「音楽は一度身につければ、生涯の友となる」— そう語るのは、『伊豆美音楽教室』代表の末廣亜耶乃先生です。ピアノとトランペットという異なる楽器を教える音楽教室として、小さな子どもから70代の大人まで幅広い生徒さんが集う同教室。多くの音楽教室が先生の名前を冠する中、あえて『伊豆美音楽教室』と名付けられたそのこだわりには、「主役は生徒さん」という末廣先生の教育哲学が息づいています。
中学校の部活でトランペットを始め、音楽大学への進学を経て、現在は指導者として活躍する末廣先生。「いつか必ず教室を卒業する生徒さんが、独り立ちして音楽を続けられるように」という独自の指導方針や、厳粛な発表会だけでなくカジュアルな演奏の場も大切にしたいという新たな挑戦など、音楽を通じて豊かな人間関係を育む『伊豆美音楽教室』の魅力に迫ります。

東京音楽大学卒業。
2010年から2013年にかけて、ザンビアの中高等学校にて音楽教員及びバンドトレーナーとして活動を行い、配属先の吹奏楽部をザンビア国内のマーチングの大会で、合わせて4度の連続優勝に導く。
現在は伊豆美音楽教室を主催し、トランペットとピアノを指導する他、フリーランスの音楽家としての活動も行っている。
年齢も性別も関係なし ― 誰もが音楽と出会える開かれた教室

ー末廣さま、本日はどうぞよろしくお願いいたします!まず、『伊豆美音楽教室』ではどのような方を対象に、どのような指導を行っているのかを教えていただけますか?
末廣 亜耶乃代表(以下、敬称略):ピアノとトランペットを教えています。単純に「習いたい」と思ってくださる方や「上手になったら楽しいかも」と感じていただける方すべてを対象にしています。年齢や性別などは全く関係なく、どなたでも歓迎しています。
ートランペットの教室は珍しいですね。末廣先生ご自身のトランペット歴について教えていただけますか?
末廣:私は中学校の部活動でトランペットを始めました。当時は外部での個人レッスンは受けていませんでしたが、進路を考える中で音楽大学受験を決意し、その時に初めて個人レッスンでトランペットを本格的に習い始めました。
ー末廣先生ご自身は中学から始められて、プロの道に入られたのですね。
末廣:そうですね。私自身は中学から始めましたが、音楽への情熱を持ち続けることができたのは、環境や出会いに恵まれたからだと思います。何歳から始めるかよりも、音楽を愛する気持ちを育てることが大切だと実感しています。
「先生主催」ではなく「生徒主役」― ‟伊豆美”という名前に込めた想い
ー『伊豆美音楽教室』を始められた経緯やきっかけを教えてください。
末廣:最初は、個人でレッスンを始めたのがきっかけです。徐々に生徒さんが増えて発表会を開催しようとなったとき、個人教室では「○○先生主催発表会」というように先生の名前を冠することが多いのですが、私はそこに違和感を覚えました。生徒さんが主役の発表会なのに、私の名前がついているのはおかしいと思ったんです。そこで、教室としてきちんと名前をつけ、「教室の発表会」という形にしたいと考えました。
(東京都狛江市の) 和泉(いずみ)本町の音楽教室だから、和泉音楽教室!というのが分かりやすくはあるものの、同じ名前のお教室がたくさんあり、却下となりましたが、読み方は同じ「いずみ」で伊豆美神社という神社が近所にあり、「いずみ」の字も美しく素敵で、さらに被りもないので、そちらからアイディアをもらい、『伊豆美音楽教室』という名前に至りました。
ーそもそも、「個人レッスンを始めよう」「人に教えよう」と思ったきっかけは何だったのでしょうか?
末廣:元々はトランペット奏者としての演奏活動をしていました。今もその活動は続けているのですが、音楽の難しいテクニックや理論をそのまま難しいまま説明するよりも、噛み砕いて分かりやすく人に伝えることに自分の適性があると気づいたんです。特に複雑な音楽の要素も、ちょっとした工夫で誰にでも理解できるように伝えられるのが私の強みだと感じていました。
そんな中、知人を通じて「トランペットを教えてくれる先生を探している」というお話をいただいたのがきっかけです。最初は「ちょっとだけ教えてみようかな」という軽い気持ちでした。でも実際に教えてみると、生徒さんが「分かった!」と目を輝かせる瞬間がとても嬉しくて。そこから口コミで「あの先生はわかりやすい」と評判が広がり、徐々にレッスンの機会が増えていったんです。
自分が音楽から得た喜びや感動を次の世代に伝えていくことにやりがいを感じるようになって、いつの間にか教えることが私の人生の大切な部分になっていました。
「いつか必ず卒業する」からこそ ― 自立できる音楽家を育てる独自の指導哲学

