「楽譜の向こうに広がる世界」― 『ピアノ教室 さくら』 原田佳子氏が語る音楽の可能性

『ピアノ教室 さくら』は、千葉県佐倉市を拠点に18年という長い歴史を持つ音楽教室です。主宰の原田佳子氏はブルガリアで学んだ経験を持ち、ロシア音楽に精通した個性的な指導者として地域で信頼を集めています。3歳から75歳までの幅広い年齢層に対応し、「楽しみながら成長する」という理念のもと、一人ひとりの目標や希望に寄り添った丁寧な指導を行っています。

特筆すべきは、ピアノだけでなく沖縄の三線やキーボードのレッスンも提供するなど、生徒のニーズに柔軟に応える姿勢です。また、必要に応じて生徒のレベルに合わせた楽譜を作成するなど、きめ細かなサポートも行っています。

今回のインタビューでは、原田氏の音楽教育に対する熱い思いや、コロナ禍を経て新たに模索する発表会のあり方、そして何より「音楽を通して様々な面から豊かになる」という独自の教育哲学について伺いました。音楽を始めようか迷っている方に向けた力強いメッセージにも注目です。

原田佳子(はらだ よしこ)
フェリス女学院大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒業。卒業後、同大学音楽学部副手として大学に勤務する。ブルガリア・ルサルカ夏期音楽アカデミーに参加し、J.ザハリエヴァ氏に師事、在学中のオーディションでディプロマ賞受賞、修了演奏に出演。T.クロイツベルガー氏のマスタークラスを受講。
これまでに、清水美和子、武田真理、小林秀子、A.セメツキーの各氏に師事。現在、ヤマハPSTA認定講師。PTNA指導会員。R4年度 四街道市公民館事業 福寿大学 講師。

「3歳から高齢者まで」老若男女に門戸を開く多彩な音楽教室

ー 原田さま、本日はどうぞよろしくお願いいたします!まずは『ピアノ教室 さくら』の概要についてお伺いしてもよろしいですか?

原田佳子 主宰(以下敬称略):ご年齢は小さいお子さんから高齢の方まで幅広く対応しています。現在、最年少は3歳のお子さんから、最年長は75歳ほどのご高齢の方まで、実に幅広い年齢層の生徒さんが通ってくださっています。何より「楽しくピアノが弾けるようになる」ことを第一に考えた教室づくりを心がけています。

ー 年齢は特に定めていないということですが、3歳以下でも対応可能ですか?

原田:3歳未満のお子さんでも、ご希望があれば喜んで対応します。これまでに入会された小さなお子さんは、「音楽に触れさせたい」という親御さんの思いからレッスンを始められることが多いですね。一般的に3歳頃になると椅子にきちんと座れるようになり、ピアノの基本的な動作も可能になってきます。ですが、より早い時期から音楽環境に触れさせたいというご家庭には、できる範囲でレッスンの機会を提供していきたいと考えています。

国際経験が育んだ音楽への情熱―ブルガリアからの帰国後に教室を設立

ー 原田さまがこちらの教室を設立した経緯やきっかけをぜひ教えてください。

原田:小さい頃から私自身もピアノを続けてきたことが原点です。一時期は学校教員を強く志望していたこともあったのですが、大学時代に海外留学の機会を得て、国際的な音楽文化に触れたことで、改めてピアノ演奏と指導の道を真剣に目指したいという思いが強くなりました。音楽全般ではなくピアノに特化して、長く続けていきたいという思いから、ピアノ教室を開くことを決意しました。

大学卒業後は大手の音楽教室に所属して経験を積み、その後、結婚を機に転居したことをきっかけに『ピアノ教室 さくら』を立ち上げました。

「厳しさより楽しさ」現代の子どもたちに寄り添う独自の指導法

ー ホームページを拝見して、原田さまの経歴が非常に華々しいと感じました。これまでの活動や専門分野について少しお話いただけますか?

原田:ブルガリアで音楽を学びました。私の師事した先生がロシアで育たれたピアニストだったため、ロシア音楽を中心に学ぶ機会が多かったんです。ブルガリアとロシアは違う国ですが、首都ソフィアにはロシアを含めた様々な国の先生方が多く集まっていました。私はロシア音楽に強い関心を持っていたので、そこで学ぶことができたのは貴重な経験でした。

ー なぜロシア音楽が好きになったのか、何かきっかけがあるのでしょうか?

原田:ロシアの音楽はとても魅力的で、「かっこいい」と感じていました(笑)。ロシアは芸術が非常に発達している国で、その音楽性に中高生の頃から強く惹かれていたんです。大学時代にお世話になった先生は当時、日本とロシアとを往来されていて、先生のご主人もロシアのピアニストでした。そのご縁もあって、ブルガリアに留学する機会をいただきました。

「演歌からクラシックまで」一人ひとりの希望に合わせたオーダーメイドレッスン

ー ピアノ教室は他にもたくさんあると思いますが、『ピアノ教室 さくら』の一番のアピールポイントについて、ぜひ教えてください。

原田:何よりも「楽しみながら成長してほしい」という思いを大切にしています。私たちが育った時代は厳しい指導が一般的で、練習しないと怒られたりするような時代でした。しかし、今の子どもたちは多忙で、様々な習い事や学校の予定が詰まっています。空き時間さえも何かで埋まってしまうような状況で、練習時間の確保が非常に難しくなっています。

音楽大学を目指すのでなければ、毎日何時間も練習するというのは現実的ではありません。そんな中でも「楽しく感じながら上達する」ということを常に目標に掲げ、レッスンを進めています。限られた時間の中で、どれだけ生徒さんの才能を伸ばせるかを考えながら日々指導しています。

ー 幅広い年齢層の生徒さんがいらっしゃいますが、「楽しむ」ということを伝えるために年齢によってアプローチを変えたりしていることはありますか?

