五感で感じる世界の文化 ― NPO法人ナタデココが創る小学生のための異文化交流体験

「日本全国の子どもたちに異文化体験を届けたい」。そんな想いから2021年に設立されたNPO法人「ナタデココ」は、小学生と在留外国人の交流の場を創出しています。英語力も海外経験も不要で、ゲームやクイズを通じて40カ国以上の文化に触れる機会を提供。その独自のプログラムと活動の広がりについてお話を伺いました。

異文化体験を子どもたちに届けるNPO法人「ナタデココ」の活動

小藤田さん:NPO法人「ナタデココ」は、日本全国の子どもたちに異文化体験を届けるための文化交流教室の企画運営を行っている団体です。

小学生と在住外国人の交流の場を作り、英語力や海外経験は一切不要で、異文化コミュニケーション学といった学術的な知見に基づいたプログラムを提供しています。

ー具体的にはどんな国の文化を体験できるのでしょうか?

小藤田さん:私たちは、欧米や中南米、アフリカ、アジア、中東など、世界40か国以上の国籍の方々とのコネクションを持っています。こうしたコネクションを生かして、子どもたちに多国籍な文化交流の機会を提供しています。

心理的ハードルを下げる工夫が凝らされたプログラム構成

ー実際のイベントではどのようなことをするのですか?

小藤田さん:文化交流教室は1回につき60分間の教室が基本で、3つのパートに分かれているのですが、子どもたちにとって異文化に触れることや大人の外国人と接することは心理的ハードルが高いことなので、それを下げる工夫をたくさんしています。

例えば、第1パートでは異文化を意識せずに触れ合えるようにするため、風船や輪投げなどを通じて言葉を使わずに自然とコミュニケーションが始まる環境を作っています。これにより心理的な恐怖心よりも好奇心が勝るようなプログラム構成になっています。

第2パートは、クイズなどを通じて異文化に触れる時間です。子どもたちにとっては情報を受けとめる形になりますが、「さっき一緒に遊んだ外国の人はこんな国から来たんだ」と興味関心の扉開いていく意図があります。

最後の第3パートで初めて会話も交えた自由なコミュニケーションの時間を設けており、自然と恐怖心ではなく好奇心が勝るような形でプログラムが終わるようにしています。

ー会話よりも体を使ったゲームなどが中心でしょうか?

小藤田さん:おっしゃる通りで、五感をとても大切にしたプログラムになっています。子どもたちが、英語ができなければコミュニケーションが取れないと思ってしまうことがないよう、なるべく非言語でのコミュニケーションを用いて本能に訴えかけることを重視しています。いつの間にか楽しい、ワクワクするという感覚が最後に残るようなプログラムを目指しています。

「ナタデココ」設立の背景と思い

ー設立の経緯や背景を教えてください。

小藤田さん:「ナタデココ」は2021年に任意団体として設立されましたが、私が参画したのはナタデココがNPO法人化した2023年6月です。代表の加藤が数名のメンバーと団体を立ち上げた当初は、教室を開くまでの人集めに苦労し、オンラインで外国の方と小学生が数名で話すという企画から始まったと聞いています。

ー代表の方はどのような思いでこの活動を始められたのでしょうか?

小藤田さん:代表の加藤は三重県の島の出身で、小さい頃に外国人と触れ合う経験はほとんどありませんでした。しかし、ブラジルのお菓子を食べた際に「海外って面白そう」と感じたことがこの活動に繋がるきっかけだったようです。

海外の文化に対してポジティブな気持ちを持ち、その後70か国以上を訪れた経験がある加藤ですが、地元に帰ると未だに「外国人が怖い」という声を親戚からも聞くらしく、これからの多文化共生社会において、外国人と日本人という垣根なく、困っている人がいれば言葉が話せなくても手を差し伸べられる社会を作りたいという思いで活動を始めたとのことです。

英語ができないと海外に行けない、コミュニケーションが取れないから外国人が怖いなど、時に、語学ができないことが海外への好奇心に蓋をしてしまうことがあります。そのため私たちは、なるべく早期に「好奇心が恐怖心に勝る」経験、「外国人との触れ合いが楽しい」という原体験を持ってもらうことが大切だという思いから、小学生向けに活動を展開しています。

三方良し – 子ども、外国人、日本人ボランティアにとってのメリット

ー「ナタデココ」の特徴や強みはどのようなところにありますか?

