NPO法人マナビダネは、不登校の子どもたちを対象に、安心して自然体で過ごせる環境づくりを大切にしているフリースクールを運営しています。
遊びや体験を通じた学びを重視し、子どもたちの好奇心や自信を育む同スクールの取り組みについて、代表の土橋さんにお話を伺いました。
子どもたちの「自分らしい学び」を支える2つの事業
ー スクールの概要についてお聞かせください。
土橋:私たちは「学校外の学び場いろいろだね」と「学習サポートいろいろだね+」という2つの事業を展開しています。どちらも不登校のお子さまを対象に、自分らしく学んで成長できる場所を提供しています。
「いろいろだね」では、自然豊かな環境での遊びや自然体験を通して好奇心や安心感、自信を培うことを目指しています。
一方の「いろいろだね+」では学習サポートを中心としながらも、勉強の土台となる会話力を育むためのコミュニケーションゲームなどを取り入れています。
我が子の不登校経験から見えてきた「学び方の違い」
ー このスクールを始められたきっかけについて教えてください。
土橋:私には3人の子どもがいまして、上の子は病欠、下の2人は不登校で長期欠席を経験しました。特に末っ子が不登校になったコロナ禍がきっかけとなり、今だと思って始めました。
以前は発達障害の支援団体に勤めており、その中で我が子たちにも特性があることに気づきました。そこで「学び方が違う」ということを実感し、適切な学習環境があれば子どもは伸びていくという経験もしました。
現在の学校では、診断がついて支援の枠に入れる子ども以外が、必要な支援を受けられないケースが多く見受けられます。また、診断がついている子どもでも、その子に合った支援が提供されていない場合があります。
不登校の親の会などの活動を通じて、適切な支援につながれず、学校に違和感を抱く子どもたちが不登校になりやすい傾向があることを感じてきました。そういった状況を目の当たりにしたことも、3年前に事業を立ち上げた理由の一つです。
好奇心を刺激する体験から始める「学びの順序」
ー 実際のスクールでの取り組み内容を教えてください。
土橋:私たちは遊びや体験を通じた学びを重視しています。学校では通常、授業があってからその学びを活かすという順序があると思いますが、その順序を変えることが大切だと考えています。
スクールに来る子どもたちの多くは「勉強が大嫌い」「自分は馬鹿だ」と言います。そこで私たちは、まず好奇心を刺激するような体験を提供しています。
たとえば、たき火での火おこしや、缶を使ったアイスクリーム作りなど、子どもたちの「やってみたい」という声に基づいた活動を行っています。
また、学び直しのサポートも行っています。たとえば、中学生でも必要に応じて小学1年生の算数からやり直すこともあります。その際は、保護者や本人と相談しながら、スタート地点を決めています。
「やり直すのは当たり前」という環境づくりを心がけています。
対話力を育む独自の取り組み
ー 他のスクールにはない独自の取り組みについて教えてください。
土橋:まず、ゲームを持ち込まない珍しいフリースクールだと言われています。パソコンは使用可能ですが、ゲーム系は禁止としています。
また、私たちは「教えない」ことを心がけています。子どもたちが自ら発見する楽しさを損なわないよう、「なんでだろうね」と一緒に考える姿勢を大切にしています。
特徴的な取り組みとして「ミーティング」があります。将来的に最も大切なのは対話する力だと考えており、自分の意見を言葉にして伝えることや、他者の意見を評価せずに受け止める練習をしています。
小学1年生から6年生まで一緒に、簡単な話題について対話する時間を設けています。
地域の支援ネットワーク強化を目指して
ー 今後、より強化していきたい点や取り組んでいきたいことはありますか?
土橋:現在、地域の支援ネットワーク強化に力を入れています。不登校の子どもたちの受け皿が不足している現状があり、各フリースクール同士が連携することで、より多くの選択肢を提供できると考えています。
また、保護者支援も重要な課題です。不登校を認めることはできても、実際の受け皿が少ないという現状があります。そのため、近隣で利用できる支援の情報を共有するネットワークづくりを進めていきたいと考えています。
ー 最後に、この記事をご覧の保護者様やお子様へメッセージをお願いします。
土橋:お子様には「1日1回でも笑えると良いね」というメッセージを送りたいです。楽しいことが見つからない時は、ぜひ遊びに来てください。保護者の方には、どなたでも良いので、まずは誰かと繋がってほしいと思います。
自分の気持ちを否定されずに聞いてもらえる場所を見つけ、言葉にして外に出すことが大切です。興味をお持ちの方は、ぜひお話をしに来てください。