文教大学付属中学校・高等学校が描く、100年の伝統と未来への挑戦

創立100周年を目前に控える文教大学付属中学校・高等学校。伝統を大切にしながらも、時代の変化に即した新しい教育を積極的に取り入れる同校では、グローバルな視点と社会貢献の精神を育む取り組みが進められています。今回は入試広報部長の千葉悟先生に、教育理念や注目の取り組み、今後の展望についてお話を伺いました。

人間愛を現代的に再解釈し、世界へ広がる教育理念

千葉：本校は、間もなく創立100周年を迎える伝統ある学校です。創立当初から「人間愛」という教育理念を掲げてきました。もともとは“友達を大切に”という1対1の人間関係を指していたのですが、近年ではその考えを社会全体、さらには世界規模へと拡張しています。具体的には、世界標準の社会貢献ができる人材の育成を目指すようになり、それが現在の教育活動の軸となっています。

ーSDGsに関連した教育にも力を入れているそうですね。

千葉：はい、社会貢献をテーマにした「GCP（グローバル・コンピテンス・プログラム）」という授業を5年前から導入しました。中学1年生から高校1年生までの4学年で、週に1回、ネイティブの先生と担任が一緒に授業を行います。授業はすべて英語で行われますが、英語を学ぶのではなく、英語を使ってSDGsや世界の文化、平和といった社会的テーマについて考える時間です。

特に英語を“道具”として扱う感覚を育むことで、「外国語＝壁」という意識を取り払い、生徒たちは自らの意思で海外留学を選択するようになっています。最近では、1年間の長期留学や、台湾を中心とした海外大学への進学も増えており、大きな成果が出ています。

語学研修から“グローバル研修”へ──名称変更に込めた想い

千葉：以前は「語学研修」としていたオーストラリアやセブ島への研修も、今では「スタディツアー」「グローバル研修」といった名前に変更しました。語学習得だけでなく、文化や社会への理解を深める学びの機会として位置づけているからです。英語はあくまでそのための手段であり、生徒には「外国語は壁ではない」と伝え続けています。

さらに、高校の修学旅行先も刷新され、今後は先進的な教育や文化に触れられる3つのコース（①フィンランド＋エストニア②ブルネイ＋シンガポール③台湾）から選べる形になります。保護者の反応も非常に良く、生徒たちも大いに期待しています。

探究心と主体性を育む「クリエイティブチャレンジ」

千葉：もう一つの柱が「CC（クリエイティブチャレンジ）」という探究学習プログラムです。これは中3から高2までの縦割りグループで行われ、自分の興味関心に基づいたテーマを1年かけて深掘りしていくものです。最初にアンケートで「好きなこと」や「興味のあること」を提出してもらい、それに基づいたチーム編成を行います。

例えば、美術が好きな生徒は“社会貢献×美術”というテーマで調査・研究を進めていきます。外部の大学教授を招いた講義を受ける機会もあり、最終的には「探究祭」でプレゼンを行います。昨年度は195のグループが参加し、発表の場で大きな盛り上がりを見せました。

この取り組みを通じて、生徒の進路希望は格段に明確になり、医療系をはじめとした難関学部への志望者・合格者も急増しています。実際、医療系学部への合格者数は5倍以上に増えた年もありました。

机上の学びを超えたリアルな体験へ

千葉：CCの特徴は「フィールドワーク」にも力を入れている点です。パソコンでの調べ学習にとどまらず、実際に、美術館に足を運んだり、地域の自然観察に出かけたりと、生徒たちは現場での学びを通してリアルな社会と接点を持ちます。教室外での経験が新たな気づきや視点を育み、学びをさらに深めてくれるのです。

生徒主導でつくり上げる学校行事と、その成長

千葉：GCPやCCで得られた主体性は、学校行事でも発揮されています。文化祭・体育祭・合唱コンクールといったイベントは、ほとんど生徒たちが中心となって企画・運営しています。予行練習でうまくいかないことがあっても、教員は最低限のサポートにとどめ、生徒たち自身で問題を乗り越えられるようにしています。

こうした経験が積み重なることで、生徒たちは「やらされる学び」から「自ら動く学び」へと意識が変わっていきます。その結果、近年の大学合格実績にも顕著な成果が表れており、早慶・MARCH・国公立・医学部などへの進学実績も飛躍的に向上しました。