「一人の子どもとして当たり前の経験を」重症心身障害児デイサービスUBUNTUが目指す新しい福祉の形

重症心身障害がある子どもたちに、マンツーマンで寄り添い、公園遊びや料理、ダンスなど、子どもとして当たり前の体験の機会を提供するNPO法人「UBUNTU」。

安全面を重視するあまり、活動が制限されがちな重症心身障害児の支援において、「一人の子どもとして当たり前の経験をさせたい」という強い想いで、新しい福祉の在り方に挑戦する活動について、荒井綾子さんにお話を伺いました。

言葉を超えたコミュニケーションで、一人ひとりの気持ちに寄り添う

ー どういった方を対象にどのような支援をされていらっしゃいますか?

荒井さん:「UBUNTU(ウブントゥ)」は、重症心身障害をお持ちの方、つまり自分で歩けない、食事や飲水が自力でできない、あるいは言語でのコミュニケーションが難しい子どもたちを中心に活動を行っています。

また、経管栄養などの医療的ケアが必要な子どもたちも対象として放課後等デイサービスも運営しています。

ー このサービスを始められたきっかけについてお聞かせください。

荒井さん:以前、私が同じく重症心身障害児を対象とした施設で働いていた経験が、現在の事業立ち上げのきっかけとなりました。

そこで感じたのは、障害が重いがゆえに、安全・安心が最優先され、子どもとして当たり前の経験ができない現状でした。

室内でのんびり過ごすことが中心となっていましたが、それは本当にこの子たちにとって意味のあることなのか、という疑問が生まれました。

子どもの成長には、様々な経験や遊びを通じた学びが不可欠です。

そこで、一人の子どもとして当たり前に公園に行ったり、お店に行ったり人として当たり前の体験ができる場所を作りたいと考え、「UBUNTU(ウブントゥ)」を立ち上げました。

専門職の壁を超えて、誰もが関われる福祉を目指す

ー 「UBUNTU(ウブントゥ)」の一番のアピールポイントや特徴についてお聞かせください。

荒井さん:私たちの特徴は、子ども一人ひとりの個性に合わせたマンツーマンでの関わりです。

また、重度心身障害児の支援は専門職でなければできないという固定観念が、かえって障害の壁を高くしていると考えています。

そこで、未経験者でも関われる環境を作り、人として当たり前の関わりを大切にしています。

これが私たちの強みだと考えています。

ー 実際にお子さんたちはどのような活動をされているのですか?

荒井さん:担当するスタッフが、それぞれの子どもに合わせて活動を考えています。

公園での遊びや料理、ダンス、外出など、本当に様々な活動を行っています。

個性豊かなスタッフがそれぞれの方法で子どもたちと関わり、時にはふざけ合って遊ぶこともあります。

自分の人生を自分で描けるライフデザイナーへ

ー 子どもたちと接する際に大切にされていることは何でしょうか?

荒井さん:言葉によるコミュニケーションだけでなく、全身での表現、表情、手足の動きなど、その子なりの気持ちの伝え方を理解することを大切にしています。

また、喜怒哀楽をとことん表現してもらい、豊かな感情表現を通じて自分の個性や生きがいを感じられるようなコミュニケーションを心がけています。

ー 今後の展望についてお聞かせください。

荒井さん:「誰もが自分のライフデザイナーになれる街を創る」という理念のもと、高校卒業後の進路も見据えた取り組みを始めています。

昨年4月からマルシェや職場体験などを通じて、働く選択肢を広げる活動を行っています。

また、家庭支援として居宅介護や移動支援、行動援護も開始し、一人の人間として自立した生活を送るために必要なサービスを増やしていく予定です。

ー 最後に、この記事を読まれた方へメッセージをお願いします。

荒井さん:小さい頃から多様な人々と関わり、様々な考え方や関わり方があることを知ってほしいと思います。

一人で考えるには限界があります。

だからこそ、多くの人と関わり、異なる視点に触れることで、世界を広げていってほしい。

できないことがあるのは当たり前で、私たちも同じです。

大切なのは、一つ一つできることを増やしていくこと。そのためには、多くの人との関わりが不可欠だと考えています。