児童養護施設を退所した若者たちは、18歳から突然一人で生きていかなければなりません。住まいの確保、仕事探し、生活費の管理、頼れる人がいない不安——こうした課題を抱えながら、自立を求められる現実があります。NPO法人チームラバトは、そんな若者たちの「その後」を支えるために、大阪を拠点にアフターケア支援を行っています。
役所の手続きのサポートや引っ越し支援、就職や副業の紹介、さらにはメンタルケアまで、個々の状況に寄り添いながら、安心して社会に踏み出せる環境を提供。施設の職員やカウンセラーとも連携しながら、長期的な支援を続けています。本記事では、チームラバトの設立背景や具体的な活動内容、今後の展望について詳しく紹介。知られざる児童養護施設退所後のリアルと、支援の必要性を深掘りします。
チームラバトの活動概要

ーまずは、どの地域でどのような活動をされているのか、NPO法人チームラバトの概要について教えてください。
NPO法人チームラバト代表 原田さん(以下敬称略):拠点は大阪府堺市になります。大阪を中心に活動していますが、他の地域にも少しずつ広げていってるところですね。メインでやってるのは、自立支援の中でもアフターケアです。児童養護施設を退所した後、一人暮らしを始めるけど頼れる人がいない、そういう状況が多いので、施設の元職員さんや今の職員さん、カウンセラーの方と一緒にサポートしています。
ー大阪以外でも活動されているんですね。
原田さん:そうですね。ただ、今は大阪メインで、関西圏のほかの地域にも少しずつ広げていけたらいいなと思ってます。
具体的な支援内容
ー対象となるのは18歳以上の方になると思いますが、具体的にどんな支援をされているんでしょうか?
原田さん:基本的には18歳以上ですね。大学卒業後の22、23歳くらいまで支援することが多いです。支援内容はほんとに色々あるんですが、例えば、一人暮らしを始めるときの役所の手続きとか、電気・ガスの申し込みの仕方とか、そのへんの生活の基礎的な部分ですね。
ーなるほど、生活の基本的な部分からサポートされているんですね。
原田さん:そうですね。あとは、引っ越しのサポートとか、仕事が続かない子も多いので、転職の相談に乗ったり、副業を紹介したりもしてます。いきなりフルタイムの仕事をするのが難しい場合もあるので、最初は無理のない範囲で仕事をしながら、少しずつ慣れていく、みたいな感じですね。
団体設立の背景
ーこの団体を立ち上げたきっかけを教えてください。
原田さん:理由は3つあります。1つは、僕の兄が社会復帰できなかったこと。2つ目は、僕自身が精神的に落ち込んでいた時期があったこと。そして3つ目は、今NPOの理事をしている方との出会いですね。
ーお兄さんが社会復帰できなかったというのは…?
原田さん:そうなんです。8年くらい働けない時期があって、家族としてもどうしたらいいのか分からなくて。でも、僕が兄と8時間くらい話し続けたことで、少しずつ前に進めるようになったんですよ。そのとき、話すことの大切さをすごく実感しました。
ーご自身も大変な時期があったんですね。
原田さん:ありましたね。19歳の時に人間関係が上手くいかず、精神科に通うほどにメンタルが落ちていた時があります。そんな時に病院の先生に生い立ちから現在まで全て話して、気持ちがすごく楽になり、前を向いて進む事が出来ました。この時にどんな人でも『メンタルケア』が必要な事なんだと実感しました。
ーそこからどのようにしてチームラバトの設立に至ったのでしょうか?
原田さん:ケアリーバー(施設を出た人、当事者)さんと出会って、児童養護施設の現状を知ったんです。施設を出た後、頼れる人がいなくて困っている子がたくさんいるってことを知って、これは何とかしないといけないなって思ったんです。それで、このNPOを立ち上げました。
解決したい社会課題
ー活動を通じて、どんな課題を解決したいと考えていますか?
原田さん:一番大きいのは、児童養護施設を出た後の困難が社会にあまり知られていないことですね。支援の必要性が理解されていなくて、社会的なセーフティネットもまだまだ弱いなと思います。
ーそうなんですね。
原田さん:そうなんです。あと、施設を出た子たちが孤立してしまうのも問題です。頼れる人がいなくて一人で抱え込んでしまう。でも、少しでもつながりがあれば、状況は全然違うと思うんですよ。だから、つながりを作ることも大事な支援の一つだと考えています。
また、支援をする上で、子どもたちだけを支援するのでは根本的な解決にならないと考えます。子どもたちをはじめ、ケアリーバー、施設職員さん、支援者など『包括的』に支援する事が大切だと考えます。
支援において大切にしていること
ー支援をする上で特に意識されていることは何ですか?
原田さん:まずはメンタルケアですね。表面的な部分だけじゃなくて、ちゃんと心の状態を見ていくことがすごく大事だと思っています。
ー具体的にはどういった形でメンタルケアをされているんですか?
原田さん:カウンセリングですね。今後は施設に直接行って、非常勤でもいいので職員として関わりながらカウンセリングができたらいいなと思っています。
今後の展望
ー今後、さらに力を入れていきたいことを教えてください。
原田さん:施設内でのカウンセリングをもっとしっかりやっていきたいです。やっぱり、困ったときにすぐ相談できる環境があることが大事なので。あと、団体の認知度をもっと上げて、必要としている人たちに届くようにしたいですね。
相談を検討している方へ
ー最後に、NPO法人チームラバトへの相談を考えている方へメッセージをお願いします。
原田さん:まずは誰かとつながることが大事だと思います。施設の職員さんもそうですし、子どもたちも、みんな一人じゃないんだって思える環境を作りたいですね。少しでも困ったことがあれば、気軽に相談してほしいです。一緒に考えて、いい方向に進めるようにお手伝いできたらと思っています。