性暴力撲滅を目指して ~特定非営利活動法人しあわせなみだの取り組み~

障害のある方が性暴力被害に遭いやすい現状を、社会はまだ十分に認識できていません。特定非営利活動法人しあわせなみだは、この課題に向き合い、学校や警察での講演活動を通じて啓発に取り組んでいます。今回は代表の千谷さんに、活動への思いや、誰もが安心して暮らせる社会づくりについてお話を伺いました。

団体概要と主な活動内容

ー特定非営利活動法人しあわせなみだの活動内容について教えていただけますでしょうか。

千谷さん:性暴力を撲滅することを目指して、主に情報啓発活動を行っている団体です。特に、障害のある方が性暴力の被害に遭いやすいという現状があまり認知されていないため、その点に焦点を当てた講演活動を行っています。警察署でも講演を実施し、捜査における理解促進にも努めています。

設立の経緯と思いを込めた活動

ーしあわせなみだが設立された経緯について教えていただけますでしょうか。

千谷さん:前代表が2011年に団体を設立したのですが、きっかけは、職場の友人がセクハラ被害に遭い、被害者であるにもかかわらず責められ、苦しい状況に追い込まれる様子を間近で見たことでした。「なぜこのようなことがまかり通ってしまうのか」という強い思いから活動を始めたと聞いております。

私自身も、友人が被害に遭った経験があり、「こういったことをなくしたい」という思いから、性暴力撲滅に取り組む団体を探し、しあわせなみだの活動に参加することになりました。

性暴力撲滅への取り組みと課題

ー性暴力を減らすために、社会として何が必要だとお考えですか。

千谷さん:しあわせなみだの行動指針の中に「すぐそばにある性暴力に目を向けよう」「性暴力はかっこ悪いと言おう」という項目があります。特に男性だけが集まる場面では、性暴力が娯楽化され、人権侵害が笑い話にされることがあります。そういった空気を許容することが、結果として性暴力を社会的に容認することにつながっています。

性暴力をなくすために最も重要なのは、「性暴力は加害者が100%悪く、絶対にしてはいけないこと」という認識を社会全体に浸透させることです。

障害者と性暴力被害の現状

ー障害のある方が性暴力被害に遭いやすい理由について教えていただけますでしょうか。

千谷さん:性暴力被害には例えば、「露出の多い服装の人が被害に遭いやすい」「若く可愛い女性が狙われやすい」といった神話がありますが、実際には、被害者の8割は加害者と顔見知りの関係にあり、むしろおとなしそうな印象の人が被害に遭いやすい傾向があります。

障害のある方の場合、幼少期からの経験により自己肯定感が低いことが多く、そこに付け込まれやすい状況があります。特に施設で暮らされている方は閉鎖的な施設内での虐待等被害が多く、加えて精神障害や発達障害のある方は特性上、「断ること」が相手に伝わりづらいことを知人・友人に悪用されるケースもあります。

障害のある方への性暴力被害を防ぐために

ー障害のある方が性被害に遭われないようにするために、どのような対策が必要でしょうか。

千谷さん:障害のある方の性被害を防ぐためには、まず障害特性と生活環境を理解することが重要です。例えば、知的障害や発達障害のある方は、他者からの働きかけを断ることが苦手な場合が多く、日常的に支援者との関わりも多いため、境界線の設定が難しい状況にあります。

支援者や家族は、障害のある方の自己肯定感を育み、「嫌なことは断ってよい」という認識を持ってもらうことが大切です。また、施設や支援機関では、職員への研修や、複数人での支援体制の確立など、組織的な予防対策が必要です。

今後のビジョン

ー今後の活動についてのビジョンをお聞かせください。

千谷さん:特に力を入れたいのは、障害のある方や子どもたちが声を上げやすい仕組みづくりです。例えば、学校での性暴力事件は内々で解決されることが多く、表面化しないケースも少なくありません。被害者の心のケアが十分になされないまま、なかったことにされてしまうことを懸念しています。

①どんなことが性暴力か周知すること
嫌なことをされたときは嫌と伝えていいこと
周囲の人は性暴力を笑いに変えない、注意をすることは普通である

今後はこのような内容を講演活動やイベントを通して広めていきたいと考えています。

読者の皆様へ

ー最後に、この記事を読んでくださっている方々へのメッセージをお願いします。

千谷さん:この記事を通して、性暴力の問題、特に障害のある方が直面している課題について知っていただけたことを嬉しく思います。しあわせなみだでは、性暴力のない社会の実現に向けて、各種講演活動を行っています。学校や企業、団体などで講演をご希望の方は、ぜひご連絡ください。

もし皆様の周りで性暴力の被害に遭われている方がいらっしゃいましたら、全国の「ワンストップ支援センター」や、警察の性犯罪被害相談窓口(#8103)をご紹介ください。ご本人が望まない場合でも、匿名での相談が可能です。

性暴力は決して許されないものであり、その責任は常に加害者にあります。私たち一人ひとりが、この問題に関心を持ち、声を上げていくことが、性暴力のない社会づくりにつながります。これからも皆様のご理解とご支援をよろしくお願いいたします。