フィリピンの離島と日本の子どもをつなぐ教育支援 – 特定非営利活動法人ゴーシェアのナノイ聖子さんにインタビューしました!

特定非営利活動法人ゴーシェアは、フィリピンと日本を拠点に15年以上にわたり子供への支援を行ってきました。

代表のナノイ聖子さんに、フィリピンの離島での支援活動と、その経験を活かした日本の子供たちへの教育プログラムについてお話を伺いました。

途上国の子供たちと日本の若者をつなぐ架け橋に

ー団体の概要について教えてください。

ナノイ:当団体はフィリピンのセブ島に拠点を置き、主に離島エリアの貧困地域に於いて、子供たちにフォーカスを当ててコミュニティを支援する活動を行ってきました。

近年はその経験を土台に、これからのグローバルな社会を生きる日本の若者たち、特に学生に向けた活動を併せて展開しています。

ー団体設立のきっかけや経緯について教えてください。

ナノイ:15年ほど前、フィリピン離島の貧困地域である小さな島に滞在しました。

そこでは人々の温かさや明るく生活する姿に心の安らぎを感じたのですが、その生活は電気・ガス・水道は無く、衛生環境も良くない生活環境で、教育環境も貧弱な施設の小学校が一つあるだけでした。

そこでの生活の中で、この地域の生活改善のために自分にもできることがあるのではないかと思い活動をスタートさせました。

フィリピンに移る前は、日本で不登校の子供たちの支援に関わっていました。途上国と日本では子供たちが置かれている状況は大きく違っていますが、それを解消するために支援活動が目指すところでは共通点があると意識しました。

途上国では子供たちにとって物質的、健康的な環境課題が顕著ですが、日本では心理的に不安感を抱くことに繋がる社会状況があると思います。

子供たちが健全に育っていけることを願って支援していくということでは同じだという思いで、子ども支援に取り組むようになりました。

自立支援と教育を通じたコミュニティの変革

ーフィリピンでの支援活動について、詳しく教えてください。

ナノイ:地域の生活改善に向けて最初は物資の寄付から始めましたが、そのような活動では根本的で将来に渡る改善には繋がらないことに気づきました。

当事者自身の足で立って自走できる環境を整え意識の変革にも繫げることが大事だと考え、産業と雇用を生み出すことにフォーカスしました。

まず、観光地であるセブ島の特性を活かし、地元の人たちが持つ知識や経験を共有する新しい形のエコツアーやホームステイプログラムを立ち上げました。

現地の子供たちに向けた教育面での支援については、ラーニングセンターを建設してインターネットを導入し、デジタルデバイドの解消に取り組んでいます。

また、教員不足に対応するため、団体から資格を持つメンバーを派遣して教育支援も行っています。併せて健康補助プログラムとして、定期的な炊き出しや栄養改善メニューの家庭への情報発信を行っています。

当初は途上国支援にフォーカスしていましたが、私たちのもとに学習体験に来た日本の学生たちが現地の環境の中で人々との触れ合いや学生同士の交流を通して、内面的に変化していく姿を見て、このような体験が大きな糧になることを感じてこのような経験を活かした取り組みを始めました。

例えば、自信をなくしていた日本の中学生が現地での体験を通じて自分に自信を持つようになり、帰国後は通信制高校や大学に進む等自分の進路を決めたり、途上国のボランティア活動に意欲を向ける例もあります。

コロナ禍では「学びを止めない」をコンセプトに、オンラインで両国をつなぐ活動を展開しました。

現在は日本にも拠点を持ち、フィリピンからメンバーを招いて途上国の現状や文化の違いを学ぶ機会を提供しています。

当事者視点と自己肯定感を育む独自の支援

ー貴団体ならではの取り組みがあれば教えてください。

ナノイ:私たちの特徴は、離島支援のための船を所有し、フィリピンの中でも特に貧困度が高いにも関わらず支援の手が殆ど届かない離島エリアでの支援に重きを置いていることと、運営メンバーに支援地出身者を積極的に登用していることです。

この国でも学歴や社会的地位がないと島を出て職を得ることが難しい状況です。私たちは当事者意識を重視し、スラムエリア出身の若者たちを雇用しています。

島の人たちにとっても、自分たちと同じ境遇の人が実際に職を得て活動を運営していることが励みになっています。

ー活動を通じてお子さんと接する際に、特に意識していることはありますか?

ナノイ:フィリピンの子供たちに対しては“気の毒な”という意識で接するのではなく、彼らの持つ音楽の才能や人に笑顔で接する良さ、乗り越えようとするパワーなど、素晴らしいところを伝えるようにしています。

日本の子供たちには「あなたはあなたらしくでいい、ありのままで価値がある」ということを伝えられたらと思っています。

日本の子供たちは自覚していなくても道徳観や協調性が高く、例えば学校での掃除や給食の後片付けなど、世界的に見れば特別なことを当たり前にしています。彼らが秘めているポテンシャルを引き出せるような関わり方を意識しています。

多様な学びの場を広げる未来へ

ー今後より強化していきたいことを教えてください。

ナノイ:フィリピンでの支援を続けながら、多様な学びを求める日本の教育機関とのパートナーシップを強化したいと考えています。

途上国での体験は日本の子どもたちの心を強くし、情緒を豊かにし、グローバルな視野とコミュニケーション力を育みます。

学校だけでなく塾やフリースクールなど多様な教育機関と連携し、現地に行けなくてもオンラインで学べるプログラムも充実させていきたいです。

ー最後に、この記事をご覧になる方へメッセージをお願いします。

ナノイ:世界はますます多様になり、様々な選択肢があります。自分と異なるバックグラウンドの人々や社会から学ぶことで、人生がより豊かになると感じています。

私たちも子ども達が展望をもって生きていけるよう、多様な学びの場を創る活動を続けたいと思います。読者の皆さま方にもぜひそういった機会に参加したり、支援協力するなどしたりしていただけたら嬉しいです。

教育は人間一人ひとりにとっても、延いては社会のより良い進歩の底力でもあると思います。お互いに学び合い、成長していける社会を共に創っていけたらと願っております。

ありがとうございました。