NPO法人羽生の杜が取り組む子ども支援の最前線

埼玉県羽生市に拠点を構えるNPO法人羽生の杜は、地域に根差した支援活動を展開し、特に経済的困難を抱える子どもたちとその家庭に寄り添う活動を続けています。2014年の設立以来、「子どもと高齢者の居場所づくり」を掲げ、地域社会に貢献してきました。現在は、子ども食堂やフードパントリー、そして最新の支援モデルである「コミュニティフレッジ」を通じて、困窮世帯の生活を支えています。

羽生の杜の具体的な活動内容について詳しく見ていきましょう。

NPO法人生の杜の主な支援活動を教えてください

私たちの活動は、子ども食堂(2019年1月開始)とフードパントリー(2020年6月開始)の2本柱を軸にしています。さらに、昨年10月から「コミュニティフレッジ」という新たな食料支援の仕組みを導入しました。

コミュニティフレッジは、365日24時間対応の無人の食料支援プラットホームです。イメージとしては無人のコンビニのようなもので、登録した方がスマートフォンで施錠・解錠し、必要な食料品を受け取ることができます。国内にはまだ20か所ほどしかなく、埼玉県では私たちが草加市に次いで2番目に導入しました。

フードパントリーは行政と連携しており、羽生市内に約400世帯あるひとり親家庭のうち、現在75世帯を支援しています。さらに、もう1つの団体が50世帯を支援しており、2つの団体を合わせると約130世帯が支援対象です。

しかし、支援を必要とする人のなかには人目が気になったり、他人との接触を避けたい方々も多くおります。そのような方々のため開発されたシステムがコミュニティフリッジです。子ども食堂やフードパントリーを実践するなかから生まれた支援システムと言えます。私どもは2年間の準備期間を経て2024年10月にこのコミュニティフリッジを開設するに至りました。

また、これらの支援活動を通じて、単なる食料提供だけでなく、利用者との信頼関係を築くことにも力を入れています。その一つとして利用者向けの「目安箱」を設置してあります。悩み事、困りごと、嬉しいことなど

どんなことでも投稿していただきそれらに最大限応えられるように対応します。支援の「モノ」だけではないより効果的なサポートを目指しております。

NPO法人羽生の杜が活動を始めたきっかけや背景を教えてください。

私たちの法人は2014年に設立し、高齢者と子どもたちの居場所づくりを基本方針に掲げてきました。以前は、高齢者向けの講座も実施しており、陶芸教室、ジャズボーカル教室、数独教室、俳句講座、吹奏楽講座など、多彩なプログラムを提供していました。

また、「がん哲学外来カフェ」という活動も行い、がん患者が抱える病気以外の問題、例えば経済的な困難や家族のケアについて話し合う場を提供していました。しかし、現在は子どもの貧困問題が喫緊の課題と考え、活動の軸を子ども支援にシフトしました。これらの高齢者向けの講座は自主講座として残し、現在はジャズボーカル講座と俳句・連句講座が継続しております。そして現在は専ら経済的に厳しい家庭を支えることが喫緊の課題と考えて、活動の軸をそちらにシフトして活動しております。

子ども食堂は子どもの居場所づくりの一つです。他にも多様な居場所作りが各団体の創意工夫で行われております。例えば学習支援やフリースクール、遊び場(プレイパーク)などです。羽生の杜ではコロナ禍以降、フードパントリー利用者と子ども食堂の利用者がほぼ重なっており、その意味で経済的に厳しい家庭が多いということもありそのことへの支援というミッションにウエイトがかかっていると言えます。

ひとり親の方々は、仕事と育児を両立するだけでなく、不安定な雇用状況や突発的な休業による収入減少といった課題を抱えています。こうした状況を見て、より多くの家庭に食料支援を届けるため、コミュニティフレッジの導入を決めました。

羽生の杜の独自の強みついて教えてください。

私たちは1800坪の敷地を所有し、森の中で子どもたちが遊べる環境を整えています。しかし、現在は食料支援に注力しているため、十分に活かしきれていないのが現状です。正確にはそれを生かす人材が足りていないのが残念でなりません。

また、私たちは埼北地域のフードパントリー活動団体(8団体)、

子ども食堂活動団体(23団体)の支援物資物流拠点として羽生の杜を提供させていただいております。例えば、4トントラックで届く食料支援物資を保管し、近隣の団体へ配分する役割を担っています。このため、大型の冷蔵・冷凍設備を完備し、支援物資の適切な管理を行っています。

今後の課題と展望について教えてください。

NPO法人としての活動にはゴールがありません。支援を続ける中で、新たな課題が次々と生まれます。現在の大きな課題は、人的リソースと資金面の確保です。

私は活動のすべてを1人で企画・運営しており、ボランティアの方々には当日の支援をお願いしています。しかし、これだけの規模の活動を継続するには、より多くの支援者が必要です。

また、助成金に頼る運営を続けていますが、安定した資金調達の仕組みも必要と感じています。情報発信を強化し、行政や企業との連携を深めることで、支援の輪を広げていきたいです。

最後に一言メッセージをお願いします。

現在の子どもの貧困問題は、7人に1人とも8人に1人とも言われていますが、実際には「見えない貧困」が多いのが特徴です。困っている方々は、自ら支援を求めることが難しく、信頼関係を築くことが重要です。

私たちは、子ども食堂やフードパントリー、コミュニティフリッジを通じて支援者との信頼関係を築いてきました。その結果、利用者の方々が安心して相談できる環境が整ってきています。

この活動を続けるためにも、より多くの方に関心を持っていただき、支援の輪が広がることを願っています。お互いに助け合う社会を築くことが、今後の目標です。

また、今後は食料支援だけでなく、学習支援の強化や居場所づくりの再整備など、支援の多様化にも力を入れていきたいと考えています。「助けて!」と言えるマチ羽生市を目指して頑張りたいと思ってます。