「英語はお勉強じゃない」その衝撃発言の真意とは?Apple Talk(アップルトーク)代表が語る革新的英語教養論

英語教育の世界に新しい風を吹き込む革新的なアプローチが注目を集めています。その中心にいるのが、Apple Talk代表の蔦澤 亜希氏です。従来の英語教育の常識を覆す「多読」メソッドや、AIを活用した最新の学習法など、蔦澤氏の取り組みは多岐にわたります。

今回のインタビューでは、Apple Talkの設立経緯から、独自の教育哲学、そして未来の英語教育のビジョンまで、幅広いテーマについて深く掘り下げました。「褒めない」「教えない」という一見逆説的な指導方針の真意や、AI時代における英語学習の重要性など、蔦澤氏の洞察に満ちた言葉には、英語教育の新たな可能性が詰まっています。

この記事を通じて、単なる語学スキルの習得を超えた、真の意味での英語力とは何かを考える機会となれば幸いです。さあ、英語教育の革命児、蔦澤氏の世界に飛び込んでみましょう。

Apple Talkの独自性:「多読」を中心とした革新的な英語教育

ー まず、Apple Talkのサービス概要や対象について教えていただけますか?

蔦澤 亜希代表Apple Talkは、小学生から大人まで幅広い年齢層を対象としたコースを用意しています。2022年頃からオンラインでの指導も始めましたが、それまでは主に対面での指導を行ってきました。

当塾の特徴は、「多読」を中心とした指導方法です。「多読」とは、一切日本語を介さずに英語を英語のまま処理する能力を育てる方法です。小学3、4年生くらいから非常に簡単な本を読み始め、徐々にレベルを上げていきます。

この方法の素晴らしいところは、リスニング力の向上にも大きく貢献することです。実際、当塾の生徒は英検のリスニング部門で特に高い成績を収めています。英語を英語のまま処理する能力が身につくため、聞き取る力も自然と向上するのです。

また、最近では不登校の生徒やコロナの影響で外出を控えている生徒に対応するため、オンライン授業も積極的に取り入れています。私自身も英語放送の仕事をしていたこともあり、オンラインでの指導にも力を入れています。

「多読」の魅力:従来の英語学習法との違い

ー 「多読」についてくわしく教えてください。従来の英語学習法との違いは何でしょうか?

蔦澤:従来の英語学習法では、例えば「come」という単語を「来る」と日本語に訳して理解する方法が一般的でした。しかし、「多読」では日本語への翻訳を一切行いません。

具体的には、非常に簡単な英文と絵、そして音声を組み合わせて学習を進めます。例えば、「There is one bed.」という文があれば、ベッドの絵と共に提示します。このように、文字、絵、音声の3つを融合させながら学習を進めていくのです。

この方法を継続することで、日本語を介さずに英語を理解し、読み、聞き取る能力が自然と身につきます。特にリスニング力の向上は顕著で、英語の語順のまま処理できるようになるため、聞き取りのスピードも格段に上がります。

実は、「多読」という方法はまだあまり知られていません。英語教育に携わる方々の中でも、「多読って何?」と聞かれることが多いのが現状です。しかし、この方法の効果は非常に高く、特にリーディングとリスニング力の向上に大きな成果を上げています。

Apple Talkの設立経緯:子どもの一言から始まった英語教育の旅

ー Apple Talk設立のきっかけについて教えてください。

蔦澤:設立のきっかけは、実は私の娘が4歳の時に「英語をやりたい」と言い出したことでした。当時、私は翻訳業に従事していましたが、娘の要望に応えるため、地元の英語教室を探しました。しかし、本を使った指導をしている教室が見つからなかったのです。

私自身が帰国子女で、本を通じて英語を学んできた経験があったため、絵本を使わない英語教育に違和感を覚えました。そこで、「自分で作ればいい」と思い立ち、教室を始めることにしたのです。

最初は娘のためだけの教室のつもりでしたが、近所の子どもたちも集まってきて、少しずつ規模が大きくなっていきました。しかし、2年ほど経っても生徒たちの英語力が思うように伸びないことに悩んでいました。

