名古屋発、新しい科学教育の形 ー 公共施設で展開する体験型理科教室「地球倶楽部」

2025年4月、名古屋市を拠点に活動する地球倶楽部が、新たな一歩を踏み出します。これまで不登校の子どもたちの支援を行ってきた同クラブは、身近な自然を題材にした体験型の理科教室として生まれ変わります。河川での生物調査や天体観測など、公共施設を活用した本格的な実験・観察を通じて、子どもたちの理科への興味を育てていきます。

理科好きが集う場所として、新たな一歩を踏み出す

ー御社の活動内容と対象者について教えてください。

田島さん:設立から3年間、不登校の子どもたちを対象とした支援活動を行ってきましたが、2025年4月から新たな方向性へと転換します。自治体や各種団体と連携し、身の回りの自然を題材とした実験や実習、ネットワークを中心とした学習プログラムを提供していく組織となります。

対象は主に小学生や中学生ですが、親子で参加することも可能です。具体的な活動例として、地域の河川で石の観察や種類の判別、天体望遠鏡作りと星空観察、河川の生物調査や水質調査などを実施しています。

教育者としての経験を活かした新たな挑戦

ー設立のきっかけについて教えてください。

田島さん:私は25年以上、不登校の学生を対象とした進学指導の予備校に勤務してきました。そこでは、一人ひとりの興味や可能性を大切にしながら、進路指導を行ってきましたが、特に印象に残っているのは、自分のやりたいことや目標を見つけた生徒たちの変化です。それまで不安を抱えていた生徒たちが、目標を見つけることで大きく羽ばたいていく姿を数多く見てきました。

しかし3年前、勤務していた予備校が閉鎖となりました。その際、これまでの経験を活かし、同じような悩みを持つ子どもたちの支援を続けたいという思いから、スタッフやOBの方々と共にフリースクールを立ち上げました。

活動を進める中で、地域の方々との交流が広がっていきました。そこで見えてきたのは、不登校支援に限らない、より広い視野での教育支援の可能性でした。例えば、学校教育では十分に扱えない実験や観察、体験格差の解消、外国籍の親子への支援など、新しいニーズが見えてきたのです。

そうした経験から、2025年4月からは組織の形を変え、より多くの子どもたちに向けた学習プログラムを提供することにしました。私自身、理科を専門としていることもあり、自然科学をテーマにした実験や観察を通じて、子どもたちの好奇心を育む場を作っていきたいと考えています。フリースクールとしての看板は下ろすことになりますが、一人ひとりの興味や可能性を大切にするという理念は、これからも変わることはありません。

独自の強みを活かした科学教育の実現

ー御社のアピールポイントを教えてください。

田島さん:私たちの特徴は、実験や観察を通じて五感を働かせ、自然科学への造詣を深めるプログラムを提供できることです。学校では時間的制約のある理科実験も、私たちは100分以上かけてじっくりと取り組み、子どもたち自身の考える力を引き出していきます。

また、公共施設を利用した安価な価格設定により、地域住民の方々が気軽に参加できる点も強みです。さらに、大学の先生や学会と連携し、難しい内容を分かりやすく伝える工夫も行っています。

子どもたちの興味を大切にする指導方針

ー生徒さんと接する際に意識されていることはありますか?

天野さん:特に意識していることは、子どもたちの興味や「じっくり考える体験」を大切にすることです。効率主義的な考え方からは無駄と思われるような興味や考える体験を肯定し、自信につながる経験を提供するよう心がけています。

田島さん:私は年齢も上なので先生という立場で子どもたちを見ていますが、質問にすぐに答えを出さないよう心がけています。また、理科好きな子どもたちの将来の可能性を親御さんにも伝えていくことを大切にしています。

今後の展望

ー2025年4月からの活動について教えてください。

田島さん:週に1回程度、主に土日の昼間に活動を展開していく予定です。公共施設を活用することで、より多くの方々に参加いただける機会を創出していきます。また、大学や研究機関との連携も深め、より専門的な知識を分かりやすく伝えられる場を作っていきたいと考えています。

参加しやすい環境づくりを目指して

ー参加方法や料金について教えてください。

田島さん:図書館や生涯学習センター、なごや環境大学など、各施設のホームページから申し込みが可能です。

料金は1回2〜3時間で500円に設定しており、週1回程度、主に土日の昼間に開催しています。活動内容はXで随時更新しています。

記事を読んでいる方に向けたメッセージ

ー最後に、記事を読んでくださる方へメッセージをお願いします。

天野さん:理科好きな子どもたちが集う場として、公共の場所で気軽に参加できる機会を提供していきます。特に、普段は同じ趣味の友達を見つけにくい子どもたちが、ここでコミュニケーションを取れる場になることを願っています。

田島さん:外国籍の方や経済的な制約のある方も参加しやすいよう、安価な設定で親子で楽しめる講座を開催していきます。また、理科好きの学生の方々にはボランティアとしての参加も歓迎しています。

なお、個別に団体様向けの出張講座も開催できますので、地球俱楽部のHPよりお問い合わせください。