郷土料理と食育で健康な未来へ!愛媛発『スマイルエプロン 食育と料理教室』の挑戦

食卓は家族の絆を深め、健康を支える大切な場所です。しかし、忙しい現代社会では、手軽さを優先した食事が増え、本来の「食」が持つ豊かさや文化的価値が薄れつつあります。そんな中、愛媛県松山市で『スマイルエプロン 食育と料理教室』を主宰する堀江優子さんは、20年間の管理栄養士としての経験を活かし、食育の大切さを伝える活動を展開しています。3歳の子どもから大人まで幅広い世代に対し、ただ料理を教えるだけでなく、食材の由来や栄養価、地元愛媛の豊かな食文化について学ぶ機会を提供。特に和食文化継承リーダーや水産女子プロジェクトのメンバーとして、日本の伝統的な食文化や魚食の普及にも力を入れています。今回は、食を通じて人々の暮らしを豊かにする堀江さんの取り組みや、愛媛の郷土料理の魅力についてお話を伺いました。

堀江 優子  yuuko  horie
愛媛県松山市在住
管理栄養士
水産女子(水産庁)
和食文化継承リーダー(農林水産省) 

 Smile⁺ Apron 代表
食育と料理教室 主宰


河原医療大学校 講師
河原外語観光・製菓専門学校 講師
多機能事業所 食育顧問

「味覚の冒険へようこそ!」- 食育を通じて家庭の食卓を豊かに

ー堀江さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!まずは『スマイルエプロン 食育と料理教室(以下スマイルエプロン)』の概要について教えてください。どのような方を対象に、どんな指導を行っているのですか?

堀江優子 主宰(以下敬称略):『スマイルエプロン』は、いわゆる普通の料理教室ではなく、名前にもある通り「食育」について広く学べる教室を運営しています。

具体的な種類がいくつかあって、まず「子ども食育レッスン」は3歳から中学生までを対象にしています。また「家庭料理レッスン」は大人向けで、男性の方も参加されます。さらに「郷土料理レッスン」では愛媛の松山地方に伝わる郷土料理をメインに学べます。

最近始めたのが「外国人観光客レッスン」です。旅行会社さんを通じての依頼が来ていて、プライベート旅行に組み込んだ形で体験型のお料理教室をしています。主に郷土料理で、愛媛でしか食べられないようなお料理を作っています。例えば、愛媛の郷土料理の松山鮓というちらし寿司があるんですが、瀬戸内の海産物がたくさんちりばめられたものです。エビやタイなどの魚介類をちりばめたお寿司や、愛媛の名産である里芋を使った「いもたき」、天ぷらなども外国人に喜ばれるメニューです。

オンラインレッスンも行っており、大人向け初心者料理レッスンや郷土料理レッスン、お子様向けレッスンも提供しています。対象年齢は3歳から大人まで幅広く、要望があれば1対1のプライベートレッスンを行っています。

「行政20年の経験が育んだ食への情熱」- 管理栄養士経験を活かした教室立ち上げ

ー堀江さんが『スマイルエプロン』を立ち上げた経緯について教えてください。

堀江:元々私は管理栄養士として行政で20年間勤めていましたが、体調を崩してしまい退職しました。管理栄養士でありながら、フルタイムで働いていた時は家族の食事に手をかけられない状況でした。仕事を辞めて、自分ができることは何かと考えた時に、これまでの経験を踏まえて、家庭の食事をもっと楽しく健康的にできるお手伝いがしたいと思ったんです。

保健センターに配属されていた時は、赤ちゃんから高齢者まであらゆる年齢層を対象に、様々な講座や個別栄養相談を行っていました。また保健所に配属されていた時は、食品業者への指導や給食施設を回って衛生管理や栄養管理をチェックするなど、幅広い業務を経験してきました。市民の方々を対象とした講座や料理教室も担当していたので、その経験を活かせると思ったんです。

「ただのレシピではなく、食の物語を伝える」- 「食育」を前面に出した料理教室としての特徴

ー他の料理教室とは違う、『スマイルエプロン』の一番のアピールポイントを教えてください。

堀江:一番の特徴は「食育」を前面に出していることです。単にお料理の作り方を教えるだけではなく、食材をありのままの姿でお見せして、特にお子さまには「これはどこで作られているのか」「どのようにして出来るのか」「どんな栄養があるのか」といったことをお話しします。そういった資料も渡していて、参加したお子さんだけでなく、保護者の方にも見てもらえるような資料や教材も一緒にお渡ししています。

私は「水産女子」という肩書も持っています。これは水産庁が管轄する、全国の魚食普及を目的としたプロジェクトで、魚をもっと食べることの重要性を伝える女性たちの集まりです。全国各地に水産女子のメンバーがいて、私のような料理教室の先生だけでなく、漁師の奥さんやお魚屋さんなど、水産業に関わる方々がプロジェクトに参加しています。

また「和食文化継承リーダー」としても活動しています。これは農林水産省のプロジェクトで、ユネスコ無形文化遺産に認定された和食文化を次世代に伝えていくための活動です。魚食と和食という2本柱でレッスンを組み立てているのが弊教室の特徴です。

