【インタビュー】『晃華学園中学校高等学校』が実践する「隣人愛」の精神と全人教育〜ミッションスクールだからこそ育める人間力〜

SNSの普及により自分中心の価値観が広がる現代社会。そんな時代だからこそ、他者への思いやりや社会への貢献意識を育む教育の重要性が高まっています。「私を待っている人がいる」「私の力を必要としている人がいる」——このメッセージを日々生徒に伝え続ける学校があります。

『晃華学園中学校高等学校』は、2000年の歴史を持つカトリック精神に基づく全人教育を実践し、知識だけでなく人間としての在り方を大切にする女子校です。全員参加の模擬国連や生徒発案の20以上のSDGsプロジェクトなど、社会性と主体性を育む独自の取り組みが注目を集めています。

今回は同校の広報部長である安東峰雄先生(宗教科主任)に、ミッションスクールならではの教育理念や「隣人愛」の精神、「ノーブレスオブリージュ」が生徒に与える影響、そして変化の激しい時代に変わらない価値を伝える意義について詳しくお聞きしました。

知育・徳育・体育・宗教教育・社会教育の5つをバランス良く〜2000年受け継がれるカトリック精神の全人教育

ー安東先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。まずは、『晃華学園中学校高等学校』の教育理念や特色についてお聞かせください。

安東峰雄先生(以下、敬称略):『晃華学園中学校高等学校』はカトリック精神に基づいた全人教育を大切にしている学校です。全人教育というのは、知育・徳育・体育・宗教教育・社会教育という5つの分野をバランス良く進めていく教育方針です。

学校行事も部活動も授業も、そしてお祈りなどの宗教活動も、これらすべてを大切にしながら生徒の人格を育てていく教育を行っています。

ー最近では比較的珍しくなってきた‟女子校”を貫いている意義や理念について教えてください。

安東:共学化する学校も増えていますが、それはそれでもちろん良いと思います。ですが、思春期の時期は心身ともに大きく成長する時期であり、特に女子には女子ならではの心身の発達段階があります。そうした特性に専門的に対応し、配慮できるのは女子校の大きな利点だと考えています。

また、社会に出た時に様々な立場を経験しておくことは重要ですが、女子校では学校行事などでリーダーシップを発揮する機会が共学校に比べて多くあります。リーダーとしても、サポート役としても、多様な経験を積めることが女子校の良さだと思います。

国公立から音大まで全方位対応!「英語の晃華」が誇る個別最適化された進路指導システム

ー生徒さん一人ひとりの進路希望に対して、どのようにご対応されているのでしょうか?

安東:まず、カリキュラムの特徴として、高校2年生の文系コースでも数学が必修となっています。これにより、国公立大学入試や文系の難関大学で数学が必要な場合にも、一般選抜で十分対応できる力を身につけることができます。

英語教育については、本校は伝統的に「英語の晃華」と呼ばれるほど力を入れており、校内で英検やTEAP試験を受験できる体制を整えています。これにより、生徒の英語力向上と同時に、大学入試の出願資格を確実に取得できるようサポートしています。

さらに、高校3年生では国公立の理系から音楽大学まで、幅広い進路に対応できるよう、芸術選択も含めた細かなカリキュラム編成を行っています。高校2年生から文系・理系・芸術系に分かれ、それぞれの希望に応じた学習が可能です。

本校の探究学習においては、クラブ活動、学校行事、修学旅行など、すべての活動において探究的思考プロセスを用いることを重視しています。この過程で振り返りを大切にし、生徒一人ひとりが進路や学習方法について自分なりの軸を確立していきます。

この自分軸があることで、学校推薦型選抜や総合型選抜では探究活動をまとめたポートフォリオを活用し、一般選抜では強い意志を持って志望校合格を目指すことができます。小規模校ながら、毎年20名以上が国公立大学に合格し、医学部合格者も輩出しており、一人ひとりの希望に沿った進路指導を実現しています。

「私を待っている人がいる」毎日のお祈りが育む社会貢献マインドと学習モチベーション

ー生徒さん達のモチベーション維持のために学校として取り組んでいることがあれば、ぜひ教えてください

安東:まず、根本にあるのが「隣人愛」の精神です。これはカトリック系ミッションスクール共通の理念ですが、社会問題を自分事として捉える意識を日常的に育んでいます。毎日のお祈りを通じて、「世の中には私を待っている人がいる」「私の力を必要としている人がいる」という思いに繰り返し触れていきます。

