「子どもたちは本当に自由であるべきだ」。その理念のもと、17年前に開校した湘南サドベリースクール。4歳から18歳までの子どもたちが、カリキュラムや評価にとらわれることなく、自分の意思で学びを選択しています。学校運営も子どもたちと共に決めていくという、湘南サドベリースクールの取り組みについて小谷さんと沼澤さんにインタビューしました!
サドベリー教育の理念と特徴
ー湘南サドベリースクールはどのような学校なのでしょうか?
小谷さん:湘南サドベリースクールは、アメリカのボストンで約50年前に開校されたサドベリーバレースクールをモデルとしたサドベリー教育を実践している学校です。不登校状態の子どもが通う結果として不登校支援につながっている面もありますが、私たちは不登校支援を目的としたフリースクールではありません。あくまでもサドベリー教育を実践する場として、サドベリー教育に共感して通いたいと考える子どもたちを受け入れています。
ーサドベリー教育とは具体的にどのようなものでしょうか?
小谷さん:最大の特徴は、子どもたちが自由に自分の学びたいこと、やりたいことを追求できる点です。決まったカリキュラムや学年、クラス分けはなく、4歳から18歳までの異年齢の子どもたちが、それぞれ好きなことを追求していきます。
ただし、自由といっても無秩序ではありません。例えば、ある子が読書をしたい時に、他の子が同じ部屋で鬼ごっこをしたいという場合、一般的な学校では先生や校則によって時間割が決められますが、湘南サドベリースクールでは自治の場として、子どもたち自身が話し合いを通じてルールを作り、解決していきます。
設立の経緯
ー湘南サドベリースクールはいつ、どのような経緯で設立されたのでしょうか?
小谷さん:2008年4月に、サドベリー教育に共感した2、3家族が集まって任意団体としてスタート。その後、様々な生徒や家族、スタッフが入れ替わり、私たち現在のスタッフを含め、湘南サドベリースクールに共感した人々が加わって17年間継続してきました。
子どもたちとの関わり方
ー子どもたちとの関わり方で特に意識されていることはありますか?
小谷さん:大人と子どもが対等である場所という点を最も重視しています。大人が偉いわけでも、逆に子どもの言うことを全て聞かなければならないわけでもありません。他の場所では、困っている子どもを見かけると手助けしたくなったり、何かを教えたくなったりする場面も多いのですが、ここでは本当に対等な関係性を保ち、頼まれない限りは先回りして手を差し伸べることはしないよう心がけています。
沼澤さん:運営面においても、子どもたちと大人が対等な立場で話し合いながら決めていきます。例えば、学校の予算や人事など、一般的には大人だけで決定する事項についても、子どもたちと一緒に検討します。2025年度の体制を決める話し合いでは、開校時間や長期休暇の日程、スタッフの採用や給与など、学校の予算を見ながら子どもたちと相談して決めていきます。
評価のない環境づくり
ー学校生活の中で特徴的な点を教えてください。
沼澤さん:私自身、この湘南サドベリースクールの卒業生なのですが、評価がないという環境が自分にとって大きな意味を持ちました。以前通っていた公立小学校では、人からの評価をとても気にしていたのですが、湘南サドベリースクールには「正解」がありません。時に困惑することもありますが、その分、自分はどういう人間になりたいのかを見つめ直す時間がたくさんあります。
次第にリラックスして、本当に自分のやりたいことを思う存分できるようになっていきます。最初は時間が決まっていない環境に戸惑う子どももいますが、周りの様子を見ながら、徐々に自分の好きなことを見つけ、それぞれの道を歩んでいけるのが面白いところです。
今後の展望や取り組みについて
ー今後、どのような取り組みを考えていらっしゃいますか?
小谷さん:現在、約20人の入学者がいますが、今後は2、30人程度で安定的に運営できればと考えています。
また公教育以外の多様な学びの場の一つとして、支援する・されるという関係性ではなく、のびのびと自分のやりたい学びを追求できる場所として湘南サドベリースクールを選択できる環境を作っていきたいですね。シュタイナー教育やモンテッソーリ教育、フリースクールなど、子ども自身が自分に合った教育を選べる社会になることを目指して、湘南サドベリースクールとしても貢献していければと考えています。
入学を検討している方へ
ー最後に、入学を検討している方へメッセージをお願いします。
小谷さん:私たち湘南サドベリースクールは、本当の自由を求める方、大人に管理されるのではなく自分の意思で自由を掴みたい方、そして話し合いを通じて物事を決めていくことに興味がある方に最適な環境だと考えています。
ただし、この「自由」は単なる好きなことができる楽しさだけではありません。例えば誰も「10歳になったから英語を」「12歳になったから数学を」といったレールを敷いてくれません。また、自分たちでスクールを運営していく責任も伴います。
私たちが目指すのは、そういった責任や時には困難も含めた「本当の自由」です。自分で考え、決断し、そして責任を持って行動する。そんな本質的な自由を学びたい子どもたちに、ぜひ湘南サドベリースクールの門を叩いていただきたいと思います。
沼澤さん:多くの人が大学生になってから始める「自分探し」を、私たちの学校では小さい頃から実践することができます。もちろん、楽しいと感じる人もいれば、自分で全てを決めていく責任の重さに戸惑う人もいるでしょう。しかし、この環境で培われる「自分で考え、行動する力」は、これからの予測困難な時代を生きていく上で、何よりも大切な財産になると確信しています。
子どもたち一人一人が、自分らしい学び方を見つけ、自分のペースで成長していける場所。それが湘南サドベリースクールです。教育に対する新しい視点をお持ちの方、お子様の可能性を最大限に引き出したいと考えている方、ぜひ一度、私たちの学校を見学にいらしてください。