ー他の音楽教室と比べて、『伊豆美音楽教室』の特徴的な点があれば教えてください。
末廣:特別なことを教えているつもりはありませんが、私が大切にしているのは「生徒さんの自立」です。どの音楽教室でも、生徒さんはいつか必ず卒業します。どんなに長く続けていても、引っ越しや生活環境の変化で辞めるときが来ます。
私が意識しているのは、「私がいなくても音楽を続けられる力」を身につけてもらうことです。いつまでも私が側にいるのではなく、独り立ちできるように指導しています。
ー生徒さんが自立できるよう成長させるために、具体的にどのようなことをされていますか?
末廣:特に大人のトランペット生徒さんには、「家以外の演奏の場」を見つけることをお勧めしています。地域の音楽グループに入ったり、演奏活動の場を広げたりすると、継続しやすくなります。
環境はとても大切で、そういうコミュニティに入れば、自分の調子が悪い時でも参加する責任が生まれます。モチベーションは「いつでも最高!」というわけにはいきませんから、少しテンションが下がっていても「なんとなく楽しい」と思える場所があることが大事なんです。
「質問しやすい関係」が上達の鍵 ― クラシックからジャズまで、個性を尊重する指導法
ー生徒さんに指導する際に特に意識していることや方針があれば教えてください。
末廣:堅苦しくならないよう心がけています。生徒さんが分からないことがあった時に、気軽に質問できる関係性や雰囲気づくりを大切にしています。
ートランペットにはクラシックやジャズなど様々なスタイルがありますが、どのスタイルも対応されているのでしょうか?
末廣:私自身はクラシックが専門ですので、「ジャズがやりたい」「ラテンがやりたい」と明確に決まっている方には、その専門の先生に習うことをお勧めしています。
クラシックは細かい「台本」に沿って演奏するイメージですが、ジャズはバラエティ番組のようにある程度の枠組みの中で自由度が高いものです。それぞれに専門性がありますから、目的に合った指導者を選ぶことが大切です。
ーピアノとトランペット、両方を指導されるからこその特徴はありますか?
末廣:二つの楽器を教えることで、視野が広がっていると思います。トランペットはオーケストラや吹奏楽で演奏することが多く、ピアノとは触れる楽曲の種類が違います。そのため「この曲のこの部分は、こんな楽器のこんなイメージで」というような音楽表現のバリエーションが豊かになります。
また、トランペットのレッスンでは、生徒さんのトランペットにピアノで伴奏をつけて雰囲気を盛り上げることもできます。両方の楽器を扱えることで、教え方の幅が広がっています。
何歳からでも遅くない ― 初心者から上級者まで、一人ひとりに寄り添うレッスンプラン

ー提供されているレッスンプランについて教えてください。
末廣:トランペットのレッスンは、生徒さんのレベルや状況に合わせて柔軟に対応しています。初心者の方には、45分の通常レッスンだと体力的に厳しいことがあるので、30分コースを設けています。この場合は楽器を吹くことに慣れるために、月に3回以上のレッスンをお願いしています。
ある程度吹けるようになった方でも、レッスンだけがトランペットを吹く機会という方もいれば、学校の部活や楽団に所属している方もいます。吹く機会の多い後者の場合は、月1回や長期休みにまとめてレッスンを受けるなど、フレキシブルに対応しています。
ピアノレッスンは1回30分で、月3回8,000円のコースがメインです。コンクール対策レッスンも行っています。

ー大人になってからトランペットを始める方も多いのでしょうか?
末廣:50代くらいで始められる方もいらっしゃいます。「やりたいと思った今、始めないと間に合わない!」という思いで来られる方や、昔からの憧れを実現したいという方が多いですね。老後の趣味として音楽を始めたいという方も少なくありません。
ートランペットを始めるのに適した年齢はありますか?プロを目指す場合は特に気を付けることはありますか?
末廣:早くても小学3年生くらいが適していると思います。小学校の吹奏楽やブラスバンド部は4年生からスタートすることが多いので、その1学年下くらいが妥当でしょう。
トランペットは1キロ以上ある楽器ですから、小さな子には重すぎますし、小学生低学年は歯が抜け替わる時期でもあります。無理に早く始めるより、ある程度成長してからの方が楽器と向き合いやすいです。
最近は「早期教育」の流れで幼稚園くらいから始めさせたいという親御さんもいますが、個人的には小学3年生になるまでは、むしろトランペットの演奏会に足を運ぶなどして、音楽に対する憧れや興味を育てる時期にしてほしいと思います。実際に吹くことを急ぐより、「演奏したい」という気持ちを育てることが長い目で見ると効果的です。
「お茶を飲みながら演奏を聴きたい」 ― 小学生の一言から生まれる新たな音楽の場
ー今後、強化していきたい点や新たな取り組みについて教えてください。
末廣:現在は年に1回、音楽ホールで厳粛な雰囲気の発表会を開催していますが、これとは別に、もっとカジュアルな発表の場も作りたいと考えています。「お茶を飲みながら演奏を聴きたい」と言ってくれた小学生の生徒さんのアイデアをヒントに、ハロウィンとクリスマスの間くらいにホームパーティーのような雰囲気の発表会ができればと思っています。テーマとしてハロウィン風の曲かクリスマスソングを選んで、楽しい雰囲気で演奏できる機会を増やしたいですね。
人前で演奏するという経験はとても大切なので、そういう機会を様々な形で提供していきたいと考えています。
ー生徒さん同士の、ピアノとトランペットのコラボレーションも実現されているのでしょうか?
末廣:ぜひ実現したいと思っています!特に兄弟で通ってくださっている家族がいて、お兄さんのトランペットに妹さんがピアノで伴奏するような共演を私は望んでいるのですが、本人たちがまだ恥ずかしがっていて…。毎年少しずつプッシュしているところです(笑)。
音楽は国境を越える生涯の友 ― 「まずは怖がらずに飛び込んでください」

ー最後に、入会を考えていらっしゃる方たちへメッセージをお願いします!
末廣:まず何より、怖がらずに飛び込んできてほしいと思います。音楽は国境を越えて通用するもので、一度身につければ生涯の友達になり、人生の大切な財産になります。
私自身も海外に住んでいた経験がありますが、音楽がきっかけでつながる人間関係の豊かさを実感しています。そういった出会いや経験のきっかけ作りができれば嬉しいですね。