思春期の生徒たちですから、いつもそのことばかり考えているわけではありませんが、長期的な視点で見ると、こうした意識が生徒たちの目標設定や自分がやりたいことの発見に大きく影響しています。自分の能力を社会生活に活かしたいという思いが、学習へのモチベーション維持に繋がっています。

具体的な取り組みとしては、中学1年生から大学訪問を実施し、実際に大学の授業を体験してもらいます。中学3年生では夏期講習の一環として大学模擬授業を開催し、多くの大学から教員に来校いただいて授業を行っています。こうした活動を通じて、生徒たちに明るい未来像、魅力的な大学像を描いてもらうことで学習意欲を高めています。

特に中学3年生と高校1年生は中だるみしやすい時期ですが、中学3年生では8000字の課題研究論文に取り組み、高校1年生では進路指導オリエンテーションで中学校生活を振り返り、高校での新たな目標設定を行います。このような学齢を超えた多様な取り組みが継続的な成長を促し、しっかりとした自分軸を持った生徒を育成しています。

中3全員が一国の代表に!模擬国連とSDGs活動で東大合格を掴んだ生徒たち

ー他校とは違う独自の取り組みやカリキュラムはございますか?

安東:特色ある取り組みとして、まず中学3年生の公民授業で実施している‟模擬国連”があります。本来は英語で行われることが多い模擬国連ですが、本校では日本語で実施し、全員が参加します。

生徒たちは一国の代表として、その国の文化や立場を深く理解し、背負う責任を感じながら活動します。この過程で社会性が大きく育まれ、合意形成に向けたコミュニケーション能力や社会的知性が向上します。特定の生徒だけでなく全員が参加することで、すべての生徒にリーダーシップやコミュニケーションスキルを身につける機会を提供しています。

もう一つの特色がSDGs活動です。これは部活動や委員会ではなく、生徒が「こんな活動をやってみたい」と思った時に教師に相談し、学校が支援するシステムです。現在約20のプロジェクトが並行して活動しており、先輩から後輩へと受け継がれて発展していくものもあります。

実際に、SDGs活動に熱心に取り組んだ生徒が論文にまとめ、それを提出し、東京大学の学校推薦型選抜で2年連続合格を果たしました。このように、生徒の自主的な社会貢献活動が進路実現にも結びついています。

個人の考えとはなりますが大切にしているのは「教育は文化であり、投資ではなく贈与である」という考えです。上位5%の生徒だけが参加できるプログラムではなく、全員にチャンスを与えることが学校教育だと思っています。SDGs活動では、全団体の生徒が全校生徒の前で1〜2分間のプレゼンテーションを行い、お互いにピアレビューを行います。この発表を通じて、生徒たちは自分の活動を客観視し、振り返る機会を得ています。

創立者シスターが大切にした「週1回の振り返り」〜告白から学ぶ自分軸の見つけ方

ーホームページにも記載がありますが「振り返りの習慣」について質問させてください。こちらを重視されているのはどのような理由からですか?

安東:この「振り返りの習慣」は、ミッションスクールならではの特徴だと思います。本校を創立した修道会の創立者であるシスターが、1週間に1回、神様に心を向けてその週を振り返り、次にどうすべきかを祈る時間を大切にされた方だったのです。

キリスト教には元々、日々の行いを振り返り、悔い改めて新たな歩みを始めるというサイクルがあります。この宗教的な振り返りの精神を教育に活かしています。

例えば体育祭の後には、生徒たちに自分なりの振り返りを書いてもらいます。「来年はこんな風に取り組みたい」「こういうスタンスで参加したい」など、どんな内容でも構いません。重要なのは振り返りの習慣そのものです。高度なレベルを求めてしまうと一部の生徒だけのものになってしまいますが、習慣として定着させることで、すべての生徒が自分軸を見つけることができます。

この「振り返りの習慣」を通じて、好きな教科や学問分野だけでなく、クラス内での自分の役割、サポート役が得意なのか、リーダーシップを発揮するのが得意なのかといった社会性も見えてきます。これは学科の勉強だけでは育たない力であり、学校行事やクラブ活動を通じて初めて発見できるものです。

