に、どのようなことを提供されていらっしゃるのでしょうか?
後藤さん:私達のNPOは子供からシニアまで幅広い世代の皆さまを対象に健康をテーマとして活動しております。
基本的には運動プログラムの提供が一番多いのですが、対象者によってプログラム内容は異なります。
子供たちには小さいうちにしか培えない運動神経を重視したプログラム、シニアの方には足腰が弱らないように健康寿命を延ばすことを目的としたプログラムを提供しています。
運動プログラムに関わるメンバーはほとんどがプロアスリート、あるいは元プロアスリートなんです。
アスリートと言えば、ずば抜けた運動力とメンタルの強さがイメージされますが、私たちは一般の方々へ通じる「心と体の健康」を大切にしています。
人は、「心と体の健康」が維持されていなければ、生活に支障をきたしてしまいます。
だから私たちは単なる運動プログラムというより、無理なく一人ひとりのレベルに合った運動プログラムを提供し「楽しく続けられることを取り組む」という気持ちや姿勢を大切にしています。
コロナ禍と競技人生の経験から生まれた使命感
ーこの活動を始められた背景やきっかけについて教えてください。
後藤さん:もともと私はプロアスリートとして活動し、この地域で「キッズメンテナンス」、子供向けの運動プログラムを提供していました。
現代の子どもは裸足になるという機会が減少し、浮指になっている子が多く身体が上手に使えず、ケガの要因になることが見受けられます。
スポーツに取り組む様々な子供たちの身体の悩みに応える内容でした。
この活動を約10年続ける中で、身体の側面以外にも子供たちに伝えたいことが増えてきたのです。
私自身は小学5年生の時にプロアスリートになる夢を掲げ、その後、競輪選手として20年間活動してきました。
他のメンバーも様々なスポーツを通して活躍してきました。
スポーツに取り組む子供たちの想いや夢が、手に取るように理解出来ます。
私たちは「夢先生」という日本サッカー協会の社会貢献事業にも参加し、全国の学校で授業をし、子供たちに夢をみることや人生の挫折体験や乗り越え方を伝える活動をしてきました。
2020年以降、コロナ禍では多くのアスリートが試合や練習ができなくなり、モチベーションを失っていきました。
今では、メジャーリーガーの大谷翔平選手の活躍で、幅広い世代に夢や希望を与え、「野球選手になりたい」子供たちも増えていると思います。
ただ、あのコロナ禍では、本来夢や希望を与えるべきプロアスリートが活躍する場を失ってモチベーションも下がっていました。
その時に、「心の健康」の必要性を強く感じたのです。
シンプルですが、コロナ禍を通して下を向いていてはダメだという想いから、この活動が始まりました。
約10年見てきた子供たちが、最近では「オリンピック」を目指す年齢になってきたので、逆に子供たちから、夢や希望を貰えるような経験をしています。
現代の子供たちに足りないものとは?

南谷さん:現代の子供たちは、我々が子供の頃に体験した「木登り」や「奇抜な遊具」での遊びの機会が少なくなっていますよね。
特に都心では、怪我や事故を防ぐために、事前にリスクを排除してしまう傾向があります。
でも本来は「これ以上行ったら怪我する」という危険察知能力も培うべきなのに、それを大人が先に取り除いてしまっている。
そういった環境が、スポーツだけでなく様々な面に影響していると感じていました。
そこで、仕事としてではなく、NPOという形で純粋に子供たちの心と体の健康を育成したいという想いが強くなったのです。
江東区の有明親水海浜公園に完成したビーチバレーコートを中心に、3世代が触れ合えるコミュニティを作り、ビーチバレーやその他のスポーツに興味を持った子供たちがオリンピックで活躍するような未来を描き始めています。
アスリートとしての強みと、子供たちの未来を見据えた活動
ー「BMKGスポーツプロダクション」の活動における強みはどういった点にあるとお考えですか?
後藤さん:私たちの最大の強みは、スタッフがアスリート集団であることです。
「アスリートとして活躍している(してきた)私たちに何ができるか」という視点から活動しているので、アスリートを目指す子供たち、そして親御さんをサポートする事が可能です。
プロアスリートとしての経験を活かし、トッププレイヤーがどうやってそこに至ったかを伝え、一緒に体を動かし、スポーツを通じて学ぶことを提供しています。
今の親御さんの中には、子供が「プロのサッカー選手になりたい」と夢を描いて、「怪我したらどうするの?稼ぐのは難しいよ」と目指す前から反対する方がいます。
私たちは、子供たちの夢を潰さないために「サッカー選手になりたい」と言う子供に、「サッカー選手になった後はどうするの?」と問いかけ、「サッカーと同じくらい好きなことをもう一つ用意するのはどう?」とアドバイスします。
例えば、「海外で活躍したいなら、スペイン語を学ばないと現地でコミュニケーションが取れないよ」と言うと、子供たちは「語学を勉強してみよう」という気持ちになる訳です。
アスリートの経験を軸に子供たちに接することで、彼らのセカンドキャリアも見据えた成長を促しています。
「夢中になること」の価値×一人ひとりの光を見つける個性を伸ばす

