VR書道からオンライン教室まで~書道家・藤田玉蘭先生の多彩な活動

『筆ピュアギフト』代表の藤田玉蘭先生は、書道を新たな視点で捉え、デジタル時代にマッチさせた独自のアプローチで注目を集めています。30年以上の書道経験を活かし、従来の書道の枠にとらわれないデザイン書道や、最新技術を取り入れたVR書道のパフォーマンスまで、その活動は多岐にわたります。

特にオンライン書道教室の展開では、一人ひとりに動画で個別添削を行うなど、対面では得られない魅力を創出。また、「書をアートとして楽しんでもらいたい」という想いから、手頃な価格で購入できる作品づくりにも力を入れています。

現在はシドニーを拠点に活動する玉蘭先生。日本の伝統文化である書道を海外に広めながら、古典的な技術と現代的なデザインを融合させた唯一無二の作品を生み出しています。今回のインタビューでは、書道教室の運営から海外での活動、そして今後の展望までを詳しく語っていただきました。

藤田 玉蘭(ふじた ぎょくらん)
 
職   業  :  書道家    Calligrapher
京都芸術大学 美術工芸学科 非常勤講師
水明書道会 正会員  師範  評議員
 
活動経歴
2015年 筆ピュアギフト 設立
 
●筆文字ロゴ・題字・表札・名刺・壁紙デザインの提供
●書道パフォーマンス 百貨店、ホテル、大学際、記念式典等での実演
●書道教室 書道家育成 短期/出張講座 ●オリジナルブランド筆文字雑貨制作
 
<メディア出演>
2022年1月 日本テレビ『スッキリ』VR書道生出演
2022年8月 関西コレクション 祭りステージパフォーマンス
2022年5月 Obcラジオ大阪 他
 
<出版>
kindle出版『デザイン書道入門』漢字編・平仮名編
筆王でつくる簡単年賀状 株式会社KADOKAWA
世界一かんたん令和の年賀状 株式会社KADOKAWA

伝統と革新が共存する「大人のための書道教室」

― 玉蘭先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。まず簡単に、どういった方を対象にしている書道教室なのか、そしてどういった指導を行っているのか、『筆ピュアギフト』の概要についてお伺いしてもよろしいですか?

藤田玉蘭先生(以下、敬称略):対象としているのは基本的に大人の方になりまして、18歳以上、早くても高校生くらいからを対象にしている書道教室です。対面で教室を開いているのは、現在のところ大阪の難波教室以外にはありません。こちらは私のお弟子さんが教えています。

難波教室は「総合書道」といって、漢字・仮名・ペン字を総合的に学べるクラスです。月2回教室に通っていただき、各種お手本から学びたいものを学べて、段位も取れて、資格まで学べるコースになっています。

それ以外に私自身が直接教えているものは、全てオンラインになっています。総合書道に加えて、「デザイン書道」といって、美しい文字を職業にされたい方であったり、趣味で文字を書いている方であったりを対象に、私のデザインをお手本として書いていただきます。ご自身で文字をデザインできるような指導を、1か月ごとに課題を決めてオンラインで行っています。教材は私がAmazonで出版しているデザイン書道の教材をメインに使っています。

「書をギフトに」~藤田玉蘭先生のブランド設立ストーリー

― 玉蘭先生が『筆ピュアギフト』を設立された経緯やきっかけを、ぜひ教えてください!

玉蘭:私は30年以上書道を続けてきましたが、その中で一番情熱を感じたのは、自分の作品を創作し続けてきたことでした。 現在はハンズや大丸で販売している「あなたの生まれた日 花言葉ポストカード」というオリジナルブランド商品を作っています。

このような創作活動を本格的に行うため、それまでの仕事を辞め、書道指導だけでなくオリジナルデザインの制作と海外に向けた書道活動を始めたいという思いが『筆ピュアギフト』設立のきっかけです。

また、「読める作品」を作りたいという思いも強くありました。漢字や仮名作品は、「すごいと思うけど、読めない。何て書いてあるの?」とよく言われます。そこで、言葉をしっかりと文字としてアートで伝えたいという思いが募りました。ポストカードならお手頃な価格で、気軽に誰かにプレゼントできることに着目し、様々なアイテムを展開しています。

― 先生が書道を始められたきっかけというのは?

玉蘭:実はとても単純で、字が汚かったからなんです(笑)。 きれいな字を書きたいという思いからでした。

意外かも知れませんが、本格的に書道を始めましたたのは二十歳くらいの時からなんです。子供の頃からではなく、大人になってからなんですよ。

一人ひとりの個性を引き出す、筆ピュアギフトならではの指導法

― 他にも書道教室はありますが、『筆ピュアギフト』ならではのアピールポイントを是非教えて頂ければと思います!

玉蘭:デザイン書道に関して言いますと、専門的に教えている教室の数が少ないと聞きます。

『筆ピュアギフト』では二つの特徴があります。一つは「課題通りに書く模写」、もう一つは「自分なりにデザインするという課題」です。

特に重視しているのが、実際に生徒さんが書いた課題を一人ずつ動画で添削していることです。オンラインだと続かない、モチベーションが上がらないということがあるんですが、オンラインでも満足していただけるように、提出してもらったものに対して一人ずつ動画での添削を行っています。ここは、生徒さんがとても魅力に感じてくださっている点です。

もう一つの特徴は、「個性を活かしたい」という私の思いです。私のお手本通りに書くことで技術を学びつつも、ご自身の個性を大切にして、オリジナルの作品を作るサポートをしています。

また、漢字仮名混じり書(漢字と平仮名が混ざった文章表現)は、書道の世界でも手を出す人が少なく、プロでも難しい領域になっています。プロの方でも上手に書けないという悩みがあり、そこを学びたいというニーズに応えています。大きな書道団体でもそういったコースはありますが、個別に対応してくれないというのが現状です。一人一人に細かく指導する、というスタイルを大切にしています。

― デザイン書道というと、センスが必要なイメージがありますが、元々字が汚い人でも上達するものなのでしょうか?

