島根県松江市を拠点に活動するNPO法人SISアカデミーは、スポーツと教育を融合させた新しい育成システムを提供する団体です。子どもたちの運動能力を基礎から高め、多様なスポーツを楽しむ力を育む活動を展開。地域の学びと成長の場を整備し、指導者へのサポートや教育プログラムの充実にも力を入れています。
「競技特化教育」を見直し、低年齢から中学生までを対象に、スポーツを通じて基礎体力と楽しむ力を育成する一方、トレーニング施設「SISコンディショニングBASE」では、体組成の測定や視覚トレーニングなど科学的なアプローチを導入。さらに、オンラインセミナーやワークショップを活用し、全国の教育者やスポーツ愛好者とも繋がりながら、スポーツ界の課題に取り組んでいます。
未来の指導者育成にも注力し、全世代にスポーツを楽しむ文化を広めることを目指すSISアカデミー。その挑戦とビジョンに迫ります。
SISアカデミーの概要と活動
―まずは、SISアカデミーの概要について教えていただけますか?
SISアカデミー理事長 若狭さん(以下敬称略):SISアカデミーは島根県松江市を拠点に、スポーツを通じた育成システムの研究と開発を行っています。具体的には、ベースボールクラブやフットボールクラブ、それに小学生向けの遊び場である「放課後プレーパーク」を運営しています。
それだけでなく、松江市千鳥町36にある500平米の施設を活用して、今「SISコンディショニングBASE」という、地域の皆さんに学びと成長の場を提供できる施設を準備しています。施設にはトレーニングスペースや、eスポーツができる高性能なパソコン、学習スペース等、複合的な機能を整えていこうとしています。ここでは運動能力や健康状態を科学的に測ることができたり、子どもたちや地域のスポーツ愛好者が自分自身の成長をデータで実感できたりと、いろいろな形で成長できる環境となる予定です。
設立の背景
―クラブや教室ではなく、NPO法人として活動されている理由を教えていただけますか?
若狭さん:実は私、もともと教師をしていまして。その中で気づいたのが、指導者としての経験やスキルが足りないと、現場の子どもたちにきちんとした教育やサポートができないということでした。結局、自分が指導を始めた当初は何を頼りにすればいいのか分からず、すごく戸惑いましたね。
それで、指導者が学べる場があればいいのにと思ったんです。それがこのNPOを立ち上げるきっかけになりました。また、低年齢層のスポーツ指導において、競技に特化する傾向が強い現状を変えたいという思いもありました。子どもたちがもっと自由に、楽しくスポーツに触れられる環境を作りたいという願いが、この活動に繋がっています。
教師時代の経験から、良い指導を行うための「基準」や「指針」が明確でないことが、指導者にとって大きなハードルになっていると感じていました。そういった背景から、指導者が学び、成長できる場所を提供することが、結果的に子どもたちの成長にもつながると考えています。
活動を通じて解決したい課題
―SISアカデミーの活動を通じて、どのような課題を解決していきたいとお考えですか?
若狭さん:いくつかありますが、特に大事だと思っているのは、低年齢での競技特化教育の見直しです。例えば、小学生の頃から一つの競技だけに特化してしまうと、体のバランスを崩したり、スポーツそのものを楽しめなくなってしまったりするんですよね。
それから、指導者のハラスメントの問題も見過ごせません。スポーツ界ではまだまだ指導者の在り方が問われるケースが多いですし、これを改善していく必要があります。
さらに、意外かもしれませんが、スポーツをしている子どもたちの中にも、いわゆる「ロコモティブシンドローム」の兆候が見られることがあるんです。運動能力が十分に育たず、体力的にも弱い状態になってしまう子が増えている現状があります。これをどうにかして改善したいと考えています。
子どもたちが楽しみながら運動能力を伸ばし、競技特化に進むのは中学校後半くらいからでいいんじゃないかと思っています。その基礎をしっかり作ることが、私たちの活動の軸になっています。
今後の展望
―今後の活動で特に注力したい部分はどこですか?
若狭さん:やはり「SISコンディショニングBASE」の完成が一つの大きな目標ですね。「SISコンディショニングBASE」では、トレーニングだけでなく、運動能力や健康状態を科学的に測定することができます。例えば、体組成を図ったり、視覚のトレーニングを行ったりすることで、一人ひとりの成長をしっかりサポートできる仕組みを作りたいと思っています。
また、正会員の拡大にも力を入れていきます。特に学校の先生方には、コーチングやトレーニングに関する理論を学んでもらい、現場で活かしてもらいたいと考えています。オンラインセミナーやワークショップを通じて、全国の先生方にもアプローチしていく予定です。
さらに、スポーツだけでなく、デジタル人材の育成にも取り組んでいきたいと思っています。eスポーツを通じて、次世代の可能性を広げるプログラムを展開する予定です。
メッセージ
―最後に、SISアカデミーに興味を持たれている方々にメッセージをお願いします。
若狭さん:ぜひ、一度私たちの活動を見に来てください。施設を見学していただいたり、セミナーに参加していただくことで、私たちの目指しているものを感じてもらえると思います。
特に、正会員になられる方々には、コーチングやトレーニングに関する知識を深めてもらえる場を提供しています。全国どこからでも参加可能なオンラインセミナーもありますので、興味がある方はぜひご参加ください。
私たちは、スポーツを通じてすべての人が成長できる社会を作りたいと思っています。そのためには、皆さんの力が必要です。一緒に新しい未来を築いていきましょう!