中学受験の世界では、授業時間の長時間化や学習量の増加が進み、小学生の生活の質が懸念されています。特に高学年になると夜9時過ぎまで授業が行われ、家族とゆっくり夕飯を食べる日が少なくなります。
そんな中、「週2日通塾で志望校合格」という新しいスタイルを掲げる塾があります。花まる学習会の中学受験部門、シグマTECHです。同塾は最新のデジタルツールを活用しながら、限られた通塾時間で最大限の学習効果を引き出す独自の指導方法を確立。さらに、親子で参加できる探究講座など、受験勉強を通じて知的好奇心を育む取り組みも行っています。
今回は、シグマTECH代表の伊藤潤氏に、同塾が目指す「幸せな受験」の在り方について詳しくお話を伺いました。
週2日通塾で志望校合格を実現する中学受験塾
ーシグマTECHの概要と、どのような生徒さんを対象に指導を行っているのかについて教えてください。
伊藤潤代表:中学受験を考えている小学校4年生から6年生のご家庭を対象に指導を行っています。最大の特徴は、通塾回数が少ない点です。「夕ご飯をうちでゆっくり食べる中学受験」をコンセプトに掲げ、週2日の通塾で志望校合格を目指します。
6年生になっても授業は19時30分には終了するため、ご家庭で夕食を取る時間を確保できます。一般的な中学受験塾では、高学年になると21時や21時30分まで授業が行われ、お弁当持参が必要なケースも少なくありません。当塾では、小学生の多様な経験と志望校合格の両立を目指しています。
当塾のクラス編成は2クラス制を採用しており、難関中学校向けのカリキュラムを提供しています。入塾に際しては、4年生からの入塾でも、5年生以降の途中入塾でも、入塾テストの受験が必要となります。また、他塾での実績を基に、一定の基準を満たしている場合も受け入れをしています。
テクノロジーを活用した先進的な学習支援
ーシグマTECH様の設立経緯について教えていただけますか?
伊藤:2019年2月の設立で、今年で6年目を迎えます。設立のきっかけは、中学受験における小学校時代の豊かさと合格の両立を実現する新しい通塾スタイルを作りたいという想いでした。
特筆すべきは、コロナ禍以前からオンライン授業を導入していた点です。週1回の個別指導は、1対1のオンライン指導を実施しています。テクノロジーの発展により、通塾回数を減らしながらも志望校合格を実現できる環境が整ってきたと考えました。
実際、コロナ禍が始まった際も、すでにオンラインシステムが整備されていたため、一度も授業を中断することなく継続できました。これは、早期からテクノロジーの重要性を認識し、積極的に導入を進めてきた結果といえます。
集団個別融合型指導で一人ひとりに最適化された学び
ー他の塾にはない、シグマTECH様の最大のアピールポイントを教えてください。
伊藤:最大の特徴は「集団・個別融合塾」という点です。週2日の集団授業を大切にしながら、5年生以降は全員に週1回の個別指導を提供しています。個別指導では、集団授業での不明点の質問対応や確認テストのフィードバック、そして学習スケジュールの調整などを行います。
また、個別指導の最後には保護者の方との面談も実施し、家庭学習の状況や今後の学習方針について共有します。これにより、塾と家庭の間でスムーズな連携が図れ、より効果的な学習環境を構築することができます。
集団授業では生徒同士の切磋琢磨を重視しつつ、個別指導で各生徒の習熟度に応じた指導を行うことで、それぞれの生徒に最適化された学習環境を提供しています。例えば、宿題一つとっても、生徒それぞれの習熟度によって内容を調整し、個別指導の場で細かな指導を行っています。
デジタル技術を活用した包括的な学習サポート体制
伊藤:当塾では、独自のアプリやデジタルツールを活用して、効果的な学習支援を行っています。「Meta Moji(メタモジ)」というアプリを使用して生徒の学習ノートを確認し、詳細なフィードバックを提供しています。スタッフは提出された課題に対して、個別のメッセージカードを作成し、具体的なアドバイスを行っています。
また、塾専用アプリ「Comiru(コミル)」を通じて、保護者との密なコミュニケーションを実現しています。このアプリでは、塾からのお知らせや個別のメッセージのやり取りが可能で、特に共働き家庭にとって重要なコミュニケーションツールとなっています。
保護者からの質問や相談に対しては、2営業日以内の返信を徹底しており、毎日のミーティングでも確認事項として取り上げています。中学受験では保護者の不安や心配も大きいため、迅速な対応を心がけています。
探究心を育む多彩な体験型学習プログラム
ーとてもユニークな『日曜探究講座』について詳しく教えていただけますか?
