「音楽×就労支援」障害者の新たな可能性を切り拓くNPO法人Music Of Mind

「音楽が仕事になる」。そんな新しい形の就労支援を実践しているのが、NPO法人Music Of Mindです。コンサートやライブ活動を通じて、利用者の方々が自分らしく輝ける場所を作り出しています。音楽未経験でも大丈夫。今回は音楽を通じて、障害のある方の就労と自立を支える取り組みについて創業者の錦谷さんにインタビューしました!

音楽を通じた就労支援

ー事業概要について教えてください。

錦谷さん:NPO法人Music Of Mindは知的障害者の就労支援事業所として、自立や一般就労に向けた支援を行っています。現在18名の方が在籍されており、就労継続支援B型事業所として運営しています。

一般的な就労支援事業所では菓子製造やカフェ運営、企業からの内職作業などが主流ですが、当事業所では音楽を仕事としている点が特徴です。外部での演奏や事業所企画のコンサート、ライブなどを行い、その売上が利用者の方の給与となる、そういった形での就労支援を行っています。

設立の背景と想い

ー設立のきっかけについて教えてください。

錦谷さん:当法人は2011年4月にボランティア団体としてスタートし、同年9月にNPO法人化、12月に就労継続支援B型事業所として認可を受けました。

設立のきっかけは、私が障害者支援施設でボランティアをしていた時に遡ります。ちょうど東日本大震災直後の時期で、当時の施設での支援体制に課題を感じていた保護者の方々から、新しい施設の立ち上げを強く要望されました。

当時は障害者のガイドヘルパーとして働いていただけでしたが、保護者の方々の熱意に動かされ、私自身が幼い頃から学んでいた声楽の経験を活かせないかと考えこのサービスを始めました。音楽の事業にした理由は共同設立者にピアノ経験者がいたことや、最初に集まった9名の利用者の方々が音楽を大変好きだったからです。

音楽活動と利用者の成長

ー利用者の方々はどのような音楽活動を行っているのでしょうか。

錦谷さん:はい、ピアノを弾く方、ドラムを叩く方など、様々な形で音楽活動に参加しています。自作のミュージカルを上演したり、オリジナル楽曲を制作してインターネットで配信・販売したりもしているのですよ。

興味深いことに、利用者のほとんどは音楽経験がない状態で入所されます。養護学校を卒業して18歳で就労される方が多いのですが「音楽が好きです」「やってみたいです」という気持ちを持って来られる方がほとんどです。

例えば、現在ドラムを担当している方はダウン症の方なのですが、「ドラムを叩いてみたい」と言って入所され、今では毎日練習を続けています。

就労支援としての特徴と課題

ー一般的な就労支援施設とは異なる特徴があるようですが、具体的にどのような点が特徴的ですか?

錦谷さん:当事業所はライブカフェも併設しており、カフェではコーヒーやパスタなど、全て利用者さんに手作りしてもらっています。特徴的なのは、音楽の仕事が好きで一般就労に移行する方が今のところいないということです。パソコンスキルを身につけてもらうなど、一般就労への移行も促していますが、コンサートなどの特殊な仕事を経験すると、とても楽しく感じてしまい、なかなか外に出ていかないというのが現状です。

一方で、お客様と直接触れ合える機会が多く、喜んでいただける顔が見られるという点は大きな強みです。他の就労支援施設のように単純作業を行うのではなく、お客様との直接的な関わりがあり、やりがいを感じやすい環境となっています。

コミュニケーションにおける独自のアプローチ

ー利用者の方々とのコミュニケーションで特に意識されていることはありますか。

錦谷さん:音楽指導をする際は指導者という立場を明確にしていますが、一緒に演奏する時は上下関係を作らず、共に楽しむということを心がけています。

カフェでの作業や軽作業の際も同様で、叱責することは避け、音楽を一緒に作り上げる仲間だという意識を大切にしています。

私自身は声楽を担当し、ステージの構成やミュージカルの台本作成、プログラム制作などを主に行っています。楽器指導は各楽器に精通したスタッフが担当しており、元バンドマンやピアノの専門家、ディズニーでダンサーの経験がある職員など、様々な経験を持つスタッフが揃っています。

独自の運営方針と今後の展望

ー今後の展開についてお聞かせください。

錦谷さん:今後の展望としては、現在の事業所が手狭になってきているため、より広いライブカフェの開設を計画しています。

利用者からは「紅白歌合戦に出たい」という声も上がっており、より多くの方に活動を知っていただけるよう努めています。

音楽を通じた新しい可能性へ

ー最後に、この記事をご覧の方へメッセージをお願いします。

錦谷さん:障害者施設では意外にも、いじめの問題が多く存在します。保護者の方々も気づいていないケースが少なくありません。しかし、当事業所では音楽という共通の目標に向かって皆で取り組むことで、毎日楽しく過ごせる職場となっています。

普通の仕事は難しいかもしれないけれど、音楽なら挑戦してみたい。そう感じている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度見学にいらしてください。

実際のライブや演奏を見て、「うちの子もここで活動させたい」とお問い合わせをいただくケースも多くあります。私たちは、皆さんが自分らしく輝ける場所を提供できることを誇りに思っています。音楽を通じて、新しい可能性を一緒に見つけていけたらと思います。