ー活動の中で大切にされていることを教えてください。
南谷さん:何より大切にしているのは「一人ひとりの個性を尊重してやる気を潰さないこと」です。
私たちは「アルーク・プロジェクト」という活動をしていて、「歩く」は日本語で自分の足でしっかり歩くこと、「ルーク」はラテン語由来の英語で「一人ひとりに光を当てる」という意味を持っています。
親御さんは自分の子供を他の子をと比較しがちですが、一人ひとりに違う個性や良さがあります。
一人ひとりの個性を伸ばし、光をあてるということは、誰かが変わったことを言っても「そういう考えもあるのだね」と必ず仲間をリスペクトすることに繋がります。
子供たちには子供扱いをせずに、私たちの考え方を真っすぐに伝えるので、自己肯定感が生まれ、仲間を素直に認められるようになります。
私たちは、考えを伝えるだけではなく、頻繁に子供たちと一緒にスポーツ対戦をします。
プロアスリートに負けると子供たちは悔しがり、実力差を認識し「今度は負けたくない」と更に向上心を持つのです。
子供たちには「なぜ頑張ることが必要なのか」をしっかり考えさせ、一人ひとりの個性を伸ばし「なりたい自分」に向かって「夢中になること」の大切さを常に伝えています。

後藤さん:私自身、競輪選手になるまで10代前半のころから夢中になって、夢をかなえる為だけにトレーニングに取り組んできました。
子供たちに「本当にプロになりたいの?どれくらい頑張るの?本気でプロになりたいなら、今の感覚では絶対になれないよ」と正直に伝えています。
トレーニングを通して「自分がどうなりたいか」を投げかけて考えさせ、主体的に取り組む姿勢を培いたいと思っています。
そして何より、子供たちが「夢中になること」を見つけて、「なりたい」という熱い想いを育てる過程を大切にしています。
親御さんも子供たちも、私たちと共に「夢中になること」の価値を見出して欲しいのです。
豊洲→晴海→有明 湾岸地区から運動プログラムを発信!
―今後の活動予定を詳しく教えてください。
後藤さん:約10年豊洲の地で子供たちをサポートしてきて、去年は晴海にも拠点を作りました。
こちらでは、晴海FLAGの居住者の方々との取り組みも増えてきています。
今後、大きな取り組みとしては、今年4月にオープンする有明の有明親水海浜公園のプロジェクトです。
公園内には、この地域に珍しい、ビーチコートが設置されました。
今後、周辺にはレストラン・カフェ・多目的ホールなど様々な施設もオープンし活気溢れる公園になる予定です。
私たちは、その中でもビーチコートを中心に、地域の皆さんとともに多様な年代にあった運動プログラム提供を予定しています。
幸いにもメンバーには、元ビーチバレー選手、現役のビーチバレー選手がいるのでプロ目線を入れた運営をすることが可能です。
南谷さん:自分が働いている湾岸地区に、ビーチコートを設置頂けるとは夢にも思いませんでした。
私は長年ビーチバレー選手として活動してきて、もっとビーチコートを使用したスポーツの素晴らしさを幅広い世代の皆さまに広めたいと常に考えてきました。
これを機会に、ビーチコートで「心と体の健康」を促進する運動プログラムを皆さんに経験して欲しいです。
熱い思いで子供たちの未来を創る
ー最後に、この記事を読まれた方へのメッセージをお願いします。
南谷さん:プロフェッショナルな技術を備えた、(元)アスリート集団が、本気で子供たちや大人に向き合う活動をしているのは稀少ではないでしょうか。
だからこそ、稀少価値を感じて参加してくださる皆様にこのような場所を満足していただけるように、引き続き新しいプログラムやイベントの提供をしていきたいと思っています。
アスリートが考える、「心と体の健康」そして「夢中になること」価値を大切にすることを「暑苦しい」と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は今の時代には必要なマインドだと信じています。
後藤さん:私たちの活動の根底にあるのは、日本の子供たちに活気ある未来を残したいという想いです。
子供は身近にいる親や指導者の姿をよく見ています。
夢を思い描く過程で誰と出会うかによって未来が変わることもあるのです。
「信じてくれた気持ちが今の自分を作ってくれた」ーそんな経験から、子供たちに本気で向き合い、「夢中になれること」の価値を伝えたいと思っています。
子供たちが夢中になれるものを見つけ、全力で取り組む姿を応援する。
ぜひ、私たちの活動に参加してほしいです。