発達に障害のあるお子さんへの理解と支援において新たな挑戦を続けるNPO法人Re-each。
特に自閉スペクトラム症の当事者の声を集め、保護者や支援者に届ける活動と、子どもたちへの発達特性の理解促進という独自のアプローチで活動しています。
NPO法人Re-eachの活動の背景や今後の展望について、代表の亀尾勇志さんにお話を伺いました。
3つの目的で行う発達障害支援活動

― どういった方を対象にどのような支援を行っていますか?
亀尾さん:NPO法人Re-eachには、大きく3つの目的があり、それぞれ対象が異なります。
1つ目は発達障害の根本となる発達、そして特性そういったものを子供たちに理解してもらいたいと思っています。
大人ではなく子供たちを対象にして、理解促進活動を行いたいと考えています。
子どもたちというのは、小学校から大学生まで幅広い学生への理解を目指しています。
そして2つ目が発達障害、特に自閉スペクトラム症という発達障害の当事者が持つリアルな声を、保護者や支援者の方々に届ける活動です。
自閉スペクトラム症は、なかなか自分の気持ちだったり、想いを他者に伝えることが出来なかったり、自分でも意図しないような、客観的に見ていてもなかなか理解し難い行動をしてしまうことがあります。
そういったことを真に理解するためには、やはりその当事者の方の感覚を聞かないと分からない、分かり合えないんじゃないかと考え、これまで現時点ですでに100名以上の自閉スペクトラム症の当事者の方にインタビューをさせて頂きました。
そこで得たリアルな声を多くの保護者や支援者の方々に、動画や講習といった形で届ける活動をしております。
3つは地域と発達障害の当事者の方々の交流の機会を創出する活動です。
これは、共に生きる上で互いに理解し合わないといけない、そして、互いに支え合っていってほしいという想いからです。
イベントを作ったり、職業体験などの体験活動を行ったりして、交流ができたらと思っています。
「理解したいけれど、理解してあげられない」という想いから始まった活動
― この支援を始められた背景であったり、きっかけについてお伺いできますか?
亀尾さん:私自身大学で教育学部に通い、数学の先生を目指していました。
数学の先生を目指しながら受けた最初の授業で、特別支援に興味を持ち、そこから特別支援教育を学ぶようになったんです。
発達障害について少しずつ学びながら活動をしていましたが、やはり多くの方々の役に立つような活動をしたいと思い、2〜3年前に一度SNS等での発信活動を始めました。
そこで、どういう発信が良いのか考えてるうちに、個人的に理解してあげたいけど、理解が難しい障害の1つだった自閉スペクトラム症に絞っていこうと考えました。
なかなか当事者の方々も苦しい思い、辛い思いを抱えている中で、あまり話したくないかもしれない、喋りたくないかもしれないという怖さだったり、迷惑なんじゃないかという感覚もありながら、少しずつ挑戦してきました。
その中で、「発信に助けられている」という声を聞き、もっと広げていきたい、応援して頂けるような活動が出来る形にしたいということで、仲間を集めてNPO法人として活動を始めるようになりました。
これまでにない、子どもたちへの特性理解と当事者の声を届ける活動
― NPO法人Re-eachの特徴であったり、アピールポイントはどういったところだとお考えですか?
亀尾さん:当団体の目的の1つ目と2つ目については、これまでに無いのではないかと思ってます。
発達障害への理解、発達特性の本質というものの理解を子供たちにというのは、今まで僕は聞いたことがないです。
それに加えて当事者の方々の声を反映していくというところからは、親身に寄り添いたい、形式的な情報も大事だとは思いますが、やはりリアルを伝えたいというところがアピールできるポイントなのかなと思っています。
「白か黒か」ではなく、「連続性」を大切にした理解促進
― 発達障害への理解について、子どもたちにどのような言葉、どのような形で伝えてらっしゃるのですか?
亀尾さん:人というのは千差万別であって、発達障害の本質というのは、1人1人の特性の違いで、そして連続性があります。
どうしても障害という言葉が付いてしまうと、白か黒かに分かれているかのような感覚を覚えますが、そこにはやっぱり連続性があって、自分と全く違う存在ではないということがまず1つ。
言葉で伝えるのは難しいですが、特に大事にしたいのは、連続性であることと、白か黒かで分けられるものではないということです。
それに加えて、発達障害の特性を強く持つお子さんはどうしてもいじめられやすかったり、仲間外れにされやすい傾向があります。
これは研究データとして出ていますが、やはりその問題を解決するとなった時に、大人ではなく、子どもたち伝えるべきだと考えています。
結果にこだわり、本気で問題解決を図る
― 活動される中で、大切していることや意識していることいついてお聞かせください。
亀尾さん:NPO法人Re-eachの仲間とも話していることですが、僕自身設立する時に強く思っていたのが、結果にはこだわりたいと思っています。
NPO法人として活動をする中で、本当に効果が生まれているのか、この活動をしていく上で目標としているいじめの解消であるとか、当事者の方の声の反映ですとか、そういったものでどう変わっていくのか。
それを行ったことでどう好転したのかというその結果にはこだわっていきたいと考えています。
放課後等デイサービスの支援者向け講習

― 放課後等デイサービスで講習をされたそうですが、どういったお話をされたのですか?
亀尾さん:放課後等デイサービスの職員の方々を対象に自閉スペクトラム症の当事者の方のリアルな声を届ける講習です。
支援者の方々が疑問に思うこと、上手く対応出来ないなという課題を当事者の方の声を聞くことで、支援の1つの手立てにしてほしいと考えました。
必ずしもその全てが正解とは言えませんが、選択肢を1つ持っておくことによってより充実した支援につなげていただけたらと思っています。
一人ひとりの違いを尊重し合う社会へ
― この記事を読まれる方にメッセージをお願いします。
亀尾さん:発達に障害のあるお子さんを育てている保護者の方々、そして支援をしている支援者や教員の方々、ぜひ当事者の方の声に耳を傾けてください。
当事者の声を知ることで、ご自身も楽になると思います。
そして、子どもたちも理解してもらえているんだという感覚を得られると思います。
当団体では動画配信もしてますので、気軽にNPO法人Re-eachにアクセスして頂きたいなと思っています。
発達障害という言葉の意味、そういったものが正確に社会に伝わってないような気がしてなりません。
発達障害とは何なのかということも踏まえて、NPO法人Re-eachから学んで頂きたい、一度考えて頂きたいなという風に思います。
ぜひ、結果にこだわって活動していきますので、応援していただけますと幸いです。