震災からの心の復興を経て〜日本人としての誇りを取り戻す全国的な学びの場へ「NPO法人元気の素カンパニー以和貴」

東日本大震災後の被災者支援からスタートし、現在は日本人としての誇りを取り戻す活動を展開するNPO法人「元気の素カンパニー以和貴」。

コロナ禍をきっかけにオンラインでの活動を本格化させ、世代や地域を超えた新たなコミュニティづくりに取り組んでいます。

オンライン学習会には海外在住の日本人も参加するなど、心の復興の輪が被災地から世界に向け広がっていく活動について、植木春実さんにお話を伺いました。

震災後の地域コミュニティの分断を癒すために

ー「元気の素カンパニー以和貴」の活動を始めたきっかけについて教えてください。

植木さん:いわき市では震災後、様々な地域からの移住者が増え、共に暮らすことになりました。

しかし、地域ごとの生活習慣の違いが軋轢を生んでいたところがあり、行政は地域ごとに支援ができても、地域を超えた支援は難しい状況だと感じました。

いわき市には様々な地域の方が一度に入ってきて暮らすことになりましたが、話し合いの場もなく、心が沈んでいる方も多くいらっしゃいました。

また、原発事故による目に見えない不安を抱える方々も多くいて、『大丈夫です』としか言ってくれないメディアに、地元では『何が、どう大丈夫なのか、何を根拠に大丈夫なのか、どこをどうしたら大丈夫なのか』という情報を求める声が挙がっていました。

地元は、地震・津波・原発事故の三重苦の被害にあい、正に「情報が命を左右する」という状況が続いていました。

このような状況を受けて、正確な情報を届けたい、心がホッと一息つける場を提供したいという思いから、誰でも参加できる学習会や車座の会を開催。

生涯学習を通じた心の復興を目指し、NPOを設立。

これまで、延6000人以上の方に情報と笑顔をお届けしてきました。

多彩な活動で心の復興を支援

ーどういった方を対象にどのような支援を行っていらっしゃいますか?

植木さん:設立後の約7年間、福島県いわき市を拠点に多様な活動を展開してきました。

広島の原爆被爆者を診てこられた肥田舜太郎医師を招いての放射能に関する講演会や映画上映会、体内記憶について研究する産婦人科医の池川明氏の講演会などを実施。

また、スウェーデン社会研究所の所長を招いて福祉や再生可能エネルギーについて学んだり、書道教室やお茶会、お料理教室などを開催したりと、幅広い活動を行いました。

心の復興に繋がることであれば、活動内容は限定せずに取り組み、小さな子どもからお年寄りまで、地域や世代を越えた、誰でも参加できる場づくりを心がけ、活動してきました。

コロナ禍を機に活動の幅を全国へ

植木さん:2020年からコロナ禍で一時活動を休止した後、オンラインでの活動をスタートさせました。

震災時に首都圏から温かい支援をいただいたお返しとして、東京でのイベントも行い、その後、オンラインが普及したことで、今度は被災地にとらわれず、日本人の心を元気づけるような活動ができないかと考えるようになりました。

日本人としての誇りを取り戻す学習会の意義

ー具体的な活動内容と大切にしていることをお聞かせください。

植木さん:現在の主な活動は、月一度、日本人としての誇りを持てるような歴史の学習会を開催しています。

国立青少年教育振興機構の調査によると、日本の高校生の72.5%が「自分はダメな人間だと思うことがある」と回答し、中国の56%、米国の45%、韓国の35%と比べて突出して高い数値を示しています。

日本人は謙虚とも言えますが、自己肯定感が低い傾向にあります。

海外では自国の歴史や文化をしっかりと学びますが、日本ではそれが抜け落ちている部分があります。

私たち大人が先に学び、自信を持つことが大切だと考えています。

現在は、北海道から九州と日本各地からのみならず、イギリスやアメリカなど海外在住の方々も参加くださっています。

また、ご夫婦やお子さんと参加されたり、海外在住のお孫さんに学習会で学んだことを伝えているという方もいらっしゃいます。

仲間で予習会を始めたとのお声もいただいたり、自分が日本人としての自信や誇りを取り戻すだけでなく、家族や仲間への広がりも出てきています。

誰もが安心して意見を言える場づくり

植木さん:「元気の素カンパニー以和貴」の活動の特徴は、年齢や地域を問わず、誰でも参加できる開かれた場であることです。

赤ちゃんから80代のお年寄りまで、これまでの心の復興イベントに、幅広い世代が参加しています。

日本人は聞くことは得意ですが、自分から発信するのが苦手な方が多い。

そこで、必ず参加者が感じたことを共有できる場を設けています。

批判ではなく、自分の意見を安心して言える場を大切にしています。

これからの展望:自信と誇りを取り戻す生涯学習の和

ー今後取り組んでいきたいことについてお聞かせください。

植木さん:来年度は、学校教育では詳しく取り上げられない超近現代史に焦点を当てた学習会を予定しています。

なぜ第二次世界大戦をしなければならなかったのか、幕末・明治維新から海外と関わるようになって日本はどのように変化してきたのかなど、今を生きる私たちの状況にダイレクトに繋がる歴史を学んでいきたいと考えています。

また、コロナも落ち着いてきたので、リアルな場での人と人との繋がりを大切にしたイベントも企画しています。

2月16日には弥栄(いやさか)の会と題して、地域の神社の大広間で和太鼓による和の心を体感するイベントとお話会を開催予定です。

違う年代の方々が交流し、一体感を体験できる場を作っていきたいと考えています。

「和の心」を次世代へ

ーこの記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。

植木さん:震災時、日本人が支援物資の配給に整然と並ぶ姿は、海外から絶賛されました。

これは日本人が災害大国で育んできた助け合いの精神であり、和の心の表れです。

福島県いわき市の『いわき』という音と、聖徳太子の十七条憲法の第一条『和をもって貴しとなす』にあやかり、当NPOの名前も『以和貴』という漢字を使用しています。

日本人は素敵な方が多いので、自信を持って生きていただきたい。

不景気や震災など暗いニュースが多い中でも、心豊かに生きていける社会であってほしい。

大人が自信と誇りをもって生きられたら、その背中を見て育つ子供も自信と誇りをもって生きられる。

先日小中高生の自殺者が過去最多という結果が発表されましたが、子供たちにも、日本は素晴らしい国であるという誇りと、未来に希望をもって生きてもらいたい。

その為にも、「情報は命を左右する」という認識を持ち、正しい情報を入手し、自虐史観にとらわれない自分のルーツを全ての日本人に知ってもらいたいです。

当NPOの活動を通じて、少しでも心が明るくなったり、家庭での会話が増えたり、自分や自国に自信を持てる方が増えていただけたら嬉しく思います。