岡山県にある『金光学園中学・高等学校』は、創立から131年という長い歴史の中で培ってきた独自の教育理念と、時代に即した革新的なプログラムを融合させた注目の中高一貫校です。
全校生徒800名のうち年間約200名が海外研修に参加するという圧倒的なグローバル教育の規模、全生徒が行事運営に関わる主体的な学校づくり、そして金光教の理念に基づく心の教育まで、他校では類を見ない包括的な全人教育を実践しています。
「人をたいせつに、自分をたいせつに、物をたいせつに」という合言葉のもと、真に世界で活躍できる人材の育成に取り組む同校の魅力について、総務課長の北川弘樹先生に詳しくお話を伺いました。

創立131年が育んだ「全人教育」の理念

ー北川先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。まずは『金光学園中学・高等学校』の教育理念についてお聞かせいただけますでしょうか?
北川弘樹 総務課長(以下、敬称略):本校の教育理念は「真に世のお役に立つ人材の育成」です。どのような人材を想定しているかと言いますと、日本だけでなく世界も視野に入れて、世界の平和や繁栄に貢献できるバランスの取れた人材の育成を目標としています。
本校は創立から今年(2025年)で131年を迎えますが、初代校長の時代から「学ぶ」ということ、そして学習だけでなく道徳心を育むこと、さらに健全な心身を育てることという「学・徳・体」3つの要素を一つにした「全人教育」を実践してきました。人として大切なことを様々な経験や体験を通じて学び、力をつけていってほしいという想いで教育に取り組んでおり、世のお役に立つ人材の育成が私たちの目標です。
連携する5本の柱で実現する総合的な学びの環境

ー実際に、今お伺いした教育理念に沿ったプログラムや文化活動などがございましたら、ぜひ教えてください。
北川:本校では様々な活動を行っていますが、対外的には「5本の柱」という形で紹介させていただいています。
学習・探究・グローバル教育・部活動・行事の5本の柱があり、これらがそれぞれ連携し合いながら生徒の力を伸ばしていくことを目指しています。
まず学習面では、自ら学ぶ姿勢を育てることに重点を置いています。中高一貫校の特性を活かし、中学1年生の段階から学習に対する意欲を高めたいと考え、1人1台端末を導入し、校内全ての教室にWiFiとプロジェクターを設置しました。これらを活用して調べ学習やグループワーク、ディスカッションなどの活動を各教科の授業に取り入れています。
本校では土曜日も授業を実施しており、カリキュラムに余裕を持たせることで、生徒の学習意欲を高められるような活動に時間を充てています。中学校に比べ高校の学習はつまずきがちと言われることが多いため、高校1年生が4月にスムーズにスタートできるよう、中学3年生の3学期頃から高校の学習内容も前倒しで取り組んでいます。また、中学校では‟すらら”、高校では‟スタディサプリ”を導入し、生徒が自分の興味のある分野をしっかりと勉強できる環境を整えています。
高校からは進路希望に応じて2つのクラスを設けています。一つは特別進学クラスで、難関国立大学を視野に入れ、平日7時間目まで授業を行い、レベルの高い学習に取り組みます。また、探究の授業も多く設定し、大学連携による総合選抜を見据えた専門的な研究活動に取り組むクラスです。もう一つは総合進学クラスで、6時間目までの授業とし、放課後の自由な時間を確保することで、部活動や行事、それぞれの生徒の課外活動を応援するクラスとなっています。
心の教育にも力を入れており、本校は金光教を母体としていますが、教員や生徒が金光教に入信する必要は一切ありません。ただし、「人を幸せにしたい」という理念のもと、人権教育や宗教の時間、平和学習などを通じて、6年間で心の豊かさを育む様々な取り組みを行っています。これも本校の大きな特徴の一つです。
年間200名が体験する本格的グローバル教育プログラム

