少子化や教育の多様化が進む中、多くの学校が独自の特色を打ち出そうと競争を繰り広げています。そんな教育現場において、「‟普通”であることの価値」を大切にしながら質の高い教育を提供し続けている学校があります。創立120年余りの歴史を誇る『茨城県立土浦第二高等学校』です。
同校では「自分で考えて行動できる人材育成」を教育の中核に据え、現代の生徒たちが苦手とする「自立して考える力」を育むことに注力しています。特色を追求するよりも、すべての生徒を包み込む包容力のある教育環境を提供することで、地域からの厚い信頼を獲得してきました。
今回は同校の教務主任である益子先生にお話を伺い、122年の伝統校が現代教育に向き合う姿勢や、落ち着いた学習環境で実現する質の高い教育の秘訣について詳しくお聞きしました。‟普通”の学校が持つ真の価値とは何なのでしょうか。
120年の歴史が育む教育理念と学校の特色

ー益子先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。まずは、茨城県立土浦第二高等学校様の教育理念や特色について教えてください
益子雅文 教育主任(以下、敬称略):本校が目指す学校像として、「自立的で責任感のある人間として、多様な価値観を踏まえて協働して活動する」ことを掲げています。そして現代社会を生きるための思考力・判断力・表現力を身につけ、物事を分析・考察することができる人材の育成を目標としています。
ー土浦第二高等学校はもともと女子校でしたよね。
益子:かつては女子校でしたが、平成6年に共学となりました。すでに30年以上が経過しており、現在は男女比では女子の方が多いものの、共学校として運営しています。
現代の生徒に必要な「自分で考える力」とは

ー生徒の皆様にはどのような力を身につけてほしいとお考えでしょうか?
益子:あくまで一般論としてですが、最近の高校生の傾向として、自分で考えて行動することが苦手な生徒が多いと感じています。そこで本校では、自分で物事を観察し、それを分析して、そこから自分なりに考えて行動を起こしていく、そういった一連の流れができるような人材を育てたいと考えています。
これは現在重視されている「探究学習」の理念と通じるものがあります。こうした力を身につけて、社会に出てから自分の力で生きていけるような人材を育てることが、私たちの一番の願いですね。
ー自分で考える力が苦手な生徒さんが増えてきた背景には、どのような要因があるとお考えですか?
益子:やはり、実際に様々な経験をする機会が減っていることが大きいと思います。特に、自分で決断しなければならない場面に立ち会う機会が、以前と比べて明らかに減少しています。
現代社会は確かに優しく親切になっており、様々なフォローやアドバイス、手助けが得られるのは良いことです。しかし、いざ「今日から社会人!」となった時に、一人で放り出されて身動きが取れなくなってしまうケースが実際に増えているのと言わざるを得ないでしょう。
子どもの頃からの実体験が不足していること、そして困難な状況への対処を経験したことがないということが、このことの大きな要因のひとつだと考えています。
自立心と考える力を育む具体的な取り組み

ー社会で前向きに生きていく力を養うために、どのような取り組みをされていますか?
益子:まず大切にしているのは、生徒の自主自立です。具体的には、自分たちで考えて学校行事を運営したり、既存の体制を見直して、自分たちがやりたいことや改善したいことがあれば、それをどうしていきたいのか積極的に検討するよう指導しています。
現在の学校行事についても、生徒たちが自主的に運営することはかなりできていると思います。そしてその中で重要なことは、生徒たちが「うまくできた」という達成感を味わえるよう、私たち教員が適切にサポートすることだと思います。この絶妙なバランスを保つことが、非常に重要なテーマだと考えています。
一人ひとりに寄り添う進路指導

ー生徒さん一人ひとりの進路希望にはどのようにご対応されていますか?
益子:本校は進学校として、ほとんどの生徒が4年制大学への進学を目指す学校です。生徒・保護者の皆さんは、できるだけ自分たちのニーズに合った進路を実現したいということで本校を選んでくださっています。
そのため、特に生徒それぞれに対する個別対応が重要になっています。三者面談をはじめ、保護者も含めた面談や情報共有、意思疎通を密に行いながら、「何を学びたいのか」「学校に何を求めているのか」という部分をしっかりと把握して対応しています。
これは確かに担任にとって負担が大きい面もありますが、担任一人で抱え込むのではなく、学年全体、学校全体で情報を共有しながらフォローしていく体制を整えています。このような取り組みを通じて、先ほど申し上げた教育目標を実現していきたいと考えています。
生徒のモチベーション向上への工夫

ー生徒さん達のモチベーション維持のために学校として意識していることや取り組んでいることを教えてください。
益子:本校の生徒は非常に真面目で、やらなければならないことはしっかりとやるという気概を持った生徒が多いんです。責任感の強さの表れといえますが、ただ、これは先ほどお話しした「自分で考えて動くのが苦手」という面と表裏一体でもあると思います。
そうした生徒たちの特性をふまえつつ、「こんなこともできるよ」「こういうことも考えてみたらどうかな」といった新しい視点や選択肢を提示することで、モチベーションを高めています。「こんな世界もあるんだ」ということを、生徒たちに見せてあげることを心がけています。
このような指導は、担任や教科担当教員の腕の見せどころでもあると思っています。
120年の伝統が生み出す落ち着いた学習環境

