発達に気がかりのあるお子さんの支援を行う、NPO法人キッズコミュ。
言語聴覚士として40年以上の経験を持つ代表の古賀さんに、活動内容やお子さんへの支援方法、今後の展望などについて伺いました。
年齢や発達段階に合わせた支援活動

ー団体の概要についてお伺いさせてください。
古賀:自立発達支援事業と放課後等デイサービス事業を行っています。発達に気がかりのあるお子さんの保護者様からのご要望で、2歳から小学校6年生までを対象に支援を行っております。
各市町村が受給者証を交付し、支援を進められたお子さんが対象となります。放課後等デイサービスも同様に、各市町村が受給者証を発行しているお子さんに限って行っております。
ー活動を始めたきっかけや経緯について教えてください。
古賀:活動は今年で9年目になります。それ以前は、藤沢市の子ども家庭課の発達相談室で、言語聴覚士として発達が心配なお子さんに、個別指導やグループ指導を行っていました。
定年退職後、今まで培ってきた多くの指導方法を子どもたちや保護者様に役立てたいという思いから、自立発達支援事業を始めました。言語聴覚士としては約40年の経験があります。
一体感を土台にした段階的な発達支援
ー実際に行っている活動内容について、詳しくお伺いさせてください。
古賀:中心になっているのは、5名までの少人数グループ指導です。子ども同士が切磋琢磨する中で育てた方が、運動面や言語、社会性の発達がより促進されるという考えから、グループ指導を中心に行っています。
もちろん、まだグループに入るのが難しいお子さんの指導は個別で行っております。
お子さんの中には、言葉に遅れがある子や、友達となかなか遊べない、一人遊びが多い、多動で上手く合わせられないなど、様々な特性があります。
しかし、指導の仕方によっては友達と一緒に遊ぶことがどんどん好きになり、発達が促進されます。そのため、どのように上手く乗せるかのアイデアや課題設定に特徴があります。
一番小さい子どもたちの場合、ホワイトボードに磁石のついた形を枠にはめる型はめの活動など、目の前にあるものを自然と自分からやりたくなるような活動を設定します。
また、ジャンボマットのお山を登ってジャンプするなど、全身を使ったエネルギッシュな活動はスリルのある情動を引き起こし、強い達成感を味わうことができます。
それを他児と同時に行うことで情動的な響き合いが生じ、強い一体感を感じられるようになります。
この一体感をベースに、徐々に目標に向かった活動や、旗を取りに行く、紐を手繰って進むなど目的のある活動を一緒に行います。
その中で自然と競争が生まれ、やり取りが増えていき、最終的にはフルーツバスケットや尻尾取り、ハンカチ落としなどルールのある遊びへと発展していくのです。
特徴的な指導方法と独自の教材開発
ー貴団体だからこそ提供できる学びや、独自で取り組んでいることがあれば教えてください。
古賀:遊びに乗せやすい教材や活動内容は、すべて私が40年かけて作り上げてきた経験に基づくもので、効果的なものを独自に開発してきました。
特徴的なのは、1時間の指導時間内に6~7個の種類の活動を次々と展開していくことです。
例えば小さい子では、最初にお歌があり、ホワイトボードの型はめ、トーキングカードで名前を聞く、トンネルくぐり、階段を上ってボールを筒に転がす、ベニヤ板の上を歩く、最後にジャンボマットのお山を登って滑り降りるなど、次々と活動を変えていきます。
発達がゆっくりなお子さんは集中力が短いため、全力で集中できるものを短い時間で次々と変えていくことが必要です。1時間の間に、頭も体も使い切るような指導を行っています。
一つひとつの「できた」を足していき、全体で大きな達成感を味わっていくという考え方が大きな特徴です。
子どもの意思を尊重したアプローチ
ー実際にお子さんと接する際に、特に意識していることや方針があれば教えてください。
古賀:それぞれのお子さんに違った特徴があるので、一人ひとりの意思をとても大切にしています。やりたくないことは無理には誘わず、じっくり見ていてもらって、自分から参加したいと思った時に一緒にやるようにしています。
子どもたち同士で対立が起きることもありますが、「今は〇〇ちゃんの考えを取り入れよう、その後に〇〇ちゃんの意見も取り入れよう」という形で、皆のやりたい気持ちを大切にし、それを共有するようにしています。
今後の展望と読者へのメッセージ
ー今後、より強化していきたい部分や、取り組んでいきたいことがあれば教えてください。
古賀:他の事業所や教育機関にない、子どもたちが乗りやすい教材や活動内容を開発しています。これらを出版や提供するなどして、外部にも広げていきたいと考えています。
私たちが関わるのは60人から100人程度の子どもたちですが、その方法や考え方を広げることで、より多くの子どもたちに貢献できればと思っています。
ー最後に、読者の方に向けたメッセージをお願いします。
古賀:子どもたちは友達同士で遊ぶ時に生きがいや面白さを感じます。勉強も含め、他の子と切磋琢磨して知的な能力も開発するような活動内容が大事だと思っています。
勉強だけを教えるような指導が子どもたちを幸せにできるとは思えません。一体感を感じたり、駆け引きをしながら遊ぶ時の喜びは掛け替えのないものです。子どもたちにその喜びを感じ、味わってもらいたいと思います。