伝統と革新が織りなす茨城県立日立第一高等学校 ―制服なき校風が育む主体性

2027年に創立100周年を迎える茨城県立日立第一高等学校。昭和40年代から続く制服自由化に象徴される「自主自立」の校風は、今なお脈々と受け継がれています。

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校として科学教育に力を入れる一方、国際教育も重視。文武両道の精神のもと、地域に根ざした特色ある教育活動を展開している同校について、学校長の磯邉裕一先生にインタビューしました。

100年の歴史を持つ地域の中心校としての誇り

ーまず初めに御校について教えて下さい。

磯邉氏:茨城県立日立第一高等学校は1927年(昭和2年)に創立され、まもなく創立100周年を迎える歴史ある学校です。本校では生徒の主体性を重視し、次の4つの目指す生徒像を掲げ、教育活動に励んでいます。

①「自ら課題を発見し、主体的に『やり抜く』ことのできる生徒」
②「物事を理性的に判断し、筋道を立てて議論できる生徒」
③「高いモラルと豊かな感性を持ち、リーダーシップを発揮できる生徒」
④「運動の楽しさや喜びを知り、自ら健康を管理できる生徒」の育成を指導の柱としています。

生徒の自主性を象徴するのが、昭和40年代に生徒会が主導して制服自由化運動を展開し、現在県内の公立高校では3つしかない制服のない学校の一つになったということです。生徒が自ら考え行動するという校風は、今日まで脈々と受け継がれています。

特色ある学校行事で育む主体性と探究心

ー学校の特徴的な行事について教えて下さい。

磯邉氏:本校の特徴的な行事の一つが、6月に開催する「白堊祭」という文化祭です。また、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の研究発表会では「総合的な探究の時間」や学校設定科目「白堊研究」で行った研究の成果を発表します。

午前中は口頭発表、午後はポスターセッション形式で実施し、ディスカッション力やプレゼンテーション力を磨く機会となっています。
国際教育の面では、希望者を募ってイギリスでの研修プログラムを20年以上継続して実施しています。これは単なる海外訪問ではなく、現地で開催される模擬国連に参加し、世界各国の学生と英語で議論を交わす貴重な機会です。また、2年次の12月には、普通科が台湾に修学旅行に、サイエンス科はベトナムに研修旅行に行き、国際交流の機会を設けています。

大学や社会との接点を広げる取り組みが充実している点も特筆すべきポイントです。1年生向けには、8名の様々な業界で活躍する社会人を招いてキャリア教育の一環としてセミナーを開催し、2年生には同じく8名の様々な学問分野を研究する大学教員による模擬講義を実施しています。これらの機会を通じて、生徒たちは将来の進路について具体的なイメージを描くことができます。

さらに、秋に行う大学見学会では高校1年生全員が県内外の6つの大学に分かれ、バスで大学を訪問し、大学での学びの場を体験する機会を設けています。

3月には現役の難関大学合格者との懇談会を開催し、受験に向けた具体的なアドバイスを後輩に伝える場も設けています。
このように、本校の様々な行事は生徒の主体性を育みながら、進路実現をサポートするために体系的に構成しています。

文武両道を実践する活発な部活動

ー部活動の特徴について教えて下さい。

磯邉氏:本校では運動部15、文化部15と、様々な課外活動の場を提供しています。運動部と文化部はともに全国レベルで活躍しています。運動部はインターハイや関東大会への出場実績があり、文化部も全国総文祭に出場するなど、高い水準の活動を続けています。

文化部の種類も多彩で、地域でのボランティア活動を行うJRC部では、募金活動や校内でのリサイクル活動など社会貢献活動にも力を入れています。また、生物部や物理部、地学部といった理科系の部活動も充実しており、本校の特色である科学教育の一翼を担っています。

部活動全般において、生徒たちは自主的な活動を展開し、学業との両立を図りながら充実した高校生活を送っています。

これは本校が大切にしている「自主自立」の精神が、部活動の場面でも活かされている証と言えるでしょう。各部活動での経験は、生徒たちの人間的な成長を支える重要な機会となっています。

