自身の経験と使命感から、島根県で独自のフードバンク活動を展開する「しまね子ども支援プロジェクト」。
ひとり親世帯への食料支援では時間や人目を気にせず支援が受けられる仕組みを確立しています。
今回は副理事長の樋口和広氏に、活動への思いと今後の展望についてお話を伺いました。
個人の経験から生まれた、地域に根差した支援活動
樋口氏:私共の方針は島根県内にお住まいの、ひとり親世帯の内、低所得者の方々に食料品や日用品を提供させていただいています。
この活動を始めたきっかけは、大きく3つあります。
1つ目は私自身の経験です。
小学校1年生の時に交通事故で父を亡くし、母親が女手一つで育ててくれました。
後になって、母が自分の分の食事を抜いて私を育ててくれていたことを知りました。
2つ目は、阪神淡路大震災で親を亡くした子どもたちの支援経験です。
以前所属していたあしなが育英会での活動を通じて、4、5年前に当時支援した子どもたちの結婚式に呼ばれました。
震災当時は絶望に暮れていた子どもたちが、「辛い経験があったからこそ、多くの人との出会いがあり、今の幸せがある」と語る姿を見て、子どもへの支援が人生を大きく変えうると実感しました。
3つ目は、島根県においてフードバンクなどの支援体制が圧倒的に不足していることを知ったことです。
24時間利用可能な革新的な支援システム
ー支援を希望される方はどのような方法で登録できるのでしょうか。
樋口氏:利用を希望される方は、まず当プロジェクトのウェブサイトで登録していただく必要があります。
個人情報と児童扶養手当の証明写真をアップロードしていただくと、QRコードの管理番号とオートロックアプリをお送りします。
この仕組みにより、24時間いつでも支援を受けることが可能です。
週に1回の利用制限はありますが、食料品や日用品を自由にお持ち帰りいただけます。
また、不定期でクリスマス会や博物館見学会などのイベントも開催しています。
広域な支援展開と充実した支援内容
ー「しまね子ども支援プロジェクト」の強みについてお聞かせください。
樋口氏:当プロジェクトの強みは、出雲市を拠点としながらも、松江市、大田市、雲南市、江津市という5つの自治体を跨いでサービスを提供できることです。
また、全国から視察に来られる方々からも、当社のコミュニティフリッジは食料の充実度が高いと評価をいただいています。
これは、人口が全国で下から2番目に少ない島根県において、個人や企業の方々から多大なご協力をいただいているからこそ実現できています。
持続可能な支援を目指して
ー活動をされる上で大切にしていることはどのようなことでしょうか。
樋口氏:運営費のほとんどを寄付に頼っているため、できる限り節約しながら活動を継続できるよう心がけています。
また、私とスタッフ1名で交代制を取り、朝5時から夜まで商品の補充や管理を徹底しています。
利用者の方が来られた時に商品が品切れという事態を避けるため、細やかな気配りを心がけています。
包括的な支援体制の構築へ
ー今後の展望や取り組んでいきたいことについて教えてください。
樋口氏:今後の課題として、まず安定した運営基盤の確立があります。
現在、月額1000円以上のマンスリー会員が76名おられますが、目標の200名達成に向けて募集を継続しています。
また、今年6月に改正された法律により、行政との連携強化が期待されています。
行政からの運営費支援が実現すれば、寄付金を食料購入やフードバンク以外の活動に充てることができます。
最終的な目標は、食料支援という対処療法的な支援を超えて、子どもたちの体験活動の充実や、保護者の所得向上支援など、より根本的な解決を目指しています。
支援を必要とする方へのメッセージ
樋口:支援を必要とされている島根県在住の方々には、週1回ではありますが、無料で食料をお持ち帰りいただけますので、ぜひお気軽にご登録ください。
支援をお考えの方々へは、日本のひとり親家庭の貧困率がOECD加盟38カ国中最下位という現状をご理解いただき、社会の一員としてのご支援をお願いできれば幸いです。
これは個人の問題ではなく、社会構造の課題であり、皆様のお力添えが必要です。