水中カメラマンが目撃した“変わりゆく海”――NPO法人海の森・山の森事務局の奮闘

NPO法人海の森・山の森事務局

神奈川県を拠点に活動するNPO法人海の森・山の森事務局。代表は水中カメラマンとして40年以上海に潜り、海の変化を目の当たりにしてきました。そんな経験から、2012年にNPO法人を設立し、海岸清掃や出前授業を通じて環境保全活動を展開。プラスチックごみの削減や子どもたちへの環境教育、行政への政策提言など、多方面で取り組んでいます。

特に、小学校での出前授業では、海岸で拾ったマイクロプラスチックを使った万華鏡作りや万華鏡内部を子どもたちがタブレットで撮った写真展などを通じて子どもたちの意識を高め、環境問題を“自分ごと”として考えてもらう工夫を実施。また、神奈川県内の海岸430kmを5年かけて歩き、ごみの分布調査を行う「プラごみバスターズ」や、フナムシの腸内バクテリアを活用したプラスチックごみの分解研究など、科学的アプローチも進行中。環境問題に真剣に向き合うNPO法人海の森・山の森事務局の活動とその未来への展望を詳しくご紹介します。

NPO法人海の森・山の森事務局の活動概要

ーまず、どのような地域でどのような活動をされているのか、NPO法人海の森・山の森事務局の概要についてお伺いできますでしょうか。

NPO法人海の森・山の森事務局理事長 豊田さん(以下敬称略): はい、私たちは神奈川県横浜市に本拠地を構えていて、主に神奈川県内の海岸で清掃活動をしたり、小学校に出向いて環境教育を行ったりしています。実は、今日も小学校での授業の合間なんですよ(笑)。

メインの活動は、大きく分けて二つあります。一つは海岸のプラスチックごみの清掃、もう一つは環境教育として小学校への出前授業ですね。

海岸清掃活動とプラスチックごみ問題

ー具体的には、どのようなごみを回収されているんでしょうか?

豊田さん: 私たちが一番多く回収しているのは、プラスチックごみですね。特に海岸に流れ着いたものが多いです。実は私、もともと水中カメラマンなんですが、20年くらい前から海の中にプラスチックごみが増えてきたのが目立つようになって。「これはまずいぞ」と思って環境活動を始めたんです。

2000年代の初め、オーストラリアに取材で行ったときに、「日本もプラスチックごみだらけになるぞ」と現地の人に言われて、帰国後に改めて海を見たら……やっぱり増えてるなと。それで、2012年にNPOを立ち上げて、本格的に活動を始めました。

私たちは、ただ清掃するだけでなく、ごみの種類や発生源の調査も行っています。例えば、神奈川県の海岸線430kmを5年かけて歩き、ごみの分布を詳細に記録する「プラごみバスターズ」というプロジェクトを進めています。この活動を通じて、県内のごみ処理基準の統一化を行政に提案するなど、政策面でも影響を与えることを目指しています。

出前授業と環境教育

ー小学校での出前授業では、どんなことを教えているんでしょうか?

豊田さん: 海岸から拾ってくるマイクロプラスチックを材料に使って子どもたちに万華鏡を作ってもらうんですよ。それで、タブレットのカメラ機能を活用して万華鏡の中の写真を撮ってもらうんですが、これがまた面白くてね。子どもたちの個性や性格が思い切りその写真に出るんですよ。

この万華鏡プロジェクトの特徴は、子どもたちが創り出す作品を社会に発信できることです。これまで横浜市役所や川崎市役所の展望フロアでの写真展を開催してきました。「子どもたちが学ぶだけでなく、自分たちの考えたことや取ったアクションを社会に向けて発信する」というのが、私たちの教育活動の大きな特徴なんです。

また、環境教育の一環として、海岸でのフィールドワークも実施。実際に子どもたちと海に出かけ、プラスチックごみがどのように流れ着くのかを観察し、問題意識を持たせる取り組みをしています。

未来への展望と新たな取り組み

ー今後の活動について、強化していきたい点はありますか?

豊田さん: まずは、子どもたちの環境教育の機会をもっと増やしたいですね。出前授業の回数を増やして、もっと多くの子どもたちに実際に海に行ってもらい、環境問題を肌で感じてもらいたいです。

それから、新しい取り組みとして「フナムシ」を活用したプラスチックごみの分解研究を進めています。実は、フナムシの腸内にはプラスチックを分解するバクテリアがいるらしいんですよ。神奈川工科大学と一緒に、このバクテリアを使って環境問題を解決できないか、研究しています。

また、行政との連携も進めており、神奈川県内のごみの分別基準の統一化や、港湾エリアのごみ対策を提言。例えば、トラックドライバーの労働環境改善がごみ問題の解決につながるという視点から、港湾エリアのトイレ設備の拡充や待機スペースの設計見直しを行政に働きかけています。

出前授業の依頼について

ー出前授業を受けたい学校は、どうすればいいでしょうか?

豊田さん: 神奈川県内なら、横浜市の「YES制度」や神奈川県の「かながわ環境教室」を利用すると、一部補助が出る仕組みがあります。県外など遠方の場合は、交通費の問題などもあるのでご相談いただければと思います。

できるだけ多くの子どもたちに環境問題を伝えたいと思っているので、お気軽にご相談ください。