子どもたちが好きな料理はハンバーグなどの洋食やおやつが多いですが、愛媛の食材を使ったり、魚を取り入れたりするなど、コンセプトを盛り込みながら楽しんでもらえるよう工夫しています。

ちなみに愛媛県は郷土料理の種類が多く、約30種類もあるんですよ。他の県よりも多い地域なんです。愛媛の食の特徴は少し甘めで、麦味噌も甘いです。でも味は濃くなく、いりこだしなどを効かせた優しい味わいが特徴です。瀬戸内海の海産物が豊富で、小魚からとる出汁や魚のアラを使ったスープなど、魚を無駄にせず大事に食べる文化があります。愛媛は海の幸と山の幸の両方に恵まれていて、海産物の種類も豊富なんです。

「一人ひとりの個性を大切に」- 少人数制で一人ひとりに合わせた実習型レッスン

ー生徒さんに指導する際に意識していることや方針があれば教えてください。

堀江:基本的に少人数制で、多くても6人程度までにしています。個人個人の料理のスキルも違えば性格も違うので、一人ひとりのスタイルを重視しています。参加者の皆さんが主体的に学べるようにサポートすることを大切にしています。切り方や手順を見せながら「あとはやってみてね」という実習型のスタイルを心掛けていますね。そのほうが身につきやすく、記憶に残りやすいと思うんです。

「食べることは生きること」- 食育の大切さ ー 健康づくりは日々の食事から

ー食育の大事さについて教えていただけますか?若い世代でも食に対する知識や習慣に大きな差があると感じるのですが…

堀江:食育という言葉は誰もが聞いたことがあるけれど、具体的な意味はぼんやりしているかもしれませんね。食事は日々の積み重ねであり、小さい頃からの習慣がとても大切です。でも、なかなか意識しないと変わらない部分なんです。

特に若い世代は元気で、少々何を食べても大丈夫だと思っているため、食に対する意識が薄くなりがちです。でも10代後半から20代の体づくりはとても重要なんです。特に女性は今やせている人が多いですが、これから出産して子どもを育てる年齢なのに、体調を崩していることもあります。実際に料理の知識も少なくて、子どもが生まれて離乳食を作る時になって困るという流れになりがちです。

学校の給食を通じた食育は行われていますが、大人になるとそれも忘れて、日々の忙しさの中で簡単に済ませてしまいます。しかし、食事は健康だけでなく、精神面でも重要です。食べて味わうことで心も穏やかになります。特に成長期のお子さんは心も体も発達する時期なので、栄養バランスの悪い食事だと、イライラしやすくなったり、集中力が低下したりすることもあります。

現代では忙しい親御さんも多く、子どもに食事について説明する時間が取れないため、私の教室に「お願いします、色々な経験をさせてあげてください」と駆け込んでくる方も多いです。そういう意識のある親御さんはまだ良いのですが、食に対する意識が比較的低い家庭も多いのが現状です。

「世界から注目される日本の食文化」- インバウンド向けレッスンの強化と料理教室の将来展望

ー今後、より強化していきたい点や新たに取り組みたいことがあれば教えてください。

堀江:今後強化していきたいのは、インバウンド関連の外国人向けレッスンですね。それを通じて愛媛の郷土料理を外国の方だけではなく、地元の方々にも知ってもらえるのではないかと思っています。外国人の方は日本食に興味を持ってくれていますが、日本人は日本食を当たり前すぎて意識していません。でも実は世界から見るととても魅力的なものなんですよ。

県外から来た方向けにも「郷土料理レッスン」を行っています。単発でも参加可能で、要望があれば日程調整して行っています。旅行の途中に料理体験をしたいという方にも対応しています。

また、新たに取り組みたいこととしては″出張料理”です。キッチンがある場所であれば出向いて、希望のお料理を提供するサービスも始めました。以前そういったご要望があったので、そういうニーズもあるのだと感じています。

「あなたの食の冒険を待っています」- スマイルエプロンへの入会を考えている方へのメッセージ

ー最後に、『スマイルエプロン』に入りたいと考えている方へメッセージをお願いします!

堀江:どうぞお待ちしています!(笑) まずは体験レッスンという形で1回受けていただき、続けたいと思った方には入会という形になります。入会金をいただきますが、月に何回通わなければいけないというノルマはありません。ご自分のペースで通っていただければと思います。

アレルギーがある方や好き嫌いがある方、お魚をメインに教えてほしいという方など、様々なご要望があると思いますが、興味を持っていただいたらどんどんリクエストしてください。可能な限りお応えします。オーダーメイドとまではいきませんが、グループレッスンでも参加者の皆さんのご意見を聞いて、なるべく作りたいメニューや使いたい食材を取り入れるようにしています。そして、一回一回の満足度が高まるよう意識しています。

愛媛の郷土料理は種類が豊富なので、初めて作る料理でも新しい発見があります。そういった体験を通して、また通いたくなると言ってくださる方も多いです。オンラインレッスンもありますので、まずは1回体験だけでも良いので、ぜひチャレンジしてみてください!