「入間パルクール教室」では、パルクールに忍術や武術の運動方法を織り交ぜた独自の指導が行われています。
体の使い方に悩むすべての人に向けて、“自由な動き”を手にするための第一歩をサポート。
主宰の齊藤きよしさんが語る、教えることへの想いと、未来にかける願いとは。
きっかけは「教えるのが楽しい」という直感から始まった
パルクール教室を始めたきっかけは、本当に些細なものでした。
もともと仲間内で、友人たちとパルクールの練習をしていただけなのですが、練習の中で僕が教える側になることが多かったんです。
教えているうちに、「体の動かし方を理解して、説明するのが自分は得意だ」ということが分かり、教えるのも楽しかったので、せっかくなら教室を開いてみるかと思ったんです。
パルクールはただのスポーツではなく、身の回りの空間を使って体と心の使い方を学ぶトレーニングであり、身につけた技を使ってパフォーマンスを行う身体表現でもあります。
自由自在な動きを手にいれるには、体の動かし方を言葉にするということがとても重要です。練習をしながら「なぜうまく動けないのか」「どうすれば動けるようになるのか」を掘り下げていく。
言葉にすることで理解し、できない技もできるようになる。
そこに体を動かすことの深い面白さを感じたのが、教室を作る原動力になりました。
(入間パルクール教室主催のきよし)
初心者も、中級者も、自分の“動き”を見つけていく場所
入間パルクール教室では、大きく分けて初心者クラスと中級者クラスを設けています。初心者クラスでは、基本のパルクールの技を習いながら、体の使い方の基礎をつくることを重視しています。
上手に動けるようになることはもちろんですが、何よりも「動くことが楽しい」と感じてもらうことが大切だと思っています。
中級者クラスになると、新しい技を習うので自由な動きのバリエーションが増えるだけでなく、技と技を組み合わせて空間の中を動いて流れを作る“フロー”の考え方を経験的に学んでいきます。
ひとつひとつの技を分かれた点として暗記するのではなく、空間の中を動き回って線にして、自分なりの動きやすいリズムや流れを作っていきます。
このプロセス、つまり経験に、トレーニングから身体表現にレベルアップするというパルクールならではの醍醐味があります。
生徒に合わせた指導──“教える”のではなく“気づかせる”
教えるときに意識しているのは、「この人が今、どこでミスっているか」を見極めることです。
体を動かすクセや苦手なパターンって、人によって本当に違うんです。
たとえば同じ技でも、ジャンプすることを怖がってパワーを出しきれていない人もいれば、気持ちが強く出てパワーを思い切り出しすぎてジャンプしている人もいる。
その違いを細かく観察して、それぞれの人に合ったアドバイスをしています。
ただ、「こうやって」と決まった答えを押し付けるような教え方では本人は成長できないので、あくまでその人自身が、体の動かし方の正解に“自分で気づける”ように教えています。
なので僕としては教えるというより一緒に答えを探していくという感じに近いですね。
「失敗はない」──やってみるだけで成功、褒めて楽しく成長
(初心者パルクール教室の風景)
教室の雰囲気はみんなが楽しくなるように心がけています。パルクールの練習はとりあえずやってみれば成功です。
失敗はありません。
なぜなら体と心の使い方を上手にするトレーニングがベースにあるのがパルクールなので、やってみるだけで一歩成長、成功なのです。
とりあえずやってみる、上手なところを見つけたら褒め、もっと上手になるコツを教えてあげる。
みんなが楽しんでレベルアップできるような教室にしています。
子どもも大人も、「できる・できない」ではなく「やってみる・楽しい」を大事にしています。楽しければ勝手に練習して、自然とうまくなるものです。
結果よりも過程に意味を持たせています。これは、パルクールが本来はスポーツ競技ではなくトレーニングという側面を持っていることにも通じるものだと思います。
忍術とパルクール──時代を超えた“身体の知恵”を融合させて
実は僕は、パルクールだけでなく忍術や古武術の修行と研究もしています。
昔の忍者たちが実践していた体の動かし方には、現代スポーツとは違って筋肉を使わないような無駄がなく洗練されたものが多いんです。
たとえば音を立てず歩くときの重心コントロールとか、城壁を登るときの重心移動や身体の支え方とか。
習得するには体で感じたことを体で感じたままに理解する“内観”を作っていかなければならないのですが、そういう古来の知恵と技を、現代のパルクールにも応用するのは、すごく価値のあるアプローチだと思っています。
単純にかっこよく派手な動きを覚えるだけではなく、自分の体をどう上手に扱うのか、体と向き合って深く学んでいけるのもこの教室の特徴です。
(山林の中での忍術修行の風景)
今後の展望──体を通じて、頭や心も育む忍者教育
これからの教室の目標は、パルクールだけでなく忍術の体の使い方も通して、より多くの人に体を動かすことの楽しさを知ってもらうことです。
僕は「自分に運動は無理だ」と苦手な意識を持っている人こそ、教室に来てほしいなと思っています。
運動って、上手な体の動かし方が分かっていれば本来は誰にとっても楽しいもののはずなんですよね。
苦手と感じて、“難しい” “ 怖い”と思ってしまうのは、体の動かし方が間違っているだけかもしれません。
自由な動きは、生まれ持った運動神経ではなく、学んで身につけられる“技術”で伸ばすことができます。
できないと思っていたことが、できるようになる──その瞬間を一緒に喜び合えるのは、僕がこのパルクールを教えるやりがいでもあります。
(中級者パルクール教室の風景)
(小学校で開催した「ニンテリジェンス」忍者教室の風景)
僕は今、小学校などで忍術を活用した実践的・経験的な情報教育「ニンテリジェンス」を定期的に行い、体を動かしながら五感や頭の使い方も教えているのですが、将来的にはパルクール教室の枠を超えた、体と五感、頭脳、そして心の使い方を学び成長できる忍者教室を広く大勢の人に届けて行きたいと思っています。
そんな活動もしながらパルクール教室も継続して、この教室ではパルクールを中心に、運動を通して体と心の使い方を学び、どんな人でも自分の体と仲良くなれる場所を届けられたらと思っています。