フルートが上手く吹けない悩みを解決 — 吉本奈美先生が明かす指導の秘訣とフルートの魅力

「フルートは音が出ない」「どう吹けば良いのかわからない」 — 管楽器の世界、特にフルートの演奏においては、このような悩みを抱える方が少なくありません。その中で、奏法の悩みを抱える多くのフルート愛好家から「駆け込み寺」と呼ばれる存在がいます。それが、『フルートラボ音楽教室』を主宰する吉本奈美先生です。

自身もかつて大学時代に深刻な奏法の壁にぶつかり、「もうフルートを辞めようか」と悩んだ経験を持つ吉本先生。その挫折と克服の過程で得た知見を生かし、今では多くの生徒さんの演奏の悩みを解決へと導いています。大人の生徒さんを中心に、独自のアプローチで「楽しくフルートを吹きながら、いつの間にか上達している」という理想的な学びの環境を作り上げています。

今回はそんな吉本先生に、フルート演奏の難しさや教室の特色、指導方針について詳しくお話を伺いました。

フルート:吉本 奈美(よしもと なみ)
神奈川県(平塚市・茅ヶ崎市)出身
5歳からピアノ、13歳からフルートを始める
神奈川県立平塚江南高校 卒業
東京学芸大学教育学部G類(芸術スポーツ文化課程)音楽専攻 卒業
東京学芸大学大学院修士課程教育学研究科音楽教育コース 修了
全日本学生音楽コンクール 入選
フルート・デビュー・リサイタルに出演
ソリストとして湘南チェンバーオーケストラ、ユーゲントフィルハーモニカー、学芸フィルハーモニア等と共演
これまでにフルートを内田秀夫、神田寛明、清水和高の各氏に師事
在学中にマクサンス・ラリュー氏の公開マスタークラスを受講
その他海外で行われたマスタークラスにも積極的に参加し、
ジャン・フェランディス、ペーター・フェアホイエン(ピッコロ)、
エディス・ファン・ダイク、エヴァ・アムスラーら各氏のマスタークラスを修了

現在はフルート・ラボ代表・講師、県内外の吹奏楽部やオーケストラ部のトレーナーを務め、オーケストラ・室内楽などに於いて演奏活動を行う
東京都部活動指導員
元小学校非常勤音楽教諭

奏法の悩みを救う”駆け込み寺”としての使命

ー吉本先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします!まずは、『フルートラボ音楽教室』の概要ついて教えていただけますか?

吉本奈美先生(以下、敬称略):基本的に小学生からご高齢の方まで幅広くレッスンをしているんですけれども、ボリュームゾーンは50代から60代の方々です。経験者の方が多く、体験レッスンにいらっしゃる方は「音が上手く出ない」「大手の教室に通っていたけれど上達しない」といった奏法の悩みを抱えているケースが目立ちます。

私自身がフルート演奏で様々な奏法の悩みやスランプを経験してきたので、そういったお悩みの解決に特化したレッスンを提供しています。一方で中学校や高校でも吹奏楽部の指導を行い、初心者の方も指導しています。ブログでもトラブル解決法について多く発信しているため、悩みを抱えた方がレッスンに来られることが多いですね。

力を入れるほど遠ざかる音色 — フルートならではの矛盾した難しさ

ーフルートの演奏で、特に難しいところはどのようなところなのでしょうか?

吉本:管楽器はピアノなどの楽器とは異なり、最初の一音を鳴らすのがとても難しい場合があります。フルートは管楽器の中でもリードを必要としないシンプルな楽器で、自分の息を頭部管の穴(歌口)に当てて音を出すのですが、唇と歌口の位置関係やフォームが分かりにくく、初めて吹いた時は全く音が出ない方もいます。管楽器では通常音を鳴らすために「アンブシュア」をしっかり作らなければなりません。「アンブシュア」とはその楽器を吹くための唇の形や筋肉の使い方のことを言います。

しかし、フルートはそれを強く意識しすぎると逆に音が出にくくなることがあります。力を入れれば良いというものではなく、「吹こうとし過ぎると吹けない」という矛盾した難しさがあるんです。慣れてしまえば自然に吹けるようになりますが、この掴み所のなさに悩む方が多いですね。

演奏者から指導者へ — 自然な流れで始まった音楽教室の軌跡

ー吉本先生がフルート教室を開かれたきっかけを教えていただけますか?