ー学校の雰囲気についてはどのような感じでしょうか?
益子:本校は122年目(2025年現在)を迎える伝統校であるということでしょうか、非常に落ち着いた雰囲気があります。生徒たちを見ていても、穏やかで真面目な生徒が多いですね。
生徒たちからよく聞くのは、「落ち着いたクラスメートが多いので、勉強も含めて学校生活がとても過ごしやすい」という声です。この環境は本校の大きな魅力のひとつだと思います。
また、地域との関係についても触れておきたいと思います。土浦は非常に歴史のある町で、本校の同窓会組織も規模が大きく、地域からの期待やアドバイス、様々なサポートをいただいています。こうした地域との強い繋がりも本校の強みの一つで、生徒たちが伝統を実感できる環境が整っています。
未来に向けたビジョンと特色づくり

ー今後どのような学校にしていきたいというビジョンがあれば、ぜひお聞かせください。
益子:先ほどお話しした目指す学校像や、生徒・保護者のニーズに応えるという基本方針は変わりませんが、少子化が進む中で、本校ならではの特色をより明確にしていく必要があると考えています。
「本校で学んで良かった」と思ってもらえるような特色を、改めて確立していかなければなりません。現在8クラスある規模も、今後は縮小していくことが予想されますが、そんな中で普通科の進学校として、どのような特色を打ち出していくかが課題です。
良い意味で、 ‟特色がないことが特色” のような学校といった面もありますが、現在は、本校に改めて何が求められているのかをリサーチしながら進んでいく必要がある時代だと感じています。
ー他校が様々な特色を打ち出す中で、いわゆる ‟普通” の学校であることが受け入れられている理由はどこにあるとお考えですか?
益子:やはり学校の雰囲気やイメージは大きいかと思います。実際に入学してみても「落ち着いて過ごせた」という実感が、卒業生を通じて伝わっていくのではないでしょうか。
本校はDXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)指定校でもあり、ICT環境も整備しながら教育活動を進めていますが、それが形だけのものにならないように注意しています。道具や器があっても、中身がなければ意味がありません。その中身となる部分、つまり伝統に甘えることなく新しい発想を取り入れながら、保護者や地域との強い繋がりを活かして、今後どうあるべきかを考えていく必要があります。
“普通”であることの価値 ー すべての生徒を支える包容力

ー良い意味で ‟普通の学校” であることが、実は大きな強みになっているのではないでしょうか?
益子:まさにおっしゃる通りだと思います。県教育委員会からも特色化を求められることはありますが、現在の茨城県では様々な新設校も作られ、生徒のニーズも細分化されています。
そんな中で本校を選んでくれる生徒たちは、先ほどお話ししたような教育を求めており、なおかつ落ち着いて穏やかに学校生活を送りたいという思いがベースにあります。そうした生徒たちを全体的にフォローしながら教育できることが、本校の特色でもあると感じています。
特色を打ち出すあまり、その分野が苦手な生徒が置き去りにされてしまうこともあるのではないでしょうか。本校は良い意味で ‟普通” であるがゆえに幅広い生徒に対応できる学校として、120年の伝統の中で培われた落ち着いた学習環境を提供し続けているのです。
探究学習とICT活用の推進

ー他校とは違う独自の取り組みやカリキュラムはありますか?
益子:他校でも同様の取り組みをされているとは思いますが、本校では「探究学習」に力を入れています。DX指定校として認定していただいたことで、ICT機器やWiFi環境なども大幅に充実しました。これらの設備を活用して、今まで実現できなかった学習活動も展開していきたいと考えています。
入学を希望する生徒・保護者へのメッセージ

ーこちらの記事をご覧になって茨城県立土浦第二高等学校様にぜひ入学したいと考えていらっしゃる保護者の方や生徒さん達に、ぜひ益子先生の方からメッセージをお願いします!
益子:本校が目指している生徒像は、自立して社会に出てもしっかりとやっていけるような人材です。進学校として、それぞれのニーズに合わせて、できるだけ質の高い、より豊かな学びを実現できるよう支援していきます。
同時に、高校生らしい青春の輝きと、地域に根ざした伝統ある学校ならではの落ち着いた学校生活も大切にしています。先ほどお話しした同窓会をはじめとする地域との様々な繋がりの中で、「自分たちは期待を込められてここにいるんだ」ということを意識しながら学校生活を送れることも、本校の大きなメリットだと考えています。
自ら考え、自ら行動し、自ら道を切り開いていく意欲と気構えのある生徒に、本校で学んでいただければと思います。
【曲】野球部ではない生徒が野球部のために作ってくれました。曲名『キミじゃなきゃ』はこれからの野球部の飛躍をマネージャー目線で描いた曲です!!ぜひ歌詞にも注目してみてください!!
【映像】野球部のマネージャーが撮影しました。マネージャーから見た景色を歌詞とリンクするように編集しました。