「帝京=スポーツ強豪校」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。確かにサッカーや野球で全国レベルの活躍を見せる同校ですが、実際には特進コースで難関大学を目指す生徒、1年間の海外留学を経験するインターナショナルコース生、そして探究活動に打ち込む生徒たちなど、実に多彩な学びが展開されています。
創立80年を越えた帝京中学校・高等学校は「努力を全ての基とする」という建学の精神のもと、時代の変化に応じた先進的な教育改革を続けてきました。今回は入試広報部長の鈴木斎彦(すずき よしひこ)先生に、一般的なイメージとは異なる同校の真の姿について詳しくお話を伺いました。多様な進路選択と豊富な体験学習、そして全校一体となった学校行事まで、帝京の知られざる魅力をご紹介します。

創立80年の歴史が育む「努力を全ての基とする」教育哲学

ー鈴木先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。はじめに『帝京中学校・高等学校』の教育理念や特色について詳しく教えていただけますか?
鈴木斎彦 入試広報部長(以下、敬称略):『帝京中学校・高等学校』は80年前に冲永荘兵衛という先生によって創設されました。この方は柔道家でもあったことから、「努力を全ての基とする」という言葉を建学の精神として掲げました。その上で正直・礼儀を校訓とし、人間性を重視する教育を行っているのが特徴です。
本校は創立以来、時代に応じた先進的な取り組みを数多く実施してきました。たとえば高度経済成長期には自動車科を設置するなど、常に社会のニーズに応える教育を展開してきました。一般的にはスポーツのイメージが強い学校だと思われがちですが、実際にはインターナショナルコースをはじめとするグローバル教育にも力を入れており、幅広い分野で教育活動を行っているのが大きな特徴だと思います。
本物に触れる体験学習と圧巻の全校応援文化

ー他校とは違う『帝京中学校・高等学校』独自の取り組みやカリキュラムがあれば、ぜひ詳しくお聞かせください。
鈴木:他の学校でも似たような取り組みをされているところはありますが、本校の特色として、まず中学校では体験学習と探究活動を組み合わせた教育を重視していることが挙げられます。本校では様々な体験を積極的に取り入れ、生徒に本物に触れさせることに重点を置いています。
高校については、やはりスポーツの強豪校という特色を活かし、全校応援に力を入れています。準決勝や決勝といった重要な試合では、全校が一致団結して応援に取り組みます。これほど頻繁に全校応援を行う学校は、他にはなかなかないのではないでしょうか。
ー確かに‟帝京といえばスポーツ”というイメージが強いですね。
鈴木:そのイメージが先行してしまっているのが、実は少し残念な部分でもあります。特進コースもありますし、きちんと勉強に取り組むコースやグローバル教育を行うコースもあるのですが、そうした面がなかなか伝わりにくいのが現状です。
AI時代を生き抜く「人間力」を重視した人材育成

ー教育理念やカリキュラムをベースに、生徒の皆さんにはどのような力を身につけてほしいとお考えでしょうか?
鈴木:校長もよく申しておりますが、多様な社会で活躍できる人材に育ってほしいと考えています。現代は非常に多くの選択肢があり、その中で生きていく力が求められています。これまでのように良い成績を収めて大学に進学し、良い就職をするという単純な構図とは異なる社会になってきています。
特にAIの発達により仕事が減少するといった話もありますが、そうした変化の中でも生き残れるような人間性や能力を身につけてもらいたいと思っています。技術的なスキルだけでなく、人間としての根本的な力を育てることを重視しています。
「本音を聞く」個別面談と充実の校内予備校システム