充実した高大連携と実践的なキャリア教育

ー高大連携事業やホームルームセミナーについて教えて下さい。

磯邉氏:本校では地元の茨城大学工学部や茨城キリスト教大学と積極的に連携を図っています。茨城大学工学部との連携では、夏休み期間中に生徒が大学に行って研究室を訪問したり、工学部の教室で最先端の研究に触れたりする機会を設けています。

また、行事は学年に応じて内容を変えて実施しています。先ほども説明したホームルームセミナーのように、1年生向けには、様々な分野で活躍する社会人の方々をお招きし、職業選択の理由や仕事の苦労、やりがいについてお話しいただき、将来に渡るキャリアを広く考えます。2年生では、高校卒業後に進学する大学での学びをより具体的にイメージできるようにしています。その他の進路行事でも年次が上がるごとにより具体的な進路イメージをつかめるような工夫を行っています。

生徒の自主性を重んじる指導理念

ー生徒への指導方針や大切にしていることを教えて下さい。

磯邉氏:本校の指導において最も大切にしているのは、教師が一方的に指導するのではなく、生徒が自ら考え、選択し、学び取っていくという姿勢です。この「自主自立」の精神は本校の長年の伝統であり、教員間で共有される重要な価値観となっています。

具体的な指導場面では、生徒たちに様々な選択肢や材料を提供し、自分で判断し行動に移せるよう支援しています。例えば、進路指導においても、教員が一つの道を押し付けるのではなく、生徒自身が主体的に進路を選択できるよう情報提供やアドバイスを行っています。

多様な入試に対応する体系的な受験指導

ー具体的な受験指導やプログラムについて教えて下さい。

磯邉氏:近年の大学入試は大きく多様化しており、特に私立大学では入学者の半数以上が総合型選抜や学校推薦型選抜などのいわゆる年内入試で合格しています。

こうした入試動向を踏まえ、当校では従来の教科学習における思考力・表現力の育成に加えて、年内入試への対策も充実させています。希望者には個別の小論文指導や面接指導を実施し、それぞれの入試形態に応じたきめ細かなサポートも可能です。

先輩に難関大合格者がいるからこそできる取り組みとして、3月に実施している難関大学合格者との懇談会があるのですが、これは合格したばかりの卒業生を15名ほど招き、1、2年生に向けて高校生活の過ごし方や学習方法などについて具体的な体験を語ってもらう会です。直近の入試で合格した先輩から直接アドバイスを受けることで、後輩たちは受験に向けたより実践的なイメージを持つことができます。

伝統と革新の調和で目指す魅力ある学校づくり

ー御校としての今後の展望を教えて下さい。

磯邉氏:茨城県立日立第一高等学校は、まもなく創立100周年を迎えますが、この節目を新たな出発点として捉えています。特に、人口減少が進む茨城県北地域において、これまで以上に地域に必要とされ、生徒や保護者から選ばれる学校であり続けたいと考えています。

そのために、本校の伝統である「自主自立」の精神を大切にしながら、時代の要請に応える教育活動を更に充実させていく考えです。科学教育と国際教育を両輪とした特色ある教育プログラム、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)での研究活動、そして地域の医師不足に応える医学コースなど、社会のニーズに即した取り組みを今後も発展させていきたいと思います。

「自主自立」の精神で切り拓く、かけがえのない高校生活

ー中学生へのメッセージをお願いいたします。

磯邉氏:私自身の人生を振り返っても、高校時代は人生の方向性を定める上で極めて重要な時期だったと実感しています。3年間という短い期間ではありますが、この時期に培った考え方や価値観は、その後の人生の基礎となっていくでしょう。

茨城県立日立第一高等学校には「自主自立」の校風があります。制服のない学校として知られる本校では、生徒一人一人が自分で考え、判断し、行動する力を身に付けることができます。また、文武両道の精神のもと、充実した学習環境と活発な部活動、そして様々な学校行事を通じて、豊かな高校生活を送ることができるでしょう。

中学生の皆さんには、ぜひ本校で共に学び、切磋琢磨する仲間とともに、自分の可能性に挑戦してほしいと思います。私たち教職員一同、皆さんの夢の実現に向けて全力でサポートいたします。茨城県立日立第一高等学校で、皆さん一人一人の輝かしい未来への第一歩を踏み出してください。