ーグローバル教育や英語教育において、『金光学園中学・高等学校』として積極的に取り組んでいる内容を是非お伺いさせてください。
北川:グローバル教育については、本校では中学3年生全員が、オーストラリアのパースで10日間のホームステイを行うグローバル研修を実施しています。現地の学校を訪問したり、文化体験をしたりと充実した内容となっています。
高校では、イギリスでの2週間の語学研修と、ニュージーランドでの約10日間の交流プログラムを用意しており、それぞれ希望する生徒が参加する機会があります。また、オーストラリアのキャンベラと韓国のソウルに姉妹校を持っており、毎年相互に行き来する交流を行っています。
本校では、全校生徒が中高合わせて800名ほどですので、その中の150~200名が毎年海外に行くことになります。そのため、学校の至る所で「行ってきたよ」「これから行くんだ」といった話を聞くことができ、海外に対するハードルが非常に低くなっていると感じています。
一方で、外国からのゲストの受け入れも積極的に行っています。姉妹校の生徒はもちろん、地元の岡山大学大学院に留学している学生との交流会や、京都にあるアメリカの大学からの留学生団体も毎年交流のために来校されます。海外からのゲストも年間で200名近くお迎えするため、日本にいながらも海外の雰囲気を味わうことができるのが特徴です。
本校には「人をたいせつに、自分をたいせつに、物をたいせつに」という合言葉があり、一番最初に「人」が来ています。海外での研修や交流を通じて、自分とは違う人々がいることを実際に体験し、多様性の尊重をしっかりと学んでほしいと考えています。そのため、中学2年生から国際理解講座などの事前学習を行い、単に英語を学ぶだけでなく、多様性を認め合うことの大切さを学ぶ機会を設けています。
全生徒参加型の行事運営と専門的な探究学習

ー他の学校にはない学びであったり、『金光学園中学・高等学校』ならではの独自に取り組んでいることがあれば教えていただけますでしょうか?
北川:まず行事について大きな特徴があります。
多くの中学高校では生徒会執行部が中心となって行事を運営することが多いのですが、本校では全生徒がいずれかの委員会に関わって行事を作り上げています。各行事ごとに実行委員会を立ち上げ、企画段階から運営、そして後輩への引継ぎまで、生徒自身に委ねているのが特徴です。
これは「世のお役に立つ」という理念に通じるのですが、他の人と協力して新しくて良いものを作っていくという経験を中学高校時代から積んでほしいという想いがあります。体育祭と‟ほつま祭”という文化祭があり、特に文化祭では全クラスが演劇または展示に取り組み、地域にも公開して2日間で5000人を超える来場者をお迎えしています。
探究学習においても独自の取り組みがあります。2011年から2015年はSSH(スーパーハイスクール)に、2014年からはSGH(スーパーグローバルハイスクール)に取り組んでおり、大学の先生にティーチングアシスタントとしてお願いしたり、国立天文台岡山天体物理観測所の元所長にも非常勤講師として関わっていただいたりと、大学との連携により専門的な研究を行っています。中学校では地域の課題や魅力を見出すことから始め、高校では世界規模での貢献を考える段階に発展させています。こうした取り組みの成果として多くの賞をいただいており、総合型選抜や自己推薦型入試で活用する生徒も多くいます。

部活動も盛んで、男子バレーボール部、陸上競技部、少林寺拳法部がインターハイに出場し、音楽部コーラスなども全国大会レベルで活動しています。
校内にいながら世界と繋がる英語実践環境

ー生徒が学んだ英語スキルを校内で実践する機会はありますか?
北川:実践する機会は本当にたくさんあります!留学生の受け入れも行っており、高校1年生の教室には毎年少なくとも1人、半年から1年間の留学生が在籍するため、日常的に交流する機会があります。海外に出て行く機会も豊富ですし、国内でもベルリッツ(英会話学校)と提携してEnglishプログラムを実施し、「English Village」という形で英会話の機会を作っています。つまり、海外に行っても行かなくても、英語を使ったり触れたりする機会が充実しています。
校内の英語学習では、「English Skills(ES)」という授業を実施しています。オーストラリア出身の先生1人とアメリカ出身の先生1人の2人で1クラスを半分に分け、大体15人程度の少人数で、中学校では週1〜2回この実践的な授業を行っています。外国人の先生方も工夫を凝らしており、野球中継を一緒に見たり、コマーシャルを作ったりと様々な活動を通じて学習しています。純粋に英語のスキル向上はもちろんですが、オーストラリアやアメリカの学校で行われているような、生徒の自主性を重視したクラス運営や授業運営も体験できることを重視しています。
地域と共に歩む次世代教育への挑戦

