【染織の世界へようこそ】地域と世代を超えて繋がる、稲垣さんのジャパニーズアート教室の魅力

静岡市のに紺屋町地下街に、ひと際目を引くガラス張りの教室があります。ここは、稲垣さんが営む染織(せんしょく)と機織り(はたおり)の教室。4歳の子供から80歳を超えるシニアまで、幅広い世代が集まり、伝統的な染織や手仕事の技術を学び、楽しむ場所です。ただの「習い事」を超えたこの教室は、手を動かす喜びを通して新たな仲間と出会い、自分の可能性を見つける場でもあります。今回は、教室を通して地域と世代を繋げてきた稲垣さんに、教室の始まりやその魅力、今後の展望についてじっくりお話を伺いました。

教室の対象者と指導内容について

ーまず、どういった方を対象にした教室なのか、またどのような指導を行っているのか教えていただけますか?

稲垣:私の教室には4歳から80歳以上の方まで、幅広い年齢層の方がいらっしゃいます。地域的には静岡市が中心ですが、例えば海外から体験に来られる方もいらっしゃいます。性別に関しても、特に制限はなく、男女問わず参加されていますが、女性の方が多いです。指導内容としては、染色や機織りをメインに教えています。「鶴の恩返し」で見られるような機織りを始めとして、羊毛を紡いで糸を作る作業や、フェルトを作ることも教えています。静岡市内に教室があり、静岡駅から近いこともあって、アクセスは良好です。また、教室には多様な方々が集まるため、同じ興味を持つ仲間と出会える場でもあります。

教室を開かれたきっかけについて

ー教室を開かれた経緯やきっかけについて教えてください。

稲垣:私は大学で染色を学んでいました。その後、大学の先生の自宅で助手をしていた時期があり、機織りを中心に学びました。卒業後は、着物を織る仕事をしながら、販売も行っていました。最初は自分が作家として物を作り、それを販売することで生計を立てようと考えていましたが、10年ほど経って、販売するだけでは限界があることに気付きました。着物業界は非常に特殊で、着物を織ってもその収益が大きくないことがわかり、自分のスキルを別の形で活かせないかと模索していました。

そんな時期に、ワークショップ形式で教える仕事が増えてきて、教えることの方が収益が上がるようになったんです。これをきっかけに、「教室業を本格的にやってみよう」と決心しました。今の教室は、町中にある店舗型の教室として始めましたが、オープンな雰囲気にするためにガラス張りのデザインにし、誰でも入りやすい環境を整えました。

着物業界の厳しさと教室設立の背景

ー着物を織るという仕事は、日本の伝統を受け継ぐ素晴らしい職業ですが、実際にやっていく上での難しさもあるのでしょうか?

稲垣:そうですね。着物を織ること自体は非常にやりがいがありますし、日本の伝統を感じる素晴らしい仕事です。ただ、現実的には、着物業界には独自の慣習やルールがあって、製造業としては非常に厳しい部分があります。

こうした状況で、製造業として続けていくことに限界を感じることがありました。さらに、着物を着る方自体が減少しているという現実もあります。ですので、私が教室を始めた背景には、こうした業界の厳しさが影響している部分もあります。自分は作ることが好きで続けたかったのですが、それで生計をたてていくには、新しい形で社会に貢献できる方法を見つける必要がありました。

教室の特徴とオープンな雰囲気

ー他の教室とは異なる、稲垣様の教室の特徴やアピールポイントについて教えてください。

稲垣:私の教室の一番の特徴は、オープンな雰囲気だと思います。静岡駅から徒歩5分の場所にあり、外から中の様子が見えるようにガラス張りにしています。これにより、興味を持った方が自然に足を運びやすい環境を作っています。他の機織り教室は、個人宅でのレッスンが多く、アクセスや場所がわかりにくいことがよくあります。

また、機織りというのは非常にニッチな分野です。多くの人にとっては馴染みのない手芸ですが、ガラス張りの店舗で糸や機織り機が見えることで、興味を持った方が気軽に入って来られます。中には、ふらっと立ち寄って機織りを知らなかった方も「面白そう」と思ってご入会されることもあります。機織りというニッチな技術を、より多くの人に知ってもらいたいという思いも、この教室の特徴の一つです。

生徒指導の方針とアプローチ

ー生徒を指導する際に、特に意識していることや方針について教えてください。

稲垣:私は、生徒一人ひとりが「何をやりたいのか」を探ることを大切にしています。最初にカウンセリングのような形で話をし、その方が興味を持っていることを見つけていきます。特に、子供の場合は、自分でも何が好きか分からないことが多いので、指導を通じてそれを一緒に探していくことが重要です。

また、技術的な部分だけでなく、その生徒の性格や興味に合わせた指導を心がけています。例えば、機織りはとても細かい作業が必要ですが、これを通して集中力や手先の器用さを養うことができます。また、機織りは計算力も必要とするので、算数的な思考も自然と身につくんです。特に、子供たちには楽しみながら学べるよう、遊びの要素を取り入れています。大人の生徒さんの場合は、自分の趣味や余暇を充実させることを目標に、その方に合った作品作りを提案しています。

提供しているコースとプランの詳細

ー教室で提供しているコースやプランについて教えてください。

稲垣:大人向けには、月に10時間のコースと4時間のコースがあります。多くの方は、月に3〜4回通って10時間くらいのペースで学んでいます。また、手芸やフェルト作りをしたい方には、4時間の短時間コースもあります。遠方からお越しになる方や、忙しい方にも対応できるように柔軟にプランを提供しています。

一方、体験コースも非常に人気があります。体験では、バッグやポーチを作ることができ、1回の体験で自分だけのオリジナル作品を持ち帰ることができます。体験コースは何度でも受講可能で、参加者は自分のペースで作りたいものを作ることができます。例えば、バッグ作りは3〜4時間で完了し、費用は約7700円です。体験で手ごたえを感じた方は、月謝制のコースに移行されることが多いですね。

また、子供向けの教室も行っており、特に伝統工芸の後継者育成という意味で力を入れています。子供教室では、2時間のレッスンを3300円で提供しており、材料費も全て込みです。将来的に、このような経験を通じて工芸の楽しさを感じ、後継者になってくれる可能性も考えています。

今後の教室運営と目標

ー今後、教室で強化していきたい点や取り組みについて教えてください。

稲垣:今後の目標としては、教室をただの学びの場としてだけではなく、コミュニティの場として機能させていきたいと考えています。現在、教室は大人の生徒たちにとってサロンのような役割も果たしています。手芸が好きな人同士が集まり、情報交換をしたり、作品を見せ合ったりする場所になってきています。

同じように、子供たちにも仲間づくりの場を提供したいと思っています。例えば、スポーツが好きな子がクラブチームに入るように、手芸や工芸が好きな子供たちが集まる「手芸部」的なコミュニティを作りたいと考えています。コロナ禍で一度は途絶えてしまった部分もありますが、これから少しずつ再開していきたいと思います。

最後に、入会を検討している方へメッセージ

ー最後に、これから教室に入会しようとしている方や、その保護者の方へメッセージをお願いします。

稲垣:手を動かして物を作ることは、自分の「好き」を見つけることにも繋がります。特に、自分の好きなものを形にしていく過程で、自分自身を発見できることも多いと思います。ですので、まずは気軽に一歩を踏み出してみてください。教室に来ていただければ、一緒に作品を作りながら、自分が本当に楽しめることを見つけていくお手伝いをさせていただきます。皆様のご参加を心からお待ちしております。