ー進路指導の取り組みについてお伺いします。一人ひとりそれぞれ進路への思いや方向性が違うと思うのですが、どのような取り組みをされていますでしょうか?
鈴木:本校ではコース制を採用しているため、コースによって若干異なりますが、まず重要なポイントとして、帝京高校という校名から帝京大学への進学を考える受験生も多いのですが、ストレートで帝京大学に進学するケースは皆さんが想像するほど多くありません。
進路指導においては、何より生徒本人の希望を正確に把握することを重視しています。私自身も担任をしていた経験がありますが、保護者会の後に生徒と個別面談を行い、本音を聞き出すことから始めています。このようなソフト面でのサポートを基盤として、個々に適した指導を行っています。
ハード面では、放課後講座や校内予備校を設置しています。後者は外部業者に依頼し、本校では看護系志望の生徒が多いことから、そうしたニーズに対応した国語・英語・小論文・理科などの講座を重点的に開講しています。
高1から始まる戦略的キャリア教育プログラム
ー生徒さんたちの受験モチベーションを維持するために、学校として意識して取り組んでいることはございますか?
鈴木:大学受験に向けたモチベーション維持については、高校1年生から段階的にガイダンスを実施しています。まず高校1年生では、外部業者による職業ガイダンスを行い、世の中にどのような仕事があるかを紹介しています。
ある程度方向性が定まってきた高校2年生では、希望する職業から逆算して大学の学部・学科を考える講座を設けています。そして高校2年生後半から3年生にかけては、大学の模擬授業を実施し、実際の大学での学びがどのようなものかを体験してもらいます。
このように段階的にガイダンスを行うことで、単にモチベーションを維持するだけでなく、より具体的で高い目標意識を育てていくことを目指しています。
6つのコースで叶える多様な夢・GMARCH超えから国際人材まで

ー帝京といえばスポーツというイメージを多くの方が持っていると思うのですが、実際には特進コースやインターナショナルコースなど特色あるコースがありますよね。それらについてもっと詳しくご説明いただけますでしょうか?
鈴木:まず中学校には一貫進学コースがあり、これが先ほどお話しした探究活動と体験学習を組み合わせた教育を特に重視して行っているコースです。月に1回程度の校外学習を実施し、明確な目標を持っていない生徒でも、様々な体験を通じて失敗も含めて学びながら、6年間かけてじっくりと成長できるコースです。サマーキャンプや勉強合宿なども実施しています。
この進学コースの中にインターナショナルクラスが1クラスあります。これは今年度から新設されたもので、高校のインターナショナルコースと連携しています。単に英語ができるようになることを目指すのではなく、英語を使って何を発信するかを重視し、最終的にはグローバルリーダーとして地球市民社会で活躍できる人材の育成を目指しています。
一貫特進コースは、GMARCH以上の上位大学進学を目標としています。ただし詰め込み式の勉強ではなく、自ら学びたいという意欲を育てる教育を行っています。具体的には、つくば市でのサイエンスツアーを実施し、科学の最先端に触れたり、実際の研究者との対話や実験への参加などを通じて、本物の学問への興味を喚起しています。
留年なしの1年留学制度!充実のグローバル教育環境

鈴木:高校の特進コースは、基本的に中学の一貫特進コースと同じ方針で運営しています。高校2年生からは一貫特進コースの生徒と合流し、文系・理系に分かれて切磋琢磨しながら学習を進めています。
インターナショナルコースの大きな特徴は、海外留学課程があることです。高校1年生の9月から2年生の6月まで、丸1年間の留学が可能です。他校では学年がずれてしまい留年扱いになることが多いのですが、本校では留学から戻った後、そのまま高校2年生として復学できるシステムを整えています。

長期留学が困難な生徒には、英語特化課程を用意しています。オールイングリッシュの授業を受けながら、カナダ、オーストラリア、アメリカなどでの3~6か月程度の短期留学を経験し、その英語力を活かして大学進学を目指します。担任は外国人教員が務め、日本人教員とのダブルティーチャー制で指導しています。
進学コースは、特定の明確な目標をまだ持っていない生徒向けのコースです。まずは学校生活を楽しむことを第一とし、探究活動を通じて現在の大学入試の主流となっている総合型選抜に対応できる力を身につけることを目指しています。
早稲田・慶應も!アスリートコースの驚きの進学実績

鈴木:最後にアスリートコースですが、これは本校の伝統的な看板コースです。意外かもしれませんが、全体の生徒数に占める割合はそれほど高くなく、高校では1学年2クラス、約240名という規模です。全校生徒が中高合わせて約1340名ですから、比較的少数精鋭で運営しています。
アスリートコースの生徒たちがテレビに出演したり、熱戦を繰り広げたりして学校の知名度向上に貢献してくれていますが、進学実績も決して侮れません。早稲田大学や慶應義塾大学に進学する生徒も珍しくありません。
例えば、現在(2025年)早稲田大学野球部で1番打者として活躍している尾瀬雄大選手は本校の卒業生です。彼はスポーツ推薦ではなく、自己推薦で合格しており、学力での入学を果たしています。このように、各コースそれぞれに特徴があり、多様な進路選択が可能なのが本校の魅力だと思います。
東京体育館で1300名が熱狂!コースの壁を越えた一体感