吉本:教室の開業は自然な流れで始まったといえます。大学院まで進学し、どのように音楽の道を進んでいこうか模索していました。そんな時、吹奏楽部の指導などの仕事をいただくようになり、教える道が開けてきたんです。

最初は登録サイトを通じて生徒さんを紹介していただいていましたが、ブログを始めたことで徐々に個別の問い合わせが増えてきました。「演奏専門になるのもいいけれど、教える道も自分に合っている」と考えるようになったんです。約10年前に開業を決意し、音楽好きな家族が住む実家の防音室を借りる形でスタートしました。

ー現在も演奏活動はされているんですか?

吉本:オーケストラに所属して、演奏活動は続けています。現在は子育て中のため自主企画のコンサートは難しいですが、将来的には地域での音楽活動も広げていきたいと考えています。

他にはない三つの強み — トラブル解決力・伴奏力・独自教材

ー他にもフルート教室はありますが、『フルートラボ音楽教室』ならではの強みについて教えてください。

吉本:最大の強みは奏法のトラブル解決に関するノウハウです。私自身が深く悩んだ経験から、生徒さんが何に悩んでいるのか、時には本人も気づいていない問題点を引き出し、解決する方法を提案できることだと思います。

また、ピアノ伴奏ができることも特徴の一つです。管楽器の先生でピアノが弾ける方は意外と少なく、レッスン中に伴奏ができることは生徒さんにとって大きなメリットになっています。

さらに独自のテキスト開発も強みです。フルートは演奏人口が多く市販の教本も豊富ですが、初見で楽譜を読むにはかなりの時間がかかってしまいます。大手教室では30〜40分という短いレッスン時間の中で楽譜を読む時間に多くを費やしてしまい、肝心の演奏練習が不十分になりがちです。弊教室では60分のレッスン時間を確保し、私が作成した初見でも読みやすいテキストを使うことで、技術的な部分は効率よく習得し、レッスンの半分以上は実際の曲を演奏することに時間を使えるようにしています。

挫折から生まれた指導法 — 自らの苦しみが育んだ共感力

ー生徒さんに対してどのような指導を心がけていますか?

吉本:生徒さんは吹奏楽やオーケストラで演奏する方、アンサンブルを楽しむ方、個人で楽しむ方など、様々な目的でフルートを学んでいます。その多様な目的に合わせた指導が大切だと考えています。

確かに美しい音色や難しいパッセージが吹けるようになることは重要ですが、それが全てではありません。プロを目指すわけではない生徒さんには、その方が求める音楽や表現に近づけるよう伴走することが大切です。体験レッスンでは特にじっくりとヒアリングを行い、フルートを通してどんな音楽体験をしたいのかを把握するようにしています。

指導スタイルは「もっと楽にできる方法を提案する」というアプローチです。間違いばかりを指摘するような厳しい指導でなはく、楽しくフルートを吹きながらも、気づけば上達しているという体験を提供したいと考えています。

自身の奏法の悩みから生まれた指導法

ー吉本先生ご自身のフルート経験について教えていただけますか?

吉本:ピアノも弾いていたので最初のうちはフルートでも順調だったのですが、大学に入ってから大きな壁にぶつかりました。中高生の頃の演奏スタイルが大人になってからは通用しなくなったんです。若い頃は体力もあり、多少無理をした奏法でも乗り切れましたが、大学では奏法の根本的な改善が必要だと痛感しました。

大学4年間をかけてその改善に取り組んだのですが、本当に苦しい時期でした。「もうフルートを辞めた方がいいのではないか」と思うほど悩んだこともあります。その経験が今の指導の根幹になっています。同じように悩む生徒さんの気持ちが痛いほど分かるからこそ、「解決できる」と自信を持って伝えられるのです。

大人の悩みに向き合う — 若さに頼れない奏法の壁を乗り越える

ー具体的にどういうところでお悩みだったんでしょうか?

