富士山を博物館に! ー 自然と人をつなぐ富士山アウトドアミュージアムの軌跡

富士山の自然をまるごと博物館に見立てて活動を展開する「富士山アウトドアミュージアム」。2011年の設立以来、子どもたちへの教育活動から野生動物の保護まで、幅広い取り組みを続けています。創設者の舟津さんが大学で学んだ博物館学の知識を活かし、富士山の価値を守り、伝える活動は、今では多くの人々を巻き込む大きな輪となっています。自然と人との新しい関わり方を提案し続ける舟津さんに、これまでの歩みと今後の展望についてインタビューしました!

富士山をまるごと博物館に – 活動のビジョンと概要

ー富士山アウトドアミュージアム様の活動内容について教えてください。

舟津さん:名前の通り博物館という形で活動をしていますが、実際の建物としての博物館を運営しているわけではなく、富士山そのものを建物に見立て、博物館の機能を活用して何かできないかと考え、立ち上げた団体です。

博物館の基本的な機能である「収集・調査・保存・展示」になぞらえて、富士山で様々なものを見つけ、丁寧に調べ、大切に守り続けながら、富士山を存分に楽しもうという方向性で活動しています。

参加対象は子供から大人まで幅広く受け入れています。例えば「富士山の森が小学校」というプログラムは小学生をメインターゲットとしており、卒業後も中学生や高校生になってサブスタッフとして協力してもらうなど、継続性を持たせています。また、富士山の清掃活動なども実施しており、これは年齢を問わず、企業団体の方々にもご参加いただいています。

大学での学びを活かした設立

ー設立の経緯やきっかけについて教えてください

舟津さん:私は大学で博物館学を学んでいたのですが、その知識を活かせないかと考えたところ、富士山全体を一つの博物館として捉えるアイデアが思い浮かびました。博物館には「収集・調査・保存・展示」という基本的な機能があり、これを富士山という自然の中で実践できないかと考えたのです。

当初は手探りの状態でしたが、2014年から本格的な活動を開始。子供たちへの教育活動として「富士山の森が小学校」プログラムを立ち上げ、さらに野生動物の保護活動や清掃活動など、活動の幅を徐々に広げていきました。企業や団体とも連携を深め、富士山の自然と歴史を守り、伝えていく取り組みを続けています。

富士山ならではの魅力 – 垂直分布がもたらす生態系の多様性

ー富士山の魅力について教えてください。

舟津さん:富士山の特徴的な点は、海抜0メートルから標高3,776メートルまでの高低差があることです。これにより、地球の緯度による生態系の変化のように、標高による生物の垂直分布を観察することができます。麓に住む生き物と山頂付近に生息するコケや植物は、全く異なる様相を見せます。

興味深いことに、富士山固有の生物は実はほぼいません。しかし裏を返せば日本各地に生息する様々な生物を1つの山で観察できるということでもあります。また、世界遺産に登録された歴史的価値もあり、歴史博物館としての要素も併せ持っています。

一方で、地域住民、特に山麓に住む子供たちや大人たちが、この魅力に気づいていないという課題もあります。そのため私たちは、地域の人々が参加でき、富士山の魅力を体験しながら、その保全に貢献できるようなプログラムを展開していきたいと考えています。

多彩なプログラムと季節に応じた活動展開

ー「富士山の森が小学校」プロジェクトの具体的な内容を教えてください。

舟津さん:このプロジェクトでは、季節や月ごとに異なるプログラムを展開しています。例えば単純に森の中で遊ぶ日もあれば、生き物の観察をしたり、登山道の整備のために草刈りをしたり。夏には毎年恒例の富士登山プログラムがあり、それに向けた練習登山も実施します。

また、地域の特色を活かし、山梨県の郷土料理である「ほうとう」を子供たちと一緒に作って味わうなど、食文化も含めた体験型の学習も行っています。富士山から得られる様々な恵みを、小学校の授業に見立てて楽しく学ぶという形で進めています。

野生動物との共生を目指して – 10年間のデータ収集と今後の展望

ー今後の展望について教えてください。

舟津さん:大きく2つの展望があります。1つは、富士山の自然や歴史に関わり続けてくれる人材の育成です。これまで10年間で関わってきた子供たちが成長し、中には高校生や大学生、社会人になった方々もいますが、今後もより多くの子供たちに関わってもらい、富士山や地域の自然、歴史に関わり続けてくれる人材を育てていきたいと考えています。

もう1つは、2014年から取り組んでいる野生動物の交通事故対策です。10年間の調査で確認できただけでも1,268件の事故が発生しており、実際にはその3、4倍の事故が起きていると推測されます。今後、自動運転化の進展や観光客のレンタカー利用増加に伴い、野生動物との接触機会は増えると予想されます。

この課題に対して、3つのアプローチを考えています。1つは自動運転技術による自動ブレーキシステムの活用、2つ目は運転免許取得時からの啓発活動、そして3つ目が収集したデータを活用したリアルタイムな事故発生予測システムの開発です。カーナビやGoogleマップとの連携など、具体的な活用方法を模索しています。

日本一の山から世界へ – 参加と支援のお願い

ー最後に、プロジェクトへの参加や支援を考えている方へメッセージをお願いします。

舟津さん:富士山は名実ともに日本一の山です。その魅力を存分に楽しんでいただきたいですし、映像などで富士山を目にする機会があれば、その素晴らしさに思いを馳せていただければと思います。私たちの活動への参加やご支援を考えてくださる方々には、日本一の山での取り組みは、日本中、さらには世界中に展開できるパイロットプログラムになり得ると考えています。

活動の詳細はFacebookで随時更新しており、一度でも参加してくださった方にはLINEグループでも情報を共有しています。建物としての博物館はありませんが、メールやお電話でのお問い合わせを随時受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。