「恵まれた環境で学んだ者の義務」現代に息づく貴族精神「ノーブレスオブリージュ」とは

ノーブレスオブリージュ
能力は自分に与えられたのではなく世の人々のために使うよう与えられたもの。努力して能力を人々のために

ー『晃華学園中学校高等学校』の教育理念の一つでもある「ノーブレスオブリージュ」について、お聞かせください。

安東:「ノーブレスオブリージュ」は有名な言葉ですが、使い方が難しい概念でもあります。元々は貴族や騎士に与えられた使命や精神を表す言葉で、「多くを与えられた者は、多くを人のために使う義務がある」という意味です。私利私欲のためだけでなく、他者のために自分の能力を使う責任があるということですね。

これは先ほどお話しした「隣人愛」の精神を別の言葉で表現したものです。私立学校に通う生徒たちは、日本国内はもちろん、世界的に見ても恵まれた教育環境にいることは間違いありません。一人ひとりが抱える問題はあるにしても、総合的には非常に恵まれた立場にあります。

そうした環境で学んだ知識や技能を自分のためだけに使うのではなく、社会のために活用することが、恵まれた人々の義務だと生徒たちに伝えています。生徒たちが特別お金持ちでなくても、貴族や騎士でなくても、世界的な視点で見れば十分にそうした責任を負う立場にあることを理解してもらいたいのです。

新しい技術と変わらない価値観〜時代に流されない「自分軸」を持った生徒の育て方

ー今後どのような学校にしていきたいというビジョンがあれば、ぜひお聞かせください

安東:現在の教育をさらに進化・深化させながら、時代の変化にも適切に対応していきたいと考えています。時代の変化への対応とは、SNSをはじめとする新しい技術やツールへの対応スキルを身につけることも必要ですが、同時に変わってはいけない価値観も大切にすることでもあります。

私がよく使う「自分軸」という言葉ですが、これがしっかりしていれば新しいものが入ってきても適切に対応できます。逆に自分軸がないと、時代に流されてしまいます。善悪の判断ができる生徒を育てることが重要で、時代の要請に応えることは単に新しいものを取り入れることではありません。

新しい変化が起きた時にも、変わってはいけない価値観は何かをしっかりと持った生徒を育てることが、過去も未来も変わらず求められていると思います。

「そこに愛はあるのか?」を問い続ける意味〜SNS時代だからこそ必要なミッションスクールの価値

ー今の時代だからこそのミッションスクールの意義やメリットについて、どのようにお考えですか?

安東:謙虚さや従順さといった価値観が非常に重要だと思います。産業革命以降、私たちはどこかで謙虚さを見失い、その結果として地球環境問題なども生じています。そうした価値観について日々触れる時間があることが、ミッションスクールの大きな特徴です。

本校では朝礼と終礼でお祈りの時間があり、例えば「体育祭ができる環境にあることに感謝しましょう」といったメッセージを毎日伝えています。世の中の出来事や社会問題に目を向ける機会が日常的にあることが、ミッションスクールの大きな特色です。

宗教の授業についてよく質問されますが、これはキリスト教信者養成講座ではありません。聖書や先人の生き方を通じて、自分の人生をより良くするにはどうすればよいかを考える時間なのです。このような時間が毎週あることは、とても貴重だと思います。

「そこに愛はあるのか」ということを常に意識していれば、時代がどれだけ変化しても怖くありません。しかし、この意識を失った瞬間に時代に流されてしまいます。カトリックは2000年間変わらずに続いてきた普遍的な宗教です。これほど時代が変化しても2000年間生き続けているメッセージの価値を、生徒たちにも感じてもらいたいと思っています。

「自分らしくいられる場所」武蔵野の緑に包まれた6年間への招待

最後に、『晃華学園中学校高等学校』に入学を考えていらっしゃる生徒さんや保護者の方に、安東先生からメッセージをお願いします!

安東:本校は「自分らしくいられる場所」だと思います。緑豊かなこの武蔵野の地で、ぜひ一緒に6年間過ごしてみませんか。皆さんをお待ちしています。

『晃華学園中学校高等学校』では一人ひとりが自分の個性を大切にしながら、隣人愛の精神のもとで他者への思いやりも育むことができます。カトリック精神に基づく全人教育の中で、知識だけでなく人としての在り方も学び、社会に貢献できる人材として成長していただければと思います。ぜひ一度学校見学にお越しいただき、本校の温かい雰囲気を実際に感じていただければ幸いです。