SIJP(Seattle IT Japanese Proffessionals)が描くグローバル人材育成の未来 – グローバル無料オンラインプログラミング教室の挑戦

テクノロジーの急速な発展により、世界はますますボーダーレスになっています。私たちの子どもたちは、未来を切り拓く力が求められています。SIJP(Seattle IT Japanese Proffessionals)は、小学生や中学生を対象に、貴重なプログラミングスキルを提供し、彼らの創造力と自信を育むことを目指しています(Computer Science in English / 英語で学ぶコンピュータサイエンスプロジェクト:文中 CS in English)。エンジニアやクリエイターと直接交流できるクラスの中で、子どもたち自身の可能性を信じ、自らの手で未来を徐々に進めていく姿を見守り続けています。 今回は、SIJPの活動の背景や魅力について、今崎憲児(通称Kenji先生)さんにお話を伺いました。

SIJP(Seattle IT Japanese Proffessionals)ウェブサイト:http://sijp.org/

※次回のクラスは10月27日にZoom上で開催されます。是非参加してください。https://kidscodeclub.jp/csinenglish_202401027

SIJP(Seattle IT Japanese Proffessionals)の使命:日本とアメリカをつなぐ架け橋に

ー まず、SIJPがどのような方を対象にしているのか、そしてどのようなことを教えているのかを簡単にお聞かせいただけますか?

今崎憲児(Kenji先生):私たちの主な指導対象は小学生と中学生です。SIJPはテクノロジーの面白さを伝えながら、学校では体験できないような刺激的な経験を提供することを使命としております。シリコンバレーで活躍する現役のエンジニアと直接対話する機会が設けられています。これは日本での通常の学校教育では難しく、非常に貴重な体験になるはずです。

また、私たちのプログラムでは、同年代の子供たち同士の交流も大切にしています。例えば、英語が堪能な子供がいれば、周りの子供たちにも良い刺激になります。 たくさんの同年代の子供と関わることは、飛躍的な成長をするために非常に重要だと思います。

グローバル人材育成への熱い思い

ーKenjiさんがこの活動を始めようと思ったきっかけや経緯を教えていただけますか?

Kenji:私は、教えることが大好きなんです。最初は日本語で教えていたのですが、アメリカに住んでいる人の子供たちに日本語でコンピューターサイエンスを教えるのは、予想以上に難しかったんですね。特に専門用語は、英語の方が親しみやすいことに気づきました。

そこで、英語に切り替えたところ、とてもわかりやすくて、かつ刺激的な教え方ができることに気づきました。そのような試みを続けていたところ、福岡(Kids code club)や熊本(Kumamoto LR net)などのNPOとをつながり、熊本の大学と福岡の大学を繋いでクラスを行う機会がありました。当初はリアルな場所で行っていたのですが、コロナ禍をきっかけに完全オンライン形式に移行しました。

オンラインに移行したことで、思わぬ恩恵が生まれました。 アメリカ全土からティーチングアシスタント(クラスの補助をしてくれる人)を募集することができるようになったんです。 特にシリコンバレーの優秀な人材が参加してくれるようになったことが、私たちの大きな強みとなっております。

年齢や英語力に配慮した丁寧な指導

ー小学生から中学生まで幅広い年齢層が対象のことですが、どのように指導されていますのでお願いしますか?

Kenji:私たちは参加者の年齢とスキルレベルを意識しながら、ブレイクアウトルームを活用して指導を行っています。 具体的には、英語力を3段階(初級、中級、上級)に分けた上で、さらに年齢も考慮してグループ分けを行っています。

年齢が近い子供たち同士でグループを作ることで、全員が気兼ねなく参加できる環境を準備しています。

ブレークアウトルームはティーチングアシスタントの方が一人担当されていて、4~5人の子供を担当して、少人数で指導できるような仕組みを使っています。

また、参加者のほとんどが初対面同士なので、セッション開始時のアイスブレイクには特に力を入れています。ティーチングアシスタントには、必ずアイスブレイクを実施するように指導しています。リラックスすることで、子供たちが学びに集中できる環境を大切にしています。

楽しさと競争心を大切にしたオンリーワンの指導法

ー子供たちと学ぶ際に、特に意識していることはありますか?

Kenji:私たちが一番重視しているのは、とにかく「楽しく学ぶ」ということです。子供たちの集中力って、実は15~30分程度なんですよ。だから、難しい内容でも集中力が途切れないようにユーモアを交えながら楽しく伝えることを心がけています。

それと同時に、「競争心」を育てることも大切にしています。具体的なには、Kahoot!というクイズアプリを活用し、競争を適度に刺激しています。子供たちって本来、競争が好きなんですよ。良い意味での競争心を育てることも、成長には欠かせないと考えています。 現在の日本に、少し足りない部分かもしれませんね。

ー CS in englishのクラスにの活動に参加することで、日本の子供たちにはどのような変化が見られますか?