原田:生徒さんによって「こんな曲が弾きたい」「こういう風に弾けるようになりたい」という希望は様々です。毎回のレッスンで、その方の目標や希望を丁寧に聞き取り、できるだけそれに近づけるような指導を心がけています。

例えば、ご高齢の生徒さんは「演歌を弾きたい」などの具体的な希望をお持ちの方が多いです。適切な難易度の楽譜が見つからない場合は、その方の技術レベルに合わせて楽譜をアレンジしたり、新たに作成したりすることもあります。一人ひとりに合わせたオーダーメイドのレッスンを大切にしています。

「音符から学ぶ人生の知恵」生徒との対話から広がる音楽の可能性

ー 生徒さん達を指導する際に、特に意識していることや、方針などがあれば教えてください。

原田:生徒さんのご意見や希望に耳を傾けることを何よりも大切にしています。またレッスンではピアノだけでなく、日常のことについても会話を交わします。生徒さんが日々の出来事を話してくれることで、その方の気持ちや状況をより深く理解できるからです。可能な限りレッスンの前後に少し時間を取り、ちょっとした会話を通して信頼関係を築いていくようにしています。

ー ホームページには「音楽を通して様々な面から豊かになれるように」と書かれていました。「音楽を通して様々な面から豊かになる」とはどのようなことだとお考えですか?

原田:印象的なエピソードがあるんです。小さなお子さんが学校で分数を学習する際、ピアノで音符を読んできた経験から「4分の1」や「2分の1」といった概念をすんなり理解できたというケースがありました。お母様からも「幼稚園の頃からピアノを習わせて良かった。音符の拍子感覚が自然と身についていたので、算数の理解にも役立った」と喜びの声をいただきました。

音楽は、数学的な理解力を育むだけでなく、対人関係のスキルにも良い影響を与えます。例えば歌の伴奏をする際には、歌い手のタイミングやブレスの間合いを察知する必要がありますが、これは日常会話で相手の反応を見ながら話を進めることに似ています。相手がどう反応するか、どう言えば喜んでもらえるかを考える力にも繋がるんです。

ピアノを習うことで得られるものは演奏技術だけではありません。様々な場面で「音楽を学んで良かった」と実感できる豊かな人生を送ってほしい—それが私の願いです。

三線からキーボードまで!生徒のニーズに応える多彩なコース展開

ー 開講しているコースやプランについて、それぞれ簡単にご説明いただけますか?

原田:ピアノのコースは、初級・中級・上級と分かれています。初級の中にも段階があり、上達に伴いレベルアップしていくようになっています。

ピアノ以外には、沖縄の三線”でお通いいただいている生徒さんもいらっしゃいます。私が三味線を弾けるので、元々三味線は教えることができたのですが、「三線が習いたい」とおっしゃった生徒さんがいらしたので、一緒に取り組んでいます。弾き方は基本的に同じですので、細かな違いはありますが対応することができました。

また、「ピアノは大きくて家に置けない」とおっしゃる方のために、大人のキーボードコースも設けています。キーボードでもレッスンできるよう取り組んでいます。

コロナを乗り越えて―アットホームな発表会で育む「音の交換」

ー 今後こういった点をより強化していきたい、取り組みたいということがあれば教えてください

原田:コロナ禍以降、大規模な演奏会活動が減少していました。昨年(2024年)末には「クリスマスおさらい会」という小規模なコンサートを開催しましたが、外部の会場ではなく教室内で実施しました。この教室内での発表会が思いのほか良い雰囲気で、これからもこうした機会をもっと増やしていきたいと考えています。

パンデミック前は、より頻繁に発表会を開催していたのですが、コロナ禍では会場予約の難しさや、共用ピアノへの接触制限などの課題がありました。現在は状況も改善してきましたので、演奏会活動を徐々に復活させていきたいと思います。ただ、いきなり大きな会場での発表会は生徒さんへの負担も大きいので、まずは教室でのミニコンサートから始めていこうと考えています。

ー 教室内でのミニコンサートも面白い取り組みですね。

原田:何より「音楽の交換」ができることが大きな魅力だと感じています。個人レッスンでは自分だけの演奏に集中しますが、みんなで集まって同じ曲を一人ひとり弾くと、それぞれの解釈や表現の違いが明確になります。この「音の交換」を通じて、生徒さん同士が刺激し合い、学び合える環境を作っていきたいですね。これからも積極的に取り組んでいきたいと思います。

「始めたい」その気持ちを大切に―音楽への第一歩を応援します

ー 最後に、『ピアノ教室 さくら』に入会を考えている方々や興味を持ってくれた方々に、メッセージをお願いします!

原田:ピアノを「始めてみようかな」と思った、まさにその「今」が最も大切な瞬間だと思います。いつも新しく入会される方々にお伝えしているのですが、ご本人が「やってみたい」と感じたり、保護者の方が「子どもに習わせてみようかな」と考えたりする、その熱い気持ちが湧いている時こそ、始めるのに最適なタイミングなんです。

迷っていらっしゃる方には、ぜひその一歩を踏み出していただきたいと思います。新しいことを始めるには確かに勇気がいりますが、音楽を学ぶことは子どもたちの様々な能力を育み、多方面での活躍につながります。また、大人の方や高齢の方にとっても、豊かで充実した時間を過ごすきっかけになると確信しています。その第一歩を踏み出す勇気を持っていただければ、とても嬉しく思います。