吉本:技術的な問題が主でした。音楽に対する想いや表現したいことはあるのに、それを音として出せないというもどかしさがありました。中高生の頃は「鳴らそう」という意識が強く、若さと勢いで乗り切りコンクールでも賞を取れていました。しかし大学では1日練習した疲れが翌日まで残り、調子が悪い日が続くようになったんです。

一番辛かった時期は、大学の実技試験の前でさえ10分程度しか音出しができないほどでした。吹けば吹くほど唇が固くなってしまうので高い音や低い音を狙うたびに唇周辺にどんどん疲労が溜まり、試験が終わると「今日はもう吹けない」という状態でした。練習すればするほど悪循環に陥っていました。

それが今では、自然な身体の使い方と唇に頼らない奏法に辿り着いたことで長時間演奏しても全く問題なくなりました。

年齢に応じた最適な学び方 — レッスン体系の工夫

提供されているコースについて教えていただけますか?

吉本:小学生は集中力の面から40分、中学生以上は60分のコースを基本としています。

内容は基本的に同じですが、中高生には吹奏楽部での悩みにも対応しています。部活だけでは教えてもらえない音色づくりや技術向上のコツなどを教えています。コンクールを目指す生徒さんにも対応可能で、過去にはコンクール出場者も指導してきました。

合奏の喜びを広げる — アンサンブルへの新たな挑戦

ー今後、あらたに取り組んでいきたいことなどはありますか?

吉本:現在は個人レッスンが中心ですが、将来的にはアンサンブルの機会を増やしていきたいと考えています。私自身がフルートアンサンブル用の楽譜を多数作成し、ネット販売もしているのですが、それを活用したアンサンブルレッスンの可能性を模索しています。

レッスンでは私がピアノ伴奏をすることが多いのですが、どうしてもこちらが生徒さんに合わせてしまうので(笑)、生徒さんが「合わせる力」を養う機会が少ないという課題もあります。管楽器は本来、一人では成立しない楽器です。伴奏やアンサンブルの中で輝く楽器なので、生徒さん同士でアンサンブルを組む機会を設けたいと思っています。

まずは月に1回程度のアンサンブル会から始めて、軌道に乗ればアンサンブル専門のコースも考えています。合奏の楽しさを知ってもらうことで、フルートをより楽しめる環境を作っていきたいですね。

音楽の喜びを取り戻すために — フルート演奏の悩みを抱える全ての方へ

ー 最後に、『フルートラボ音楽教室』に興味のある方へメッセージをお願いします!

吉本:フルートという楽器と真摯に向き合ってきた私だからこそ、奏法の悩みがどれほど音楽の喜びを奪ってしまうかを痛感しています。「音が思うように出ない」「練習するほど疲れてしまう」「表現したいことが表現できない」—そんな壁に直面したとき、音楽の道を諦めかけた経験が私にはあります。

しかし、その苦しみを乗り越えたからこそ言えるのです。フルートの悩みは必ず解決できます。無理な奏法で苦しむ必要はありません。本来、音楽は喜びであり、表現する楽しさに満ちているはずです。『フルートラボ音楽教室』では、その喜びを取り戻すお手伝いをしたいと思っています。

どんな小さな悩みでも構いません。「もっと長く吹けるようになりたい」「美しい音色を手に入れたい」「好きな曲を思い通りに演奏したい」—あなたのフルートへの想いを、ぜひ私に聞かせてください。私たちと一緒に、もう一度フルートの魅力に出会い直しましょう。音楽を愛する全ての方の「駆け込み寺」として、いつでもお待ちしています。