伊藤:「学ぶ楽しさを受験の中で味わう」をテーマに、様々な体験型学習プログラムを提供しています。例えば、理科の授業では、まずオンラインで基礎知識を学んだ後、葛西臨海水族館でフィールドワークを行います。単に見学するだけでなく、事前学習で得た視点を活かしてミッションに取り組むことで、より深い学びを実現しています。
これらの活動には親子での参加を歓迎しております。社会科では奈良時代の国分寺建立と関連付けて東京の国分寺を訪れたり、新紙幣のデザインに選ばれた渋沢栄一に関連して渋沢栄一記念館での学習を行ったりと、教科書の枠を超えた学びを提供しています。
さらに、読書講座やビブリオバトル(書評合戦)、落語を通じた学び、代表による「将来の仕事と受験の関係性」についてのトークセッションなど、年間16回程度の多彩なプログラムを実施しています。これらの活動を通じて、生徒同士の交流も深まり、より豊かな学びの場となっています。
徹底した個別対応と組織的なサポート体制
ー生徒さんの指導において特に意識されていることはありますか?
伊藤:最も重視しているのは、徹底した個への関心を持つことです。当塾の講師たちは、「足を使う」という言葉があるように、授業中は各生徒の学習状況を常に観察し、適切な声かけを行っています。また、デジタルノートチェックを活用して家庭学習の様子も細かくチェックし、必要に応じてフィードバックを提供しています。
具体的には、1週間分の宿題を保護者に写真で提出してもらい、授業時間外にスタッフが確認します。提出された課題には具体的な添削やアドバイスを付け、メッセージカード形式でフィードバックを行います。このような丁寧なケアは、限られた通塾時間を補完する重要な取り組みとなっています。
主体的な学びを育む環境づくり
ー小学生が主体的に学ぶために必要な要素について、お考えをお聞かせください。
伊藤:小学生が主体的に学ぶためには、いくつかの重要な要素があります。まず、基本的な学習習慣の確立が必要です。受験という目標があっても、漢字学習などの基礎的な部分は必ずしも楽しいとは限りません。そのため、やるべきことをしっかりと習慣づけることが重要です。
次に「余白(バッファ)」の存在です。スケジュールを詰め込みすぎると、自ら考え、選択する機会が失われてしまいます。これは当塾が「夕ご飯をうちで食べる中学受験」をコンセプトとしている理由の一つでもあります。
さらに、自己選択の機会を設けることも重要です。中学受験をするかどうか、どの学校を目指すか、模試の振り返りをどうするかなど、自分で考え、時には失敗しながら選択していく経験を積むことが、主体的な学びにつながっていきます。
特に最近では、中学受験が一部のエリート層のものから、より一般的な選択肢となってきており、特に都内では半数以上の生徒が受験する状況となっています。このような中で、主体的な学びを実現するためには、生徒一人ひとりに適切な「余白」を与え、自ら考える機会を提供することが不可欠だと考えています。
教育サービスの質的向上に向けた今後の展望
ー今後、より強化していきたい点についてお聞かせください。
伊藤:最も重要な課題として考えているのは、どの教師が担当しても徹底した個への関心を持って指導できる体制の構築です。教師による指導の質のばらつきをなくし、組織として一貫した高品質な教育サービスを提供することを目指しています。
具体的な施策として、来年度から担当者による複数面談の実施を計画しています。現在は担任教師が面談を複数回行っていますが、今後は個別指導の教師やノートチェックを担当する教師など、生徒に関わる全てのスタッフが定期的に面談を行う予定です。これにより、より多角的な視点から生徒をサポートし、全スタッフが同じ方向を向いて指導できる体制を構築したいと考えています。
“幸せな受験”の実現を目指して
ー最後に、入塾を考えている生徒さんやその保護者の方へメッセージをお願いします!
伊藤:中学受験は誰もが必ずしもしなければならない受験ではありませんが、選択された方々にとって「やって良かった」と思える幸せな受験になるよう、全力でサポートいたします。第一志望校の合格率は3割と言われる厳しい世界ですが、万一、第一志望に合格できなかったとしても、この過程で得られる学びや経験を通じて、「挑戦して良かった」と感じていただける受験にすることは必ず実現できると考えています。
特に当塾では、日曜探究講座などを通じて、親子で参加できる様々な学びの機会を提供しています。これらの経験は、万一志望校に合格できなかったとしても、かけがえのない思い出として残ることでしょう。志望校合格を追求しつつ、全ての受験生とその家族にとって価値のある時間を提供することが、私たちの使命だと考えています。