玉蘭:‟書”が上手になるためには「引き出しを増やす」ことが大切だと感じています。文字を書く時に何に注意すべきか、空間の使い方や文字の構成などのポイントがあります。そういった基準を守りながら筆を使うことで、しっかりとした形になる書を目指しています。

また、オンラインレッスンでは3人くらいでZoomを使って、お互いの作品を批評し合います。何が良くて何がどうなのかという感じ方は人それぞれですが、そういった意見交換も含めて勉強していきます。「字を書くセンスがない」と思っている人は多いですが、他の方々の作品を見て様々な表現や手法を知ることで、センスは必ず磨かれます。ただ、「一朝一夕で上手くはならない」と、正直に伝えていますね。

「否定せず、良さを伸ばす」~玉蘭先生の指導哲学

― 生徒さんに指導する前に特に意識していることや方針などがあれば、ぜひ教えてください。

玉蘭:例えば、競書課題では、基本的にお願いしているのが、まず書く前にしっかりお手本を見てくださいということです。標本には、全て解説が載っています。

また、特に仮名作品ではかすれの表現が重要ですし、そういった表現方法をしっかり探ることが大切です。

私が指導する上で特に心がけているのは、否定をしないということです。良いところを伸ばすことを重視して、「ここはこうした方がいいね。でもここが良いよ」というように伝えるようにしています。

総合書道からデザイン書道まで~多彩な学びのプラン

提供しているプランについて、簡単にご説明いただけますか?

玉蘭:まず「総合書道」では、太筆(半紙)、仮名(和歌を書く)、実用書道(お手紙文)、ペン字、臨書(古典)を学びます。古典は漢字と仮名の両方を勉強します。これらを総合的に学べるのが大きな利点で、毎月課題を提出していただくことで継続的な上達を目指します。頑張れば資格も取得できます。

私がオンラインで教える「デザイン書道」は、Amazonで出版している「デザイン書のお手本帳」をベースに勉強していきます。それに加えて、様々な課題を設けています。例えば、点を特定の位置に落として、その点を通るように文字を書くとか、目を閉じて書くなど、ほかではあまり行わないような取り組みもしています。

これは私自身が京都芸術大学で水墨画も学んでいる経験から、絵画の要素も取り入れているためです。仕事として使えるような唯一無二の作品作りを意識し、個性を伸ばすことを重視しています。

VRと‟書”の融合~テクノロジーが拓く書道表現の新境地

― 書道教室の質問からは少し逸れてしまいますが、玉蘭先生はVRの書道パフォーマンスをやっていますよね!こちらの取組みを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

玉蘭:‟書”が古いイメージを持たれがちなので、新しい形で提案したいという思いがありました。

きっかけは、タイのバンコクで開催された国際デジタル祭でした。私は普通に‟書”のパフォーマンスをしていたのですが、そこで最先端の技術を使った様々なアーティストと出会いました。その中の一人がVR技術者で、「書道とVRを一緒にやったら面白そう」という話が始まりました。その後、フランスで開催されるアート祭にも出展することになり、VR書道を開発し始めました。私の筆遣いと技術者の協力で、VRの中に文字を入れる技術を確立し、フランスで披露しました。

そこから様々な取材を受けるようになり、香港の会社からVRパフォーマンスの依頼を受けたり、日本からも問い合わせがあったりと、国内外で反響をいただいています。最初から目的が決まっていたわけではなく、「面白そうなこと」「まだ誰もやっていないこと」を探求した結果です。

グローバル視点で描く、書道の未来像

― 今後、こういった点をより強化していきたいとか、新たに取り組んでいきたいということがあれば、ぜひ教えてください。

玉蘭:これからさらに強化していきたい活動が、二つあります。

オンラインに関しては、実は去年から本格的に始めたんです。それまでは日本で対面教室を5つ持っていたのですが、去年からはすべてオンラインに移行すると生徒さんに宣言しました。最初はブーイングもありましたが(笑)、8割くらいの方が継続して習ってくださいました。私自身は、現在シドニーに生活拠点を移しています。今後はオンラインをもっと効率よく、皆さんにより満足いただけるようなものにしていきたいというのが、一つの目標です。

もう一つは、‟書”をアートとしてお部屋に飾っていただいたり、海外の方にも紹介したりすることです。現在、海外のウェブサイトでも取り扱いたいという話をいただいているので、海外の方の家のインテリアの一つとして‟書”を提案していきたいと考えています。日本では書道作品を飾ると古い格式ばったようなイメージを持たれることもありますが、もっと‟書”を絵のようなアート作品として提案していきたいです。来年は個展も予定していますので、新しい形の‟書”を提案していこうと思っています。

玉蘭先生から、書道に興味を持つ方へのメッセージ

― 最後に『筆ピュアギフト』に興味を持っている方へ、ぜひメッセージをお願いします!

玉蘭:書道には興味があるけれど、近くに教室がない、時間がない、始めるには勇気がないという方も多いと思います。続けるかどうかはその後でも良いので、まずはきっかけ作りとして一歩踏み出してみてください。何かを知ることによって興味も湧くものです。

私は初回のレッスンを無料でZoomで行い、面談も行っています。最初は参加するのに勇気がいるかもしれませんが、そんなに構えることはありません。勧誘なども一切しませんので、興味があれば気軽に参加してみてください。

私自身も最初からプロの書道家を目指していたわけではなく、興味を持って始めたことが今の活動につながっています。やりたいと思ったら、まずは体験してみることをお勧めします!