そんな時、SEGという教室の「多読教室」の研修に参加する機会があり、そこで初めて「多読」という方法を知りました。これこそが自分が求めていた方法だと確信し、2006年に教室を「多読教室」に完全移行しました。大量の英語の本を購入し、教室を本でいっぱいにしていったのです。

Apple Talkの独自性:「褒めない」という斬新かつ革新的アプローチ

ー 他の英語スクールにはない特徴や、アピールポイントを教えてください。

蔦澤Apple Talkの最大の特徴は、「褒めない」「教えない」というアプローチです(笑)。これは一般的な他の英語教育サービスとは大きく異なる点だと思います。

Apple Talkでは、子どもたちが読んだ本や音読の内容は毎日把握し、細かくフォローしています。しかし、それを「指導」とは呼びません。子どもたち自身が独立した学習者になれるよう、素材選びやペース配分も自分たちで決められるようにサポートしています。

例えば、英検の結果に対しても、点数の良し悪しではなく、子ども自身がどう感じているかを重視します。「良かったの?」と聞き、子どもの反応に応じて対話を進めます。これは、子どもたちが自分で考え、判断する力を養うためです。

また、「褒めない」というのは、承認欲求に依存しない学習態度を育てるためです。褒められるために頑張るのではなく、自分自身の成長のために学ぶという姿勢を大切にしています。

具体的には、90点を取った生徒に対しても、その点数が良かったのか悪かったのかを判断せず、「あなたにとってどうだった?」と問いかけます。60点でも「すごいじゃん」と言うこともあれば、98点でも落ち込んでいる生徒もいます。重要なのは、生徒自身の感じ方であり、外部からの評価ではないのです。褒めるということは、上の者が下の者に対して行う行為です。そのため、達成したことに対しては「すごいね」とは言いますが、「よく出来たね」とは言いません。

なぜなら、褒めることで逆に子どもたちにプレッシャーを与えてしまう可能性があるからです。例えば、10人のクラスで1人を褒めれば、残りの9人は褒められないことになります。これは避けたいと考えています。

この方針は、長年の経験から生まれたものです。褒めることが逆効果になるケースを多く見てきました。特に子どもたちの場合、褒められるために頑張ってしまい、本来の学習の目的を見失うことがあります。そのため、一つ一つの達成を過度に褒めるのではなく、継続的な努力を重視する姿勢を大切にしています。

Apple Talkの「教えない」指導方針:対等な関係性と自主性の重視

ー 「教えない」というアプローチはあまり聞いたことがありません。くわしく教えていただけますか?

蔦澤:もちろん、英語を全く教えないという意味では決してありません。私たちは、「(上から)教えない」ということを心がけています。生徒との目線を同じレベルに保ち「先生だから指導する」ではなく、対等な関係性を築くことが大事だと考えています。

例えば、宿題を忘れた生徒に対しても、叱ったりはしません。代わりに「どうしたいの?」と聞き、生徒自身に考えさせます。「来週持ってきます」や「後で送ります」という答えが返ってくれば、「じゃあ、そうしてください」と応じます。

やる気がない生徒に対しても同様のアプローチを取ります。「正直に言っていいよ」と言い、生徒の気持ちを受け止めます。そして「どうするの?」と問いかけ、生徒自身に決断させます。

このように、生徒自身が自分で決めることを重視しています。なぜなら、自分で決めないと、本当の意味での成長はないと考えているからです。

さらに、英検の合格に対しても特別な祝福はしません。「受かっても落ちても、祝うな」と保護者の方々にもお願いしています(笑)。なぜなら、結果よりも過程が大切だと考えているからです。頑張って受かったことは、もちろん素晴らしいことです。一生懸命頑張って落ちたのであれば、それはそれで次につながります。しかし、頑張らずに受かったことには、特に意味がないと考えています。

この方針は、単に英語を学ぶだけでなく、生徒たちが自立した学習者になることを目指しているからです。自分で考え、判断し、行動する力を育てることが、長期的には最も重要だと信じています。

英語教育の未来を見据えて:識字率向上への取り組み

ー 今の英語教育の課題は、どのようなものだとお考えですか?

