1926年に創立された田園調布学園中等部・高等部。学びの枠にとらわれず、探究と実体験を大切にする教育の姿勢が印象的でした。今回は清水学校長に、教育方針や生徒との向き合い方、そして未来への展望について詳しくお話を伺いました。
本校はどのような子どもたちを対象に、どんな入試を行っていますか?
清水学校長:本校は行事や体験活動が非常に豊富な学校です。そうした活動を楽しみにしている子に入学してほしいですね。
最近は思考型入試なども注目されていますが、私たちは基本に忠実に、小学校で学んだ内容を中心に、基本的な問題や思考力を問う問題を作成して入試を行っています。
他校と比べた際の行事の特色を教えてください!
清水学校長:本校は月〜金で通常授業を行い、土曜日は年15回の登校日があります。そのうち8回は「土曜プログラム」と呼ばれる特別講座を実施しており、2025年度は170講座を開講します。
土曜プログラムには英語以外にもドイツ語・フランス語・韓国語といった言語や、実験に特化した理科講座など、生徒の興味に応じた講座を専門家が担当します。生徒は自由に選択して、6年間を通して幅広い学びを体験できます。
創立の背景について教えてください。
清水学校長:1926年に創立し、来年で100周年を迎えます。創立者・西村庄平は日本郵船の船長で、ヨーロッパを巡る中で日本の女子教育の遅れを痛感し、自身の私財を投じてこの学校を設立しました。
教育方針の核となるものは何でしょうか?
清水学校長:初代校長 川村理助先生が唱えた建学の精神「捨我精進」を大切にしています。これは「今の自分を超えるために一生懸命努力を続ける」という意味です。そのために、この6年間で徹底的に自分と向き合い、いろいろなことに挑戦してほしいと考えています。

生徒が「自分を知る」ために、学校として取り組んでいることはありますか?
清水学校長:子どもたちには「素朴な疑問を大切に」と教えています。日々の「なぜ?どうして?」を大事にすることで、自己理解につながると考えています。また探究の授業や教科横断型授業を通じて、自分と向き合うことや、物事を複眼的に見る力を養ってほしいと考えています。
校長室のドアも基本的に開放していて、生徒が気軽に来てくれる環境を整えています。雑談のような会話から進路の相談まで、内容はさまざまです。話すだけで安心する子も多いですね。
コース制をとらない理由
最近では、中学校段階からコース制をとっている学校がありますが、本校では高等部 2年生で文系・理系とわけるまで皆同じカリキュラムで学びます。
小学校段階での苦手意識を一旦リセットして、中学入学後はフラットな気持ちですべてのことに挑戦をしてほしいと考えています。
教科横断型授業とはどのようなものですか?
清水学校長:数学と歴史、美術と国語、音楽と数学など、複数の教員が1つの授業を担当し、共通テーマを多角的に学ぶ授業です。現在は40ほど実施しています。
生徒たちは「この話、前に数学で聞いたな」と、知識を有機的に結びつける力が育ってきました。


探究の授業ではどのような取り組みを行っているのですか?
清水学校長:中学生には「デザイン思考」を3年間通して教えています。最初は「学校で困っていること」からスタートし、最終的には企業の課題を解決するプロジェクトにも挑戦します。
この思考法は文化祭・体育祭などの生徒主導の行事にも活かされており、「どうやって考え、進めるのか」という型を持てるようになってきています。
国際交流にも注力されているとのことですが、具体的には?
清水学校長:中等部3年~高等部2年の間に、選択制で国際交流プログラムを用意しています。最近、力を入れているのがアジア圏で、フィリピン・マニラの私立校と教育連携を行い、年1回の相互訪問を実施しています。
スラム街の小学校でのボランティア体験を通して、「自分に何ができるか」を考え、実際に校内で支援物資を集めて送るなどの探究の授業でのテーマに結びつけた生徒もいます。

理系進学率45%以上という点も印象的ですが、背景にはどんな理由があるのでしょう?
清水学校長:「先ほどお話したように、さまざまな体験を提供することで『やってみよう』という気持ちが芽生えるからです。」
例えば音楽好きの子が「音楽と数学は繋がっているんだ」と気付くことで数学に興味を持つ。そうした連鎖で理系に進む子も増えています。
今後、力を入れていきたい取り組みはありますか?
清水学校長:私が校長になった2020年、ちょうどコロナ禍が始まった年でした。その中で「探究」や「教科横断型授業」「国際交流プログラム」をどのようにしていくか考えました。今後はこれらの取り組みが生徒の成長にどう繋がるかを丁寧に見ていきたいと考えています。
最後に、これから入学を考えている方々へメッセージをお願いします!
清水学校長:小学生としての生活を一生懸命に過ごし、毎日の授業を大切にしてください。
あとは本校でたくさんの体験をして、少しずつ自分の軸を作っていってほしいです。何事にも一生懸命取り組む姿勢があれば、必ず充実した6年間になります。