ー様々なコースがあって、それぞれに特色があることがよく分かりました。学校全体の雰囲気として、コースを超えて交流する機会はあるのでしょうか?
鈴木:コースの垣根を越えて交流する機会は主に2つあります。
1つは文化祭で、これは「蜂桜祭」と呼んでいますが、コースごとのイベントもありつつ、中学生などは学年全体で一緒に取り組む企画もあります。
最も視覚的にコースの壁がなくなるのが、2つめに挙げさせていただく体育大会です。校内に適切な施設がないため、外部会場を借りて実施しています。昨年は東京体育館、今年(2025年)は京王アリーナTOKYOを使用しました。

全校生徒約1300名が赤・青・黄の3色に分かれて色別対抗戦を行います。5月に実施するため、中学1年生はまだ小学生らしさが残る小さな体格の生徒から、アスリートコースの大柄な生徒まで、一緒になって1日中盛り上がります。この時ばかりはコースの違いは全く関係なく、一体感を感じることができます。
「スポーツだけじゃない」を伝える広報改革の3年間
鈴木:実は私が入試広報部長に就任して3年目(2025年現在)になるのですが、これまでの広報活動には課題がありました。帝京という名前がある程度知られているため、それなりに生徒は集まっていたのですが、学校の個性や特色を積極的にアピールすることはあまりしていませんでした。
アスリートコースの生徒たちが頑張ってくれることで伝統を築いてきたのは事実ですが、実際にはインターナショナルコースや進学コース、特進コースなど、多様なコースが1998年から設置され、特進コースは2015年から始まって既に十数年が経過しています。
今まではこうした多面的な魅力が十分に伝わっていませんでした。私が着任してからは、学校の中身をしっかりと伝える広報に方針転換し、様々な取材も積極的に受けるようにしています。少しでもスポーツだけではない『帝京中学校・高等学校』の魅力を知ってもらいたいと思っています。
令和100年まで社会に必要とされる学校を目指して

ー今後どのような学校にしていきたいというビジョンがあれば、ぜひお聞かせください。
鈴木:今年は昭和100年という節目の年ですが、93年後には令和100年を迎えることになります。その時に『帝京中学校・高等学校』がただ存在しているだけでなく、社会に必要とされる学校として残っていることを目指しています。
そのためには、現在起きていることを把握するのは当然ですが、二手三手先を読む必要があります。「先が見えない」とよく言われますが、それはどの時代でも同じだと思います。見えない未来を想像し、予測が外れたら軌道修正すればよいという姿勢で、積極的にチャレンジしていきたいと考えています。
これまでの先輩方も自動車科や建築科を設置するなど、時代に応じた挑戦を続けてきました。そうした挑戦精神こそが本校の伝統だと思います。80年の歴史を持つ伝統校として、ただ昔のやり方を踏襲するのではなく、時代に合わせて進化し続けることで、真の意味での伝統を受け継いでいきたいと思います。
「まずは学校に遊びに来て」兄弟・親子で選ばれる理由

ー最後に『帝京中学校・高等学校』に興味を持たれた方々、そして保護者の皆様に向けて、鈴木先生からメッセージをお願いいたします!
鈴木:この記事を通して、帝京のイメージが少しでも変わったでしょうか。私たちが本当にお伝えしたいのは、スポーツも勉強も、そして人間性の成長も、すべてが高いレベルで融合している学校だということです。
何より大切なのは、実際に学校の空気を感じていただくことです。説明会やオープンスクールでは、在校生の表情や先生との距離感、そして校舎に響く生徒たちの声を体験してください。きっと「ああ、これが帝京なんだ」と感じていただけるはずです。
実は本校には、兄弟で入学する生徒、そして親子2代で通われるご家庭が驚くほど多いのです。これは偶然ではありません。一度本校の教育を受けると、その価値を深く理解していただけるからです。「帝京で学んだ子どもに、ぜひ弟や妹も」「自分が受けた教育を、わが子にも」そんな声をたくさんいただいています。
私は入試広報部長として、この2年間で学校の真の魅力を伝える活動に力を入れてきました。しかし最終的に皆さんに判断していただくのは、実際に足を運んでいただいた時の「直感」だと思っています。
お忙しい中とは思いますが、ぜひ一度、帝京の校門をくぐってみてください。オープンスクールや説明会はもちろん、個別でのご相談も承っています。
80年の伝統と、令和の時代に向けた新しい挑戦。その両方を体現する帝京で、お子様の可能性を一緒に広げていきませんか。皆様とお会いできる日を、心よりお待ちしております。