NPO法人「キンダーフィルムフェスト・きょうと」が紡ぐ、子どもたちの国際交流と創造力

子どもたちが主体となって運営する、日本でも珍しい国際映画祭。映画を通じて世界の文化や価値観に触れ、創造力を育む場として30年以上の歴史を持つNPO法人「キンダーフィルムフェスト・きょうと」。小学生から高校生までの子どもたちが、企画から運営まで携わる独自の取り組みの魅力に迫ります。

子どもたちが主役の映画祭運営 ―独自の視点で創り上げる国際交流の場

ー御社の概要について具体的に教えていただけますか?

藤原:私たちはNPO法人「キンダーフィルムフェスト・きょうと」として、子どもたちに映画を通じて豊かな体験をしてもらいたいという思いで活動しています。主な活動として、子どもたちと一緒に映画を観たり、作ったりすることはもちろん、映画祭の運営自体を子どもたちが中心となって行っています。

映画祭の運営に携わる「子どもスタッフ」は、小学4年生から高校3年生までの約25名で構成されています。毎月1回のペースで子どもスタッフ会議を開催し、子どもたち自身が主体となって映画祭の企画を考え、実行に移しています。8月に京都文化博物館フィルムシアターで3日間開催される京都国際子ども映画祭は、幼稚園児から高校生まで、幅広い年齢層の子どもたちが楽しめるプログラムを提供しています。

世界の子どもたちの暮らしを知る機会を提供 ―映画を通じた異文化理解の促進

ー映画祭では具体的にどのような内容を子どもたちが担当されているのでしょうか?

藤原:今年で31回目を迎える京都国際子ども映画祭では、世界各国の子どもが主人公の映画を中心に、長編3本と短編7、8本を上映しています。毎日3本のプログラムを通じて、世界中の子どもたちの生活や文化、直面している課題などを描いた作品を紹介しています。

特筆すべきは、子ども審査員による作品選考です。長編・短編それぞれでグランプリを決定する重要な役割を担っており、子どもたちは映画を通じて深い議論を交わし、異なる価値観や文化的背景について理解を深めています。

また、子どもスタッフたちは映画祭のオープニングで上映する短編映画を企画から撮影まで自分たちで行います。カメラワークや演出も含め、映画制作の実践的な経験を積むことができます。このように、映画を「観る」「作る」「評価する」という多角的な視点から、子どもたちの創造性と国際感覚を育んでいます。

子どもたちの自主性を重視した運営体制 ―対等な立場での学び合い

ー子どもたちと接する際に、スタッフの皆様が特に意識されていることはありますか?

藤原:子どもスタッフ会議の中心となるのは、中学3年生の男子と高校1年生の女子2名のリーダーです。彼らが他の子どもたちの意見を取りまとめ、映画祭の方向性を決める重要な役割を担っています。

大人のスタッフは1、2名が同席していますが、過度な介入は控え、必要最小限のアドバイスに留めています。これは、学校や習い事とは異なる、より自由な学びの場を目指しているからです。子どもたち一人一人を一個人として尊重し、対等な立場で意見を交わすことで、自主性と責任感を育んでいます。

この環境づくりが功を奏し、5、6年という長期にわたって活動を継続する子どもたちも多く、世代を超えた学び合いの場として機能しています。

グローバルな文化交流の拡大を目指して ―コロナ禍を乗り越え、新たな挑戦へ

ー今後の展望について教えていただけますか?

藤原:「キンダーフィルムフェスト・きょうと」として、私たちは常に世界とのつながりを大切にしています。スペイン、カナダ、アジア圏など、世界各国から選りすぐりの作品を上映し、可能な限り監督を招いてのトークセッションも実施しています。

コロナ禍では対面での交流が制限され、オンラインでの対話を中心に活動を継続してきました。しかし、昨年はチェコからアニメーション監督をお招きして直接交流する機会を設けることができ、子どもたちにとって貴重な異文化体験となりました。

今後は、ドイツのベルリン国際映画祭の子ども審査員との交流など、より一層の国際交流の機会を増やしていきたいと考えています。同世代の子どもたちが映画を通じて意見を交わし、互いの文化や価値観を理解し合える場を創出することが目標です。

映画は世界を知る窓 ―より多くの子どもたちに開かれた映画祭を目指して

ー最後に、読者の方々へメッセージをお願いします。

藤原:「キンダーフィルムフェスト・きょうと」は、30年以上の歴史を持ちながら、京都の方でもまだあまり知られていない存在です。活動を知った方からは「子どもの頃から参加したかった」というお声をよく頂きます。

私たちは、映画は世界を知る窓であると考えています。子どもの頃から様々な映画に触れることで、視野を広げ、多様な価値観を受け入れる力を育んでほしいと願っています。そのため、18歳未満は500円という手頃な価格で映画を観ることができるよう設定しています。

また、映画制作ワークショップや映画鑑賞ワークショップ、映画の吹き替えワークショップなど、映画に親しむ様々な機会を随時提供しています。映画作りに興味がある子も、単に映画を観るのが好きな子も大歓迎です。InstagramやFacebookで最新情報を発信していますので、ぜひチェックしていただき、気軽に参加していただければと思います。

子どもスタッフとして参加すれば、映画祭の企画・運営という貴重な経験を積むことができ、まさに習い事のように継続的に活動することも可能です。世界の映画文化に触れ、創造力を育み、かけがえのない仲間との出会いが待っています。ぜひ一度、「キンダーフィルムフェスト・きょうと」の扉を叩いてみてください。