幅広い年齢層の生徒に、個々の目標や個性を尊重しながらピアノ指導を行う「嘉屋翔太ピアノ教室」。
クラシック演奏家としての活動と並行して教室を主宰する嘉屋翔太さんは、音楽の本質を言語化し、物理的なピアノの奏法と芸術的表現を結びつける独自のアプローチを実践されています。
生徒たちの音楽的成長をサポートする活動について、嘉屋さんにお話を伺いました。
幅広い層に対応する柔軟な指導スタイル

ー どういった方を対象にどのような指導をされていますか?
嘉屋さん:当教室ではターゲットを絞ったレッスンではなく、中学生、高校生、50代、60代までピアノを楽しんでいらっしゃる全ての方にピアノを指導しています。
例えば、中学生がこれからの進学先を考えた時に、音楽を一生懸命やりたいと、音大の付属高校に行きたいと考えるお子さんもいます。
逆に音楽は好きだけれども普通の高校、普通の大学行きたいと考える方もいますので、そこは柔軟にサポートしていきたいと考えています。
ー 小さなお子様にも教えていらっしゃるんですか?
嘉屋さん:小学生のお子さんもレッスンに来られていて、小さなお子さんでも指導させていただいています。
こちらで年齢でお断りすることはほぼありません。
演奏活動と指導の両立を目指して
ー ご自身がこの教室を始められたきっかけであったり、背景についてお伺いできますでしょうか?
嘉屋さん:僕自身は現在もピアニストとして活動している中で、演奏活動というのは非常にスポットの当たる部分であり、音楽をやってるのだから人前で演奏したいという想いは当然あります。
ただ、演奏会で伝わる部分だったり、耳からの情報によって伝わる部分は、難しいところもあると感じています。
例えば、どういう風に楽曲を読み解いているだとか、そういう歴史的背景を勉強して演奏しているという点は、演奏からだけでは、伝わらない部分も非常に多いと思うんです。
僕が音楽が一番楽しいと思う部分だったり、音楽の一番本質的な要素をダイレクトにその周りの人間に伝えていく方法としては、レッスンすることが非常に有用かなと思いました。
「演奏活動はある程度やったから、そこから先生になろう」といった従来のシステムでなくても良いんじゃないかと考えたことで、自分の演奏活動と教えるという活動を両立しようと思い、始めたのがきっかけです。
ー 先生のような方になりたいと考えられてお越しになる方も多いのではないですか?
嘉屋さん:そのようなケースもありますね。僕がすごく専門にしている作曲家であったり、例えば、リストの作品にすごく興味を持たれて、それをきっかけにいらっしゃる生徒さんもいらっしゃいます。
僕の後を追ってほしい、などとはまったく思っていませんが、1つの指針として使って下されば嬉しいです。
物理的な奏法と音楽表現を言葉で繋ぐ指導
ー 教室の一番のアピールポイントはどういったところだとお考えでしょうか?
嘉屋さん:僕は言葉で伝えることは非常に大事だと思っていて、例えば、「少し柔らかい音で」とか、「もう少し優しい音楽にしたい」と伝えても、具体的な奏法のアドバイスの手前で止まってしまうことが多々あると思うんです。
芸術という分野から少し離れてしまうかもしれませんが、結局ピアノというものは、鍵盤を叩いて、弦がハンマーで打たれて音が出るという機構自体は事実としてあります。
実際「柔らかい」とか「優しい」というその形容詞をどう物理的に実際の音として表現できるのか、実際のアクションとして、自分の指でどう動かすのかってところを、なるべく言葉で伝えるようにしています。
どれくらいの力で、この音とこの音をこれくらいの比率で聞かせれば目指しているように「柔らかい」という表現になるとか、他にも音同士の間隔を縮める、打鍵のスピードを遅くしてみるという物理的なアイディアと行動をもって音楽的な表現に結びつけることを意識してます。
音楽を楽しむことを最優先に
ー レッスンされる中で大切にされていらっしゃることはどういったところでしょうか?
嘉屋さん:必ずレッスンを終わった後にハッピーな気持ちで帰ってほしいというのが、1つ僕の中にあります。
僕もいろんなタイプのレッスンを受けてきましたが、やっぱり音楽をやる上で「楽しい」というのが一番必須の部分だと思うんですね。
僕の考えでは音楽をやるというのは、人前でスピーチするようなものだと思っているので、それは言葉遣いであったりとか、ジェスチャーだったりとか、表現などは人それぞれのものであり、音楽云々の前にもう既に確立されていると思います。
そこは個性としてなるべく尊重しながら、指導するということを念頭に置いてレッスンしています。
クラシック音楽と調和する生活スタイル

ー 先生は普段の生活の中で、ピアノの為に何か意識していらっしゃる習慣などはありますか?
嘉屋さん:僕はクラシック一辺倒でやってきた人間で、もちろんテレビでポップスが付いたら、別にそれは排斥せずに聞きますが、本当に自分が選んで聞く音楽はクラシックがずっと長かったので、それが自分の生活の一部になっています。
クラッシックが本当の意味で生活の一部になるためにはと考えると、時間を取って聞くものですし、なるべく時間の流れに余裕を持って生活出来るようにと考えることもあります。
クラシックは何100年と続いてきているものですから、歴史の時間の重みっていうものをなるべく感じられるような生活をしたいなと思っています。
身の回りのものも、なるべく長く触れていられるもの、長く使えるものを意識的に使うようにしています。
グループレッスンの導入など今後の展望
ー 今後、教室で新たに取り組んでいきたいとお考えのことであったり、強化されたい点はありますか?
嘉屋さん:多くの生徒さんと触れ合って、ゆくゆくは公開レッスンだったり、グループレッスンのようなこともしてみたいです。
ピアノのグループレッスンは日本ではまだ少ないんです。
例えば、定期的に会場を借りてグループレッスンをすることで、1人でやる世界になりがちなピアノにおいても、コミュニティを広げて、どういう風な考えを持っている人がいるのか、同じ作品を扱ったとしても色々な考えを持っている人がいるということを共有出来る環境を提供していきたいです。
入会を考えている方へのメッセージ
ー 入会を考えていらっしゃる方へ、メッセージをお願いできますでしょうか?
嘉屋さん:僕は先程も個性を尊重するということを少しお話しましたけれども、基本的にレッスン内で否定するっていうのはしないタイプです。
自分自身が一番のびのびと楽しめるという点が、音楽の一番大切なところだと思っているので、生徒さんの希望に柔軟に対応していきたいと思っています。
音楽は歴史的に積み上げたものですから、音楽を理解する上で、ウィットに富んだ表現であったり、面白さを見つける為のベクトルをたくさんご自身の中に持ってほしいなと思っています。
取っつきづらいものだと思わずに、少しでもピアノやりたいと思った方はぜひ門を叩いて頂けると嬉しいなと思います。