ー今後こういった点をより強化していきたい、充実していきたいということがあれば、ぜひお伺いさせてください。
北川:グローバル教育については、まだまだ新しい繋がりを増やしていきたいと考えて活動しています。
もう一つの重点分野として、中学校の探究学習をより充実させたいと考えています。
現在、職業体験をマイナビと連携して実施していますが、本校の卒業生が地元の商工会議所で中心的な役割を担っているため、その繋がりを活用した新しい取り組みを計画しています。具体的には、中学2年生の夏に地元の企業の方や経営者の方を校内にお招きして様々なお話を伺い、生徒たちが課題や解決策を考えた上で、実際に企業や現場を訪問して実践的に学ぶというプログラムです。現在の中学1年生から、来年度のプログラムとしてスタートさせるべく、担当者が準備を進めています。
地域の魅力を掘り起こしたり、課題を解決したりといった、いわゆる地方創生と呼ばれる分野において、学校としても積極的に貢献していきたいと考えています。
デジタル時代だからこそ大切にしたい心の教育

ー金光教をベースにした教育についてお聞きします。今の時代だからこそ必要な全人教育の重要性について、北川先生のお考えをお聞かせください。
北川:人として、人の幸せとは何だろうか、人としてどう生きていくのが良いのかということは、なかなか答えが見つからない難しい問題だと思います。金光教は江戸時代末期にできた、日本史では新興宗教と言われる宗教ですが、よく「あいよかけよ」という表現を使います。これは、お互いに助け合い、他の人とも神様とも助け合うという意味で、愛をかけるような心で頑張りましょうということです。
誰かのお世話に必ずなっているのだから、自分勝手や独りよがりになるのではなく、集団や社会の中に生かされている、世界の中に生かされている人として、どうあるべきかを考えましょうということが教えられています。
他の宗教と違う点として、金光教は非常にリベラルな宗教であることが挙げられます。例えば、キリスト教では神様が世界を創造したという考え方ですが、金光教では「人あっての神」という考え方で、神と人とは対等な関係にあるとされています。神様だけがいても始まらないし、人だけがいるわけでもない。神様というのは形のあるものではなく、この世の中のシステムや社会全体、自然も含めたものを指しており、それは神様のおかげでもあるけれど、神様だけの話でもない。人と神様が対等に協力して、良いものを作り、良い社会を築いていけたら良いという考え方があります。
やはり他の人と協力して、お互いを傷つけ合うことなく、どのようにして上手に新しい時代を作っていくのかということについて、金光教という宗教がベースになっていることが大きく影響していると思います。現代では個人主義や自由主義が重視されがちですが、それだけではなく、人と人との繋がりの中に何か大切なものがあるのではないかということを常に考えています。
「やりたいこと」が必ず見つかる学校からのメッセージ

ー最後に、こちらの記事をご覧の保護者や生徒の皆さんに、ぜひ北川先生からのメッセージをお願いします!
北川:私も学校説明会でよくお話しするのですが、「本当にそんなに色々なことを実際に行っているのですか?」とよく質問されます。ぜひ実際に足を運んでいただいて、在校生の様子をご覧いただければと思います。
来校された方からは「本当に優しい学校ですね」とよく言われるのですが、「人を大切に」という合言葉があることも影響しているのかもしれません。来てくださる方や後輩に対して、本当にウェルカムな雰囲気ですので、ぜひオープンスクールや1日入学で実際に足を運んでいただければと思います。
また、本校では「やりたいことを全力で応援する」ということも大切にしています。仮にやりたいことがまだ見つからなくても、これだけ多様なプログラムがあれば、きっとやりたいことが見えてくるはずです。一歩踏み出してみたい、何かにチャレンジしてみたいという気持ちをお持ちのお子さんやご家族の皆様に、ぜひお越しいただければと思っております。