共感の輪を紡いで〜絵本を通じて障害への理解を「NPO法人絵本屋だっこ」

障害のある子どもを持つ我が子のために始めた絵本づくり。

お子さんへの思いから始まった活動は、多くの人々の共感を集めながら、より大きな社会変革への一歩を踏み出しています。

絵本という温かいツールを通じて、誰もが障害を理解する社会づくりを目指す「絵本屋だっこ」の活動について、代表の庄司あいかさんにお話を伺いました。

絵本から始まる障害理解の輪

ー どういった方を対象にどのような活動をされていらっしゃるのかお伺いできますか?

庄司さん:絵本から障害への理解を広める活動をしています。

障害理解に繋がる絵本の配布やインクルーシブ絵本の制作、障害の有無に関係なく楽しめるイベントの企画など、絵本を中心とした様々な取り組みを行っています。

主な活動として、全国の読み聞かせボランティアと協力した絵本の普及活動、障害のある方の絵本制作・出版サポートなどがあります。

また、障害児を持つ先輩ママたちによるピアサポート相談、定期的な勉強会の開催などを展開しています。

息子との出会いが開いた新しい扉

ー このような活動をスタートされた経緯や背景についてお伺いできますでしょうか?

庄司さん:元々、絵本育児に憧れがあったのですが、重度の心身障害があり、自閉症の傾向がある息子は絵本にあまり興味を示さなかったんです。

そこで3年前、時間ができたタイミングで息子のために絵本を作ってみようと思い立ちました。

私自身、幼い頃から絵本が大好きで、「いつか絵本を書いてみたい」という夢は持っていましたが、実際の制作経験はありませんでした。

毎晩両親が読み聞かせをしてくれる家で育ち、おばあちゃんになったら書けるかなぐらいの気持ちはありましたが、絵も描いてきたわけではなく、本当に0から始めました。

息子のために作った最初の絵本は、言葉の理解が難しい子どもでも楽しめるよう工夫を凝らした、歌やリズム、だっこの揺れなど、息子の好きな要素を詰め込んだ触れ合い絵本です。

外とのコミュニケーションが取りにくかった息子が、初めて絵本で笑顔を見せてくれたんです。

共感の輪が広げる活動の可能性

庄司さん:個人での発信から始まった活動は、共感の輪とともに大きく広がっていきました。

クラウドファンディングを実施してサイトを立ち上げ、発信を続けていく中で、共感してくださる方が集まってきたこともあり、私一人では出来ないことにも挑戦してくため、NPOを立ち上げることを決意しました。

ー 活動を進める中で大切にされていることはありますか?

庄司さん:最初が個人での発信だったこともあり、今は様々な方の力を借りながら活動を広げています。

共感を基にした発信を心がけていて、皆さんが『良いな』と思ってくださったら自然と広めてくださる。

そういった共感の連鎖を大切にしています。

二つのアプローチで広げる理解の輪

庄司さん:活動の中心となる絵本には、大きく2つの種類があり、一つは障害について考える絵本です。

これは主に小学生以上の方を対象に、障害についての理解を深めることを目的としています。

結論を押し付けすぎず, 『あなたはどう思う?』という問いかけを大切にしています。

もう一つはインクルーシブ絵本で、障害の有無に関わらず一緒に楽しめる絵本。

これは触れ合いをベースにした絵本で、障害のある子とない子が一緒に楽しめる場を作るためのツールになるよう、意識しています。

地道な活動から見える未来

ー 今後の展望についてお聞かせください。

私自身、3人の子育てや介護など、様々な制約がある中で、私自身は大きなイベントを開催することは難しい状況です。

でも、オンラインを活用しながら家にいても出来る発信を続け、多くの方の力を借りることで活動の幅を広げていきたいと考えています。

まずは絵本ボランティアを通じて活動を知っていただくことを第一の目標としています。

そこから輪が広がり、新しい可能性が見えてくることを期待しています。

社会を変える第一歩として

ー この記事を読まれる方へのメッセージをお願いできますでしょうか?

差別や偏見をなくすために、まず大切なのは『知ること』だと考えています。

障害のある人やその家族がいること、そして彼らがどんな思いで暮らしているのか。

社会の多様性を認める流れは確かに進んでいますが、まだまだ変わっていない部分も多くあります。

そんな中で、絵本は小さな子どもでもすっと理解できるツールです。

幼稚園以下のお子様には楽しみながら自然に理解を深められるインクルーシブ絵本を、小学生以上の方には障害理解に特化した絵本を提供しています。

絵本を通じて、まずは知っていただければと思います。