多様な専門性を持つ理事たちが広げる支援の輪-子どもの健やかな発達に関する情報を発信「NPO法人 発達サポート・アイビー」

言語聴覚士、公認心理師、運動療育、教員免許など、異なる専門性を持つ3人によって、子どもの発達に関する専門知識を伝え、支援の輪を広げる活動を展開する「NPO法人発達サポート・アイビー」。

専門機関に繋がるまでの待機期間が1年にも及ぶこともある、発達支援の現状に危機感を抱き、情報発信を通じて「今できること」の大切さを伝える活動について、髙田めぐみさん、吉尾香奈子さん、とよだひろこさんにお話を伺いました。

子どもを取り巻く大人たちへの支援を通して子どもの発達をサポート

ー どういった方を対象にどのような支援をされていらっしゃるのか教えてください。

髙田めぐみ(代表理事):私たちは子どもたちに直接の支援というよりも、どちらかというと子どもたちに関わる周りの大人の方へ向けた活動を行っています。

保護者の方、学校の先生、教育の支援者さん、地域の大人、保健師さんや自治体も含めて、子どもに関わる様々な大人の方に「子どもにとっての大事な発達ってこういう部分だよ」「本当はこういうところ育ててほしいよ」ということをお伝えするということが活動の趣旨になります。

ー 具体的にどういった支援をされていますか?

髙田:私たちは子ども自身の発達という「内的要因」と周りの大人の関わり方・環境調整という「外的要因」などの考え方をお伝えるすること自体が支援というように捉えています。

一般の方向けには、子ども自身の発達については、赤ちゃんの段階からの動きや言葉、食べる、コミュニケーション、認知機能について育てていくことが大切ということや、遊びがとても大事だということを紹介させていただいています。

また、学校向けにも「今色々な子どもたちがいる中で、一つの方法としてこういったことを学校の活動に取り入れていくといいですよ」ということもお伝えしています。

動きや体の機能のこと以外にも、先生方の指導の仕方が非常に重要です。

子どもたちはどんな原因でその行動をしているのか?という考えを持って頂けると、今想定される指導方法とは違うアプローチができる可能性があります。

お子さん自身が何に困っているのかがわかると、支援の仕方が全く変わるんです。

5つの柱で展開する多様な発達支援活動

吉尾香奈子:私たちは主に5つの活動を行っています。

1つ目が「アイビーかふぇ」です。

毎月1回オンラインで、子どもの発達に関する話をみなさんと共にする場として、無料のお話会を開いています。

これは一般の保護者の方から学校の先生、幼稚園や保育園の先生、助産師さんなど専門職の方も含めて、今悩んでいることや、どこに相談していいか分からないことを皆さんで考え、お話しする会となっています。

2つ目の「アイビーLabo」は講座形式で、私たちそれぞれが持つ、専門性を活かした情報発信を行っています。

子ども自身の発達や環境調整などについて、専門家と一般の方の間に立って分かりやすく、今日から使える知識と実践の方法をお伝えしています。

3つ目が「個別相談」です。主に、保護者の方が利用されています。

お子さんに関する悩み事を個別で相談したいという方の相談をお受けしています。

4つ目が「出前授業・研修」です。

学校の先生や、放課後等デイサービスの支援者の方向けの研修や、、実際に学校に訪問して子どもたちと一緒にワークをする出前授業を提供しています。

5つ目が「ブレインジム®️」です。

ブレインジム®️とは、簡単な体操を通して、脳と心と体を学習がしやすい状態にすることを目的とした教育プログラムです。

アイビーでは、子どもたち向けのブレインジム®️のワークショップや、大人向けの公式講座を提供しています。

多様な専門性を持つ理事たちの横顔

ー 3名の専門分野についてお聞かせください。

髙田:私はことば・コミュニケーション・発音・摂食などのリハビリをする言語聴覚士として、たくさんの親子に関わっています。

主に市区町村や保健所などの公的機関で専門相談やリハビリを行っています。

とよだひろこ:教員免許、公認心理師の資格を持っています。

発達障害の領域の子どもをもったことがきっかけで、発達障害の子どもさんの体の発達を促す運動教室を主宰しています。

運動療育の専門で、普段は放課後等デイサービスなどで仕事をしたり、自分の教室を運営したりしています。

吉尾:私は元々小学校教員として教育に関わっていました。

現在は教育現場に関わる公認心理師として、学校の心理検査員や巡回相談員として様々な教育委員会からご依頼いただいています。

とよだ:私たち3人はそれぞれの専門の仕事をしながら、3人が集まってNPOとしての活動を行っているところが特徴だと思っています。

「ブレインジム」との出会いから始まったNPO設立のきっかけ

ー 3名で活動を始められたきっかけや背景について教えてください。

とよだ:私たちがそれぞれブレインジムというメソッドを学びに行った時に出会ったことが始まりです。

3人それぞれ専門職に従事していますが、お子さんに関わるお仕事をする中で、お困り事を持たれているご家族やお子さんがとても沢山いらっしゃって、個々に対応できないほど増えている状況がありました。

そこで、NPO法人という団体として情報をしっかり発信し、いろんな方に発達のことを知っていただきたい、家庭でもできることがたくさんあるということを伝えたいと思いNPO法人を設立しました。

3つの専門性が融合するからこそ見える子どもの発達の全体像

ー この活動をされる中で一番の強みのように感じていらっしゃる面はどういったところでしょうか?