Kenji:私たちのクラスに参加していただいた日本の子供たちには、非常に大きな変化が見られます。まず、英語に対する抵抗感が大幅に減少しています。日本の英語教育は文法や読解に重点を置きがちですが、私たちのプログラムでは実際のコミュニケーションを重視しています。「英語で話すのが怖い」という子供たちが、徐々に自信を持って英語が使えるようになっていくんですね。

また、テクノロジーに対して大きな興味が湧いてくるようです。 プログラミングを学ぶことで、「自分でも何かできる」という実感を得た子供たちは、その後も自主的に学習を続ける傾向があります。 受動的な学習から能動的な学習への大きな転換点となっています。

さらに、グローバルな視点を持つことで、自分の可能性を広げる子供たちも増えています。 「日本だけでなく、世界中どこでも活躍できる」という意識が芽生え、より大きな夢を持つようです。これは、将来の日本社会にとって非常に重要な変化だと考えています。

日本の未来を決める子供たちへの期待

ー CS in englishのクラスにの活動を通して、どのような課題を解決したいとお考えですか?

Kenji:私は日本の未来について多少の危機感を抱いています。日本社会が一段と閉鎖的になり、挑戦することがあまり評価されない風潮を感じているんです。 「良い大学を出て、良い会社に就職すればとりあえずいい」といった価値観がまだまだ強いですよね。

しかし、そのような考え方ではイノベーションは生まれません。 私は子供たちに、挑戦することを大切にしてほしいのです。 海外で活躍する子供たちやエンジニアと直接対話することで、「夢物語ではない 、現実にそういう世界があるのだ」ということを強く実感してほしいんです。

例えば、野球選手の大谷翔平選手が良い例ですよね。日本で身に付けた基礎力をベースに、海外で大きく飛躍する。そして、その経験を持って日本に還元する。そのような子供をたくさん育てたいと考えています。

ーグローバルな視点を持つ親になるためのアドバイスをいただけますか?

Kenji:まず大切なのは、世界で今、何が起きているのかを知ることです。日本のニュースだけでなく、世界のニュースにも積極的に目を向けてください。例えば、アメリカではWaynoの自動運転タクシーが実用化され、無人タクシーが実際に走っている、というような情報です。そのようなものが近い将来日本に起りうると言うことです。それをできるだけ子供に伝えて、将来へのプランを一緒に考えてほしい。

そして、子供の可能性を信じ、それを引き出すこと。これこそが親の最も重要な役割だと私は考えています。子供が「これをやりたい」と言ったら、それをやめさせるのではなく、積極的に助けてあげてほしいです。

私自身、留学を希望した際に、両親は反対せずに背中を押してくれました。そして、現在の私があります。その経験から、やりたいことを伸ばしていくのが親の大切な役割だと強く感じています。

Cs in Englishのプログラムは、初期学習の場だけではありません。子供たちにロールモデルを提供する場にもなっているんです。アメリカで活躍する日本人エンジニアの姿を見て、「自分もああなりたい」と思う子供たちがたくさんいます。 憧れや具体的な目標を持つことが、子供たちの未来を大きく開く力になると信じています。

行政との連携による更なる発展を目指して

ーこれから、どのような点を強化していきたいとお考えですか?

Kenji:今後の課題として、日本の学校や教育委員会との連携を確立していきたいと考えています。市や県の公認が得られれば、より多くの子供たちに参加してもらえるはずです。 正直なところ、日本の行政と連携するには複雑な手続きが必要で、現状の私たちのリソースでは対応しきれていない部分があります。

私たちのプログラムの質には自信があります、世界で使われているプログラミング教材であるhttp://code.org の教材を使ったり、エンジニアと一緒に無料で提供していますが、手前味噌ながら内容は非常に充実しています。ただ、無料であるがゆえの問題もあります。ドタキャンも多少あるんです(笑)。

理想としては、150人くらいの申し込みがあって、実際の参加者が100人を超え、それを20人程度のティーチングアシスタントがサポートする、ということが最適な形だと考えています。

また、広告や宣伝にも力を入れたいのですが、現状では個人的にできる範囲で行っているため、限界があります。この記事をご覧になっていただき、興味を持っていただければとても嬉しいですね。

未来を決める子供たちへのメッセージ

ー最後に、参加を検討しているお子様や親御さんへのメッセージをお願いします!

Kenji:時代は、さらにボーダーレスでグローバルな世界になっています。 特にIT技術やテクノロジーの分野では、国境の概念がどんどん薄れていくでしょう。 日本が世界の潮流から取り残されないためには、私たち一人一人がその荒波に挑戦して行く必要があります。

そのためには、小さい頃から英語が中心の環境に身を置くことが非常に重要です。 もちろん、学校でも英語教育は行われていますが、現時点では十分な成果を出しているとは言えません。海外で活躍する子供を育てるために、身近で日常的な体験をとおして子供たちの可能性を大きく広げていきたいと考えています。

これまで2000人以上の子供たちにCs in Englishのプログラムに参加していただきました。参加した子供たちからは「すごく楽しかった!」という声をたくさんいただいています。また、親御さんからも「子供たちがこんなに熱中するなんてびっくりした」といった感想をよくいただきます。

私たちのプログラムは無料で参加できますので、ぜひお気軽に参加してみてください。 子供たちの未来の可能性を一段と広げるきっかけに少しでもなれれば嬉しいです。