小藤田さん:当団体の強みは、子どもたちだけでなく、日本に住む外国人、そしてこうした活動に関心を持つ日本人にも気軽にチャレンジできる環境を提供できることかと思います。一言で言うと「三方良し」だと思います。

日本には現在約350万人の在留外国人がいますが、出入国在留管理庁のアンケートによると、社会貢献活動をしたいけれどどうすればいいか分からない、地域の人たちが自分を受け入れてくれるか不安といった声が多く寄せられています。「ナタデココ」の活動は特別な参加条件がないため、参加したいと思えば手を挙げてすぐに参加できる仕組みができていることが強みです。

イベントの企画段階から関わることももちろん可能ですし、当日参加も可能なプログラム内容となるよう工夫しています。参加のハードルは低いのですが、高い満足度を得られるかと思います。

ー外国人の方々にとっても居場所づくりになっているのですね。

小藤田さん:そうですね。外国人同士のコミュニティ作りにも貢献できていますし、もちろん日本人スタッフも多く携わっていますので、そのつながりでさらにコミュニティが広がることもあります。

今後の展望 – 全国展開と新たな取り組み

ー今後の展望やビジョンについて教えてください。

小藤田さん:「全国の子どもたちに異文化体験・原体験を届けたい」というミッションがありますが、私たちの多くは東京を拠点に活動しているため、全国に足を運ぶリソースに限りがあります。そこで、「文化交流キット」という無料の授業教材キットを作りました。

異文化に触れる楽しさを効果的に伝える方法やクイズを盛り上げるコツなどを掲載したマニュアルを同梱しているので30分程度の準備時間でどなたでも簡単に1コマ分の文化交流教室を実施できるようになっています。キットを通じて間接的に全国展開できればと考えています。すでに多くの教育機関者からお申込みをいただいています。

また、新しい取り組みとしては、より五感を意識したプログラム開発を進めています。通常授業というと「話す・聞く・見る」といった要素が中心になるかと思いますが、私たちは「香り」から異文化を体験してもらうプログラムも最近始めました。より非言語で本能に訴えかけるアプローチができると考えており、他の教育プログラムと差別化が図れると思います。

参加・支援の方法

ー「ナタデココ」の活動を支援したい場合、どのような方法がありますか?

小藤田さん:ナタデココでは、語学力や海外経験不問にて文化交流教室の当日スタッフや、企画運営スタッフをインスタグラムホームページ等で随時募集しています。イベントへの関与という形でのご支援もうれしいですし、最近はインスタグラムの発信にも力を入れているので、フォローや拡散といった形などでのご支援もうれしいです。

また、現在ナタデココの活動は、多数の企業・公益団体、個人の方のご支援によって支えられていますので、もしそういったご支援をより多くの方にご検討いただけるようでしたら大変ありがたいです。

記事を読んでいる方に向けたメッセージ

ー最後に、記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。

小藤田さん:私たちは、ナタデココに関わってくださった方全員が「関わってよかった!」と思える団体でありたいと考えています。異文化に触れるきっかけとしてはもちろんのこと、コミュニティ作りや、スキルアップの場としても活用いただける団体だと思います。

今後も全国の子どもたちに異文化に触れる楽しさや原体験を届けるべく、様々な施策を展開していきます。皆さんも、子どもたちのドキドキをポジティブな感情に変えていく、そんな機会を一緒に作っていきませんか?

HP:NPOナタデココ|子供たちの文化交流教室 | 心に世界地図を描く。

インスタ:ナタデココ | 子供たちの文化交流教室(@natadecoco_org) • Instagram写真と動画