とよだ:私たちは子どもの健やかな発達のための情報発信をしていますが、一つのことだけで課題が解決することはありません。

私たち3人はそれぞれに強みを持っているので、教育・発達支援・リハビリなど様々な観点から解決につながりそうな情報をお伝えしていくことができます。

3方向からバランスの取れた情報発信ができること、そしてNPO法人を運営していくにあたって代表が1人で頑張るのではなく、3人が補い合って活動をすることが継続の力になっていると感じています。

専門家と一般の方との橋渡し役として

ー この活動をされる中で大切にされていることや特に意識してらっしゃることはどういったところでしょうか?

髙田:私たちの役割は教育や発達に関する専門性の高い情報を、皆さんに分かりやすくお伝えすることだと考えています。

自治体や他の専門職との連携を広げる将来のビジョン

ー 今後新しく取り組んでいきたいことや将来のビジョンについてお聞かせください。

吉尾:子どもの発達のための体操教室に参加して頂ける機会をもっと増やしていきたいです。

もう一つは様々なニーズのある子どもたちが増えている中で、先生たちがどのような対応をすれば良いかなどを相談できる窓口がとても少ないので、相談したい時に繋がれる専門家としてお役に立てることをしたいと考えています。

髙田:私はフリーランスST(言語聴覚士)として色々な自治体や公的機関に行かせて頂く中で、保護者だけでなく、先生、他部門の専門職の方々も困っておられることがあると感じています。

子育て支援において、困った時はみんなで補い合い、協力し合うという関係を築いていき、自治体や多職種との連携を今後もどんどん広げていきたいです。

それが巡り巡って子どもたちに恩恵が届く、そういった地域を作っていくことが私たちが目指していることです。

「動き」の大切さを伝える – 子どもの発達における身体活動の重要性

とよだ:今、学校や子育ての現場で大人が視点を変えなければいけない時代に来ていると思います。

子どもの幼少期の育ち方が大きく変わってきています。

便利すぎる社会が子どもの発達を阻害しているという考え方もあり、体を動かすことが人間の脳と心と体を育てるためにいかに重要かということが見過ごされている、という危機感があります。

赤ちゃんの時期からの子どもの体の動きには全部意味がある、ということがあまりにも知られていないのです。

動きが乏しい子どもたちは言葉の発達が遅れたり、食べることが苦手だったり、不器用さが目立ったりすることがあります。

さらに幼稚園・保育園や学校での集団活動への入りにくさなどにもつながるなどの困りごととして表れます。

動きの発達が子どもたちにとって必要な力に全部繋がっているということを、保護者や教育者の方など、子どもに関わる大人が全員知っている状況を目指したいです。

子どもに関する身近な専門家が少ない現状

吉尾:例えば、小児の精神発達を診ている精神科はとても数が少ないんです。

受診すること自体に時間がかかることが今はとても多いのですが、受診をする前にご家庭や園・学校などで出来ることもたくさんあります。

「今、自分にもできることがある」ということを、多くの方に知って頂きたいと思います。

ー この記事を読まれた方にメッセージをお願いします。

髙田:世の中にはたくさんの情報が溢れているので、何を信じればいいのか不安に感じることも多いと思います。

お子さんの発達に関する情報を学んで、自分にも出来ることがあるということを知ることで、少しでも安心感を持っていただきたいと思います。

とよだ:医療機関や支援機関に繋がることを待っていたら、その間に子どもは大きくなってしまいます。

私たちもそのことに危機感を感じて、NPO法人として情報配信をしています。

専門性の壁を超えて、子どもの発達をトータルに捉える視点

髙田:お子さんの発達には色々な要素が繋がっています。

例えば体の動きの発達が十分でないと、言葉や摂食、社会性の発達にも影響が出ることがあります。

しかし、専門家であってもそれぞれの専門分野だけで見てしまうことも少なくありません。

私たちは異なる専門性を持ち寄ることで、子どもの発達を総合的に捉え、子どもに関わる大人の皆さんを支援していきたいと考えています。ぜひ私たちとつながっていただきたいと思います。