福岡市中央区で60年以上の歴史を持つ「正剛館福岡本部道場」は、幼稚園児から80代の方まで幅広い年齢層の門下生が学ぶ伝統空手道場です。
競技性重視の現代空手とは一線を画し、礼儀や精神力を重視した指導を続ける同道場の取り組みについて、三木さんに詳しくお話を伺いました。
60年の歴史と幅広い年齢層が集う老舗空手道場
ー道場の概要について教えてください。
三木：福岡市中央区大手門で、60数年にわたって運営している空手道場です。幼稚園児から80代の方まで、老若男女問わず多くの方にお越しいただいています。
初心者の方から、全国レベルの選手まで在籍しており、最近では高校生の春の選抜大会でベスト16まで残った生徒もいます。福岡県内でも老舗の道場の一つだと自負しています。
ー道場設立の経緯について教えてください。
三木：当道場の館長である私の父が大学4年間で空手を学び、地元の福岡に戻ってきた際に、青少年の健全育成を目的として空手道場を始めました。
現在でも館長は月曜日の稽古を担当し、現役で指導を続けています。
20の支部を展開する独自の指導体制
ー他の空手道場にはない特徴や、一番のアピールポイントを教えてください。
三木：本部道場という名前が示すように、福岡界隈で約20の支部を展開していることが大きな特徴です。
各地域の小学校や公民館で稽古を行っており、距離的に本部道場への通学が難しい方でも、お近くの支部で同じ内容の指導を受けることができます。
ただし、より高い技術や志を求める方は、遠方からわざわざ本部道場に通われる場合もあります。各支部の先生方にはそれぞれ個性があり、その地域ならではのカラーが生まれることも、かえって良い効果を生んでいると思います。
毎年12月には支部の子どもたちも集まって寒稽古を行います。真冬の海に入る行事があり、毎年テレビニュースでも取り上げられています。子どもたちがなかなか経験できない貴重な体験だと考えています。
伝統武道の精神を重視した指導方針
ー生徒に指導する際に、特に意識していることや方針などを教えてください。
三木：伝統的な空手を教える以上、競技性ばかりに偏ってしまうのではなく、武道的な側面をしっかりと伝えることを重視しています。
東京オリンピックで空手道が競技種目になったことで競技性が非常に強くなり、伝統武道から離れ始めている傾向が見られます。
しかし、競技と武道は全く違うものであることをしっかりと押さえながら指導することが大切だと考えています。技術に走りがちですが、技術だけではないということを常に意識しています。
空手は礼儀から入り、形に入っていきますが、形だけでは意味がありません。礼儀から入ることの良さを活かしつつ、その形が形骸化しないよう、中身の意味をしっかりと理解させる「答え合わせ」をすることが重要だと思います。
両方をバランス良く教えていくことを心がけています。
多様なニーズに応える柔軟なコース設定
ー道場で提供しているコースやプランについて教えてください。
三木：本部道場では、月曜日と金曜日の18時から20時に通常の稽古を行っています。
通常の稽古とは別に、土曜日18時から20時には武器術のコースを設けています。ヌンチャクなどの武器を使った武道を指導しており、これは当道場の特色の一つだと思います。
月謝は年齢によって異なりますが、月額5000円から6000円程度です。週に何回お越しいただいても一律料金で、すべての稽古に参加していただいて構いません。
さらに、試合で勝ち進みたい方や技術を向上させたい方には、私が1時間2000円でプライベートレッスンも行っています。毎月空いている時間帯をご案内し、予約制で対応しています。
現代社会における武道教育の意義と今後の展望
ー今後より強化していきたい部分や、取り組んでいきたいことがあれば教えてください。
三木：現代の空手教室が直面している課題として、技術面ばかりに走ってしまい、精神面が不足している傾向があります。
節操を持って物事を行うことができなくなっている現代社会において、血の通った指導を心がけたいと思っています。
試合を見ていると、保護者の方が早い段階からお子さんを試合に出したがる傾向があります。それ自体は良いことも多いのですが、道着の着用や試合時の招集など、基本的なことを親御さんが先回りして手伝ってしまう場面をよく目にします。
自分で対応していくことができる自立心を、小さいうちから育てることが第一だと考えています。教育には「教える」と「育む」の二つの側面がありますが、これからは特に「育む」ことが重要になってくると思います。
日本の伝統武道を通じた人生への良い影響を
ー最後に、この記事をご覧の方へ向けたメッセージをお願いします。
三木：ぜひ日本の伝統武道に携わっていただき、その良さを多くの方に経験・体験していただきたいと思います。きっとその方の人生の生き方に様々な良い影響が出てくるでしょう。
少子高齢化の現代社会では、幅広い年齢層の方々が同じことを行うことで、核家族化ではなかなか味わえない人間関係や縦の繋がりを学ぶことができます。
日本人が忘れかけているような大切なことも、きっと学んでいただけるのではないかと思います。ぜひ一度お越しいただければと思います。
