音楽の専門性と学力の両立を目指して – 東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校インタビュー

東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校は、クラシック音楽の早期教育を目的として設立された、音楽に特化した専門高校です。1学年40名という少人数制で、生徒一人ひとりにきめ細やかな指導を行っています。

音楽を志す若者の減少という課題に直面しながらも、世界で活躍する演奏家の育成を目指す同校の取り組みについて、大平氏と髙野氏にお話を伺いました。

音楽に特化した専門教育機関としての理念

ー貴校の教育理念や特色についてお聞かせください。

大平氏:本校は音楽に特化した学校です。創設以来70年クラシック音楽を専門とした早期教育を目的としており、約20年前からは邦楽科も設置しています。

現在の教育目標には「グローバルな視点を持ち音楽の力で未来を切り開く人材の育成」を掲げていますが、基本的には生徒たちの音楽的技術と専門性を高めていくことが最も重要と考えています。

音楽と学習の両立による受験指導

ー受験指導において特に意識されている点をお聞かせください。

髙野氏:本校の受験指導で最も重視しているのは、基礎学力の確実な定着です。東京藝術大学の入試では、附属校といえども一般の受験生と同様に共通テストを受験しなければなりません。そのため、1年次から各教科の基礎的な内容をしっかりと積み上げていくことを大切にしています。

一方で、生徒たちは日々何時間もの実技練習が必要です。そこで特に意識しているのが、生活リズムの確立です。実技練習と学習時間のバランスを取るには、規則正しい生活習慣が不可欠だと考えています。朝は何時に練習を始め、放課後はどのように時間を使うのか。週末の過ごし方も含めて、生徒一人ひとりが実情に合わせたスケジュール管理ができるよう事あるごとに指導しています。

また、実技担当教員と教科担当教員が密に連携を取り、生徒の状況を共有しながら指導にあたっています。特に試験前は精神的な負担も大きくなりますので、双方の教員が声を掛け合いながら、適切なサポートを心がけています。

専門教育に特化したカリキュラム

ー授業における音楽の専門教育の時間配分について教えてください。

大平氏:本校のカリキュラムの特徴は、普通科目と専門科目がバランスよく配置されている点です。1日の授業時間のうち、およそ半分が音楽専門教育に充てられています。これには個人レッスンのような実技指導だけでなく、音楽理論や音楽史といった講義形式の授業も含まれます。

また専門教育の内容は多岐にわたります。専攻実技のレッスンはもとより、副科ピアノも全生徒必修で、その他に副科声楽、副科打楽器などを選択履修できます。すべてのレッスンが個人レッスンです。ソルフェージュの授業では音楽の基礎となる読譜力や聴音力を養成します。

さらに、室内楽やオーケストラ、合唱の授業では、アンサンブル力を高めることに重点を置いています。

このように音楽に関する幅広い学びを展開していますが、これは単なる技術の習得だけが目的ではありません。音楽を深く理解し、表現者として成長していくために必要な時間と考えています。

きめ細やかな指導体制とメンタルケア

ー生徒へのサポート体制についてお聞かせください。

大平氏:本校は1学年40名程度、全校でも110名から120名程度と全体の生徒数が少ない高校です。教員は約10名在籍していますが、全教員が全生徒の顔と名前を把握しており、生徒との距離が近いのが特徴です。

そのため、生徒の様子の変化も教員間で共有しやすく、きめ細やかなサポートが可能です。

また、実技指導においては、1人の生徒に対して専門の指導教員が付き、大学教員も含めた指導体制を整えています。実技面での悩みや精神面でのケアも、この実技担当教員が大きな役割を担っています。もちろん、実技担当教員には相談しにくい内容については、保健室や担任教員がフォローする体制も整えています。

未来への展望と課題

ー今後の学校としてのビジョンについてお聞かせください。

髙野氏:現在、音楽を志す人口が減少傾向にあり、全国的に音楽高校や音楽大学への入学者も減少しています。

そのような状況の中で、本校は日本国内でも高いレベルを維持しておりますが、その専門性をさらに高めていくことと、多様化していく社会に対応できる力を身に付けていくことの両立が課題となっています。

そのために必要な演奏技術はもちろん、精神面での成長や語学力を含む基礎学力もしっかりと育てながら、人間的にも技術的にも優れた人材を育成していきたいと考えています。

受験生へのメッセージ

ー受験を控えた中学生へのメッセージを大平氏と高野氏それぞれお伺いできればと思います。

髙野氏:本校は令和7年1月実施の入試から、従来の実技系の専攻に加えて、学力を重視した「楽理専攻」の募集も始めます。しかし、実技系、楽理いずれの専攻であっても、私たちが最も大切にしたいのは「音楽が好き」という気持ちです。

本校には北は北海道から南は沖縄まで、全国各地から生徒が集まっています。音楽を愛し、より深く学びたいという志を持つ皆さんを広く受け入れたいと思っておりますので、ぜひ積極的に挑戦してほしいと思います。

高い目標を持ち、その実現に向けて努力する仲間たちと共に、充実した音楽の専門教育を受けられる環境が整っています。入試や本校での生活について、疑問や不安などのある方は遠慮なく本校までお問い合わせください。

大平氏:音楽への夢は、決して小さく持つ必要はありません。むしろ、大きな夢を抱いてほしいと思います。もちろん、音楽の道は簡単ではありません。しかし、本物の音楽に触れ、仲間と切磋琢磨できる環境は、皆さんの夢への大きな一歩となるはずです。音楽に興味があり、音楽を通じて自分の可能性を広げたいと考えている生徒の皆さん、ぜひ本校への挑戦を考えてみてください。