アイサーチジャパンは、イルカ・クジラと自然の素晴らしさや大切さを伝える団体です。幼児から高齢者まで幅広い世代に、本物に触れる体験を通して環境問題への関心を育んでいます。活動の特徴や今後の展望について、代表の想いを交えて詳しくお話を伺いました。地球の未来を考えるヒントが詰まったインタビューをお届けします。

どのような活動をされているのかを教えてください。
私たちは、イルカやクジラを入り口として、彼らの生態や海の環境の大切さ、さらには海と森、町や陸のつながりについて、多くの方に伝える活動を行っている団体です。海に暮らすイルカ・クジラの生態や、『水でつながっている』という概念を学びながら、人間と自然の関係を理解し、海の未来のために何ができるかを考えるきっかけ作りをしています。
保育園から小中学校、高校や大学で特別授業として「海の環境学習教室」を開催したり、ビーチクリーンやリバークリーンの活動を行なったり、実践的な環境意識の向上を図っています。
参加される方の年齢層は非常に幅広いです。幼稚園や保育園の子どもたちを対象としたプログラムもあれば、未就園児の2歳くらいの子どもたちが親子で参加できるイベントもあります。さらに、公園でのイベントでは、通りがかった高齢の方々も足を止めてお話を聞いてくださることが多く、まさに全年齢対象の活動といえます。
環境問題に関心を持つのは、子どもたちだけではありません。企業のCSR活動の一環として、社会人向けのセミナーや研修会も開催しており、より広範な層に対して環境教育を行っています。
この活動を始められたきっかけについて教えてください。
団体としては1991年に設立されました。私は現在3代目の代表を務めていますが、「イルカやクジラを通じて自然の素晴らしさや大切さを伝える」という理念は設立当初から変わっていません。

私自身の話をすると、物心がついたときからイルカが大好きでした。幼稚園の頃から「イルカのために地球を大切にしたい」と思い、6歳の頃から一人でごみ拾いをしていました。子どもながらに環境問題に強い関心を持ち、どうしたらイルカやクジラたちの暮らす海を大切にできるのかを考え、小学校では学級新聞に地球温暖化や絶滅危惧種のことを書いたり、その後も環境問題に取り組むチームを結成させたりして、自分にできることを実践し続けてきました。
その後、大学生のときにICERC Japanの活動を知り、「やっていることが自分の想いと一緒だ!」と強く共感し、すぐに参加しました。理念に深く共鳴し、現在は団体の代表として活動しています。
ICERC Japanならではの強みや特徴を教えてください。
環境問題を伝える団体は数多くありますが、私たちは「本物に触れる体験」を大切にしています。
たとえば、イルカやクジラの本物の骨に触れることができるワークショップを開催したり、実際に海に行ってビーチクリーンをしたり、イルカやクジラの観察ツアーを企画したりしています。
世に出ている環境問題を呼びかけるメッセージは「ゴミを減らしましょう」「節電しましょう」といったストレートなものが多いですが私たちは頭で理解させることよりもまず「心を動かす」「心に響かせる」ことが重要だと考えています。実際にイルカやクジラの不思議さや魅力に触れ、「もっと知りたい」「守りたい」という気持ちが芽生えてから、その気持ちと共に、環境問題について考えてもらうようなアプローチを行なっています。

今後の展開について教えてください。
私たちの団体名は「ICERC(International Cetacean Education Research Centre」という名称の頭文字をとった名前です。団体の名前にある通り、「教育」と「研究」の2つの柱をより強化していきたいと考えています。
教育面では、より多くの学校や施設と連携し、出張授業の機会を増やしていきたいと思っています。さらに、オンラインでの学習プログラムを充実させ、遠方の方にも学びの機会を提供したいと考えています。
研究面では、2024年度から瀬戸内海に生息するスナメリ(小型のイルカ)の分布調査を通して海の環境を知る「スナメリネットワーク」というプロジェクトを始めました。市民の皆さんをはじめ、さまざまな方とのつながりを広げ、調査を強化していきたいと思っているところです。
この記事を読んでいる方へメッセージをお願いいたします。
私たちが伝えたいメッセージのひとつに「All as One(すべてはひとつにつながっている)」という言葉があります。
私たちが住む町と海はつながっています。たとえば、水道の蛇口をひねると、その水は最終的にイルカやクジラが暮らす海へと流れていきます。この地球というひとつの惑星の中で、私たちはみんな同じ水をわかちあい、大きなつながりの中で生きているのです。
だからこそ、海の未来のために、町でできることがたくさんあります。1人の力は小さくても、みんなで集まれば大きな力となります。日常の中でイルカ・クジラや海を想い、小さなことから小さなことから行動に移して、一緒に未来を作っていけたら嬉しいです!