蔦澤:現在、日本の英語教育において大きな課題となっているのが、識字率の低下です。これは英語に限らず、日本語でも同様の問題が起きています。

特にコロナ禍以降、学校でのタブレット使用が増え、手で文字を書く機会が減ったことが一因となっています。その結果、多くの本を読んでも「なんとなく」しか読めない子どもたちが増えているのです。

この問題に対処するため、私たちは「サイエンス・オブ・リーディング」という方法を取り入れています。これは、文字と音の関係を体系的に教える方法で、アメリカやカナダでは既に広く採用されています。

例えば、「come」という単語を例に取ると、従来の方法では単にこの単語を丸暗記させていました。しかし、「サイエンス・オブ・リーディング」では、「c」「o」「m」「e」それぞれの文字が持つ音を教え、それらを組み合わせて単語を読む方法を学びます。

これにより、未知の単語でも読めるようになり、長期的には読解力や語彙力の向上につながります。

Apple Talkの未来:AI時代に対応した実践的英語教育

ー 今後、さらに強化していきたい点や新しく取り組みたいことがあれば教えてください。

蔦澤今後、特に力を入れていきたいのは「実用英語」の指導です。2021年に大学入試の共通テストが導入され、英語のテストが大きく変わりました。従来の受験英語から実用英語へのシフトが起こっているのです。

特に注目しているのは、アカデミック英語です。これは従来の英検などでは習得できない、英語の論理性を重視した英語力です。この論理性が分からないがために、読めない、聞けない、書けないという問題が生じています。そのため、子どもたちと共に英語の論理性を徹底的に学んでいきたいと考えています。

また、AIの台頭にも注目しています。AIを隠すのではなく、子どもたちと一緒にAIを使いこなし、英語力を向上させる方法を探求していきたいと思います。

AIを効果的に使用するには、英語力が重要であることも分かりました。ChatGPTは日本語が入力されると言語モデルが変わってしまうため、最も効果的に使用するには全て英語で入力する必要があります。これは、英語力の重要性を再認識させる発見でした。

このような知識を子どもたちと共有し、AIを友達のように扱いながら、どのように自分の英語力を向上させていけるかを一緒に探求していきたいと考えています。

さらに、英語とお金の知識、そしてAIの3つを組み合わせた新しいクラスの開設も計画しています。これは、将来的に自立して生きていく力を育むためです。企業に勤めるだけでなく、自分で稼ぐ力を身につけるきっかけを作りたいと考えています。

最近、ある経済学者が「3年後には1人で100億ドルを稼げる時代が来る」と予測しています。これは、従来の雇用形態が大きく変わる可能性を示唆しています。そのような時代に備えて、子どもたちが自分の足で立ち、自分で考え、行動できる力を育てることが重要だと考えています。

英語学習へのメッセージ:豊かさを生み出す教養としての英語

ー 最後に、Apple Talkに入会したい方へのメッセージをお願いします!

蔦澤:英語は、世間では非常に重要なものとして扱われていますが、私たちはそれほど重要だとは考えていません。大学入試や就職で必要とされる英語力は、実際にはそれほど高くないことが多いからです。

例えば、大学入試で重要視される英語も、入学後はほとんど使わないケースが多いですし、企業でTOEICのスコアを求められても、実際には英語を使わない仕事も多くあります。私の知り合いには、英語をほとんど使わずに億単位の収入を得ている起業家もいます。

しかし、英語が話せることで、世界は一気に広がります。そして、その広がりは考え方自体を変えます。翻訳機があれば、基本的かつ簡易的なコミュニケーションは取れますが、本当の意味での友達は作れません。

だからこそ、英語を「必要だから」学ぶのではなく、自分の中の豊かさを増すきっかけとして捉えてほしいと思います。小さな進歩でも構いません。昨日より1ミリでも上達していれば十分です。

英語学習を教養として身につけ、学びをやめなければ必ず上達します。長い目で見て、継続することの大切さを感じてもらえればと思います。

特に、「この時期にやらなければいけない」とか「後で困るから」といった強制的な理由ではなく、自分の成長のための一つの手段として英語を捉えてほしいです。そうすれば、英語学習はより楽しく、そして効果的なものになるでしょう。