すべてのこどもがやりたいことを見つけ、挑戦できる社会を目指す「特定非営利活動法人Connection of the Children(CoC)」。横浜を拠点に、留学生との交流や世界の食文化体験、平和について考えるワークショップなど、多彩な活動を展開しています。
今後さらに活動の幅を広げ、より多くのこどもたちを支援していく同法人の取り組みについて、代表の加藤さんにお話を伺いました。
こどもたちと世界を繋ぐ活動の原点

ー団体の概要について教えてください。
加藤:私たちは、「すべてのこどもたちがやりたいことを見つけて挑戦できる社会を作りたい」「国籍も文化も関係なく皆が温かく繋がれる社会を作りたい」という2つの軸を持って活動しています。
主な対象は小中学生ですが、高校生や大学生もボランティアとして参加し、活動を支えています。
活動の拠点は、横浜・野毛山動物園近くの「CASACO」です。CASACOはCoCの事務所であり、出会いと挑戦の場でもあります。
2階には留学生が暮らし、1階はこどもや大人が気軽に集い、留学生をはじめとする世界中の人々と交流し、新たな世界を知り、挑戦できる拠点となっています。
ここでは世界一気軽な異文化交流イベントと謳う「世界の朝ごはん」や、留学生との夕食会をはじめ、年間約150回ほどの世界を広げ挑戦できるイベントを実施しています。
そのほか拠点を飛び出し、式根島でのインクルーシブ挑戦キャンプ、小中学校を中心に平和教育ワークショップ、障がいのあるなし関係なくこどもが挑戦の一歩を踏み出せるスポーツ教室など、多彩な活動を展開しています。
ー団体設立の経緯についてお聞かせください。
加藤:2011年、私と共同設立者の田澤は、ユーラシア大陸を自転車で横断しながら、世界中の人々を糸でつなぐ「糸つなぎプロジェクト」を実施しました。これが、設立のきっかけとなりました。
「糸つなぎプロジェクト」は、旅の途中で出会ったこどもに20センチほどの糸を渡し、それを私たちが持つ糸に結んでもらうというものです。2人でつなげば糸は倍に、3人なら3倍に。出会いの数だけ糸は結ばれ、どんどん長くなっていきます。
普段は見えない人と人とのつながりが、糸を通して視覚化されるのです。ユーラシア大陸横断の旅では、31の国と地域で出会った5003人のこどもが糸につながりました。
そしてこの糸つなぎは今も続いており、現在では100カ国以上、14000人の人々が一本の糸で結ばれています。
国同士が政治的に対立していても、人と人がつながることで平和な世界を築けるのではないか。そんな思いを抱きながら、私たちは糸を携えて日本全国の教育機関をめぐり、世界の広さや面白さを伝えました。
その中で、学校の学びを補完しながら、世界の話や挑戦することの楽しさを届ける活動をしたいと考えるようになり、2013年にNPO法人を設立しました。
こどもたちの「やりたい」を全力でサポート
ー貴団体ならではの特徴について教えてください。
加藤:最大の特徴は、こどもが「やりたい」と思ったことに対し、大人がとことんサポートする姿勢です。大人は何かを教えるのではなく、こどもの応援団として全力で支えます。
例えば、CASACOに通っていた小学生の女の子が「世界の朝ごはんをレシピ本にしたい」と考え、実際に出版までこぎつけました。この本は神奈川県の推薦図書に選ばれ、多くの小中学校に置かれています。
その経験を通じてさらに自信をつけた彼女は、中学3年生のときに「人道支援の現場を見たい」と願い、人道支援のスペシャリストと連携してパレスチナへの訪問を実現。その経験を基に、平和について考える本も出版しました。
この本も神奈川県の推薦図書に選ばれ、現在では平和学習のワークショップ教材として活用されています。
また、障がいの有無に関わらず、こどもが挑戦できるスポーツ教室では、参加者一人ひとりに高校生以上のボランティアがマンツーマンでつき、「やりたい」という思いに個別で対応しています。
この教室のゴールは、誰もがスポーツをきっかけに、挑戦の楽しさや魅力を実感できる場をつくることです。こどもが自分のペースで挑戦できる環境を整え、成功体験を積み重ねられるようサポートしています。
式根島でのキャンプでも、こどもたちは100の挑戦リストの中からやりたいことを選び、それを基にカリキュラムを作成。ボランティアが全力でサポートしながら、こども一人ひとりの挑戦を後押ししています。
最近では、不登校のこどもも多くCoCを訪れています。留学生をはじめ多様な国の人々と触れ合うことで、日本の「こうしなければならない」という価値観から解放され、新たな挑戦へと一歩踏み出すこどもも少なくありません。
さらに、親子で参加できるイベントも多く開催しており、こどもだけでなく、保護者にとっても新たな価値観に触れる機会となっています。
より多くのこどもたちに届けるために
ー今後の展望についてお聞かせください。
加藤:2025年から、活動を全国へと広げる準備を進めています。様々な分野のプロフェッショナルやコンテンツホルダーと連携し、日本全体、さらには世界全体をフィールドに、こどもが学び、挑戦できる場を創りたいと考えています。
また、CASACOでは2025年4月から新たな試みとして、こどもが主体となって運営する食堂「こどもがつくる食堂」をスタートします。こども自身が献立を考え、料理を作り、それを提供する。その対価として、食事を無料で得られる仕組みです。
これは従来のこども食堂を一歩進化させ、こどもが社会に貢献し、その経験を通じて自己肯定感を育む場として機能させたいと考えています。
経済的支援という形ではなく、こども自身が主体的に活動し、その結果として食事を得ることで、より大きな達成感と自信を感じられる場所にしていきます。
そして、この食堂に集まるこどもたちが、やがて日本や世界の挑戦の場へと飛び立っていってほしいとも願っています。
小さな挑戦を重ねることで、徐々により大きな挑戦へと踏み出す勇気が育まれ、これまでやったことのないことにも挑戦したくなる。そんな経験を積み重ねる場になればと思っています。
このような活動を支えるため、専属スタッフの増員や資金基盤の強化にも力を入れていく予定です。
ー最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
加藤:これから全国に活動を広げていく中で、「こんなことに挑戦してみたい!」というこどもの声や、「こどもに何か挑戦させたいけれど、何をさせたらいいかわからない…」という保護者の方のご相談をお待ちしています。
また、不登校やその他の悩みを抱えている方も、まずは気軽にCASACOに遊びに来てみてください。 どんな小さなことでも大丈夫です。
こども一人ひとりの「やってみたい!」という気持ちを大切にしながら、一緒に成長できる場をつくっていけたらと思っています。」