一般社団法人朗真堂は、就労支援事業所としてIT技術を活用したクリエイティブな業務内容と、利用者一人ひとりに寄り添った支援で、障害者の方々の自立と成長をサポートしています。
独自のアプローチで障害者の就労支援に取り組む同法人の方針や今後のビジョンについて、代表の鈴木さんにお話を伺いました。
3つの事業所で多角的なサポートを展開
ー事業所の概要について教えてください。
鈴木:私たちは現在、3つの福祉サービス事業所を運営しています。1つ目の「朗真堂」は就労支援事業所として、就労継続支援A型と就労移行支援の多機能型事業所です。
2つ目の「朗真堂カラーズ」も就労支援事業所で、就労継続支援B型のサービスを提供しています。
3つ目の「相談支援センター朗真堂」は計画相談を提供する事業所です。利用者様が適切な福祉サービスを選択できるようサポートし、各福祉サービス事業所との連携を図っています。
ITスキルを活かした独自の就労支援モデル
ー事業を立ち上げられた経緯について教えてください。
鈴木:2013年の立ち上げ以前、私は人材育成の仕事に携わっており、企業の障害者雇用に関する課題に直面していました。業務において「手順と品質」は、障害者にとっても重要です。
手順が明確であれば多くの障害を持つ方でも取り組むことができ、加えて高い品質で提供できれば、お客様からリピートしていただけます。さらに、将来的な最低賃金の上昇を見据えた時、付加価値の高い事業の選択を強く意識しました。
そこで、自身のITエンジニアとしての経験を活かし、付加価値の高い古本のネット販売事業にチャレンジすることにしました。
この取り組みは当時の福祉業界では珍しく、多くの就労支援施設では、お弁当作りや清掃作業などが主流だったため、周囲から怪しまれたこともあります。
スタートしてみると、元デザイナーやプログラマーなど業界経験のある利用者が集まり、そのスキルを活かしてホームページ制作やデザイン業務などクリエイティブ事業に広げていきました。
支援を超えた、対等なパートナーシップ
ー利用者の方々との関わり方で特に意識されていることはありますか。
鈴木:当施設の利用者の9割以上が精神障害を持つ方々です。特にA型事業所では顧客がいることもあり、商品やサービスについては一般の企業と同様のスキルレベルや品質を目指すように指導しています。
そのため、「支援員と利用者」という関係性ではなく、会社組織における同僚として接することを大切にしています。
納期を守る、報告・連絡・相談を徹底する、お客様のニーズに応えるなど、社会人として当たり前のことを当たり前にできる環境づくりを心がけています。
実際、A型からは1、2年に1回のペースで一般就労される方がおり、「朗真堂での働き方と同じように働ける」という声をいただいています。
企業と求職者、双方のニーズに応える支援を目指して
ー今後さらに注力していきたい取り組みについて教えてください。
鈴木:就労移行支援サービスを始めたことで企業との接点が増え、企業側と求職者側のニーズが実は共通していることが見えてきました。具体的には、①勤怠の安定性、②業務遂行能力、③職場での人間関係という3つの不安を双方が抱えています。
これらの課題をひとつでも多く就職前に解決していくことで、高い就職成功率を実現できています。今後は、障害者雇用を検討している企業に対して、これらの解決策を事前に提案し、スムーズな受け入れをサポートしていきたいと考えています。
共生社会の実現に向けて
ー最後に、この記事を読まれる方へメッセージをお願いします。
鈴木:厚生労働省の発表によると、障害者の人口は1100万人を超え、総人口の9%を占めています。この増加に伴い、社会全体での支援体制の強化が必要とされています。
障害者と健常者が別々に生活し働くのではなく、共に支え合う共生社会が求められています。
障害があるから働きづらい、生きづらいという課題は必ず改善できます。現在、企業にも合理的配慮は法律で定められていますが、障害者一人ひとりに合った対応がまだ十分に整っていません。
私たちのような就労支援を担う事業所は、本人の特性を理解し、企業との橋渡しをすることで、合理的配慮の運用をサポートしています。働きたい、そして働けるようになりたいと思うなら、ぜひ自分のために就労支援を活用してほしいと思います。