特別養子縁組の支援を15年以上続けるNPO法人Babyポケット。望まない妊娠に悩む方と子どもを望む方、双方に寄り添い続ける活動を通じて、新しい家族の形を支援している同団体の取り組みについて、実績や支援内容、今後の展望まで詳しく伺いました。
特別養子縁組の架け橋として15年、600組以上の家族を支援
ー特別養子縁組の支援という重要な役割を担われていますが、具体的にどのような活動をされているのでしょうか?
竹内:私たちは特別養子縁組の斡旋団体として活動しています。望まない妊娠をされた方からのご相談を受け、育てることが難しい状況にある方と、不妊治療を経ても子どもに恵まれない方々との橋渡しをする役割を担っています。活動期間は約15年になり、これまでに600件以上の特別養子縁組の支援実績があります。年間では40~50件ほどの支援を行っています。
ー団体設立の経緯について教えていただけますでしょうか?
竹内:当団体は代表の岡田が、様々な経験を通じて、望まない妊娠で悩む方々や、子どもを望みながらも授かることができない方々の存在を知り、そうした方々のために何かできることはないかという思いから立ち上げました。
▽Babyぽけっととして取り組んでいる事業内容
コロナ禍でも変わらない支援ニーズと新たな課題
ーコロナ禍における活動への影響はいかがでしたか?
竹内:望まない妊娠に関する相談件数は、コロナ禍でも全く変化がありませんでした。この4、5年で女性の非正規雇用の問題など、様々な社会情勢の変化がありましたが、相談は途切れることなく続いています。一方で、養親希望者からの相談は減少傾向にあります。社会情勢の変化が、両者に異なる影響を与えているという実感があります。
▽Babyぽけっとのこれまでの沿革
生みの親と養親、異なるニーズへの柔軟な支援
ー二つの異なる立場の方々を支援する上で、特に意識されていることはありますか?
竹内:支援の方向性が全く異なるため、バランスを取りながら活動を進めることを心がけています。生みの親の方々は、住居や仕事がないなど、現在の生活に困窮されているケースが多く、生活支援が必要となります。一方、養親希望の方々に対しては、養子を託す支援だけでなく、地域ごとの交流会を通じて継続的なサポートを行っています。
相談から支援までの丁寧なプロセス
ー実際の相談から支援までの流れを教えていただけますか?
竹内:まず、ホームページに設置しているフリーダイヤルや相談フォームを通じてご連絡をいただきます。全国対応で活動しているため、様々な地域からご相談があります。特に妊娠・出産に関しては、緊急性の高いケースもあり、その場合は即座に適切な医療機関への受診を支援することもあります。時間的な余裕がある場合は、スタッフが直接お会いしてお話を伺い、状況に応じた支援プランを考えていきます。
ー養親希望者とのネットワークづくりについてはいかがでしょうか?
竹内:養親希望者の方々には、まず面接や研修を受けていただき、登録という形を取っています。研修過程では、地域ごとのブロックに分かれて交流会を実施し、すでに養子を迎えた先輩養親との関係づくりも行っています。特別養子縁組は地域社会ではマイノリティとなりがちなため、同じ経験を持つ仲間との繋がりを大切にしています。
支援における重要な心構えと配慮
ー支援を行う上で特に気を付けていることはありますか?
竹内:相談者の方々の多くは、社会的に見れば「もっと早く対処できたのではないか」と思われるような状況にあることも少なくありません。しかし、私たちはそうした判断は一切せず、その方がそうせざるを得なかった状況や事情に耳を傾け、受け止めることを第一に考えています。また、同じような辛い経験を繰り返さないように、今後の人生について一緒に考えていくことも大切にしています。
▽Babyぽけっとの基本理念
真実告知という重要な課題への取り組み
ー特別養子縁組特有の課題について教えてください。
竹内:最も重要な課題の一つが「真実告知」です。以前は養子であることを隠すべきという考え方もありましたが、現在は子どもの知る権利の観点からも、適切な真実告知の重要性が認識されています。しかし、いつ、どのように伝えるかは非常に難しい問題です。
そのため、年に1回シンポジウムを開催し、先輩養親の体験談や有識者の講演を通じて、真実告知の方法について学び合う機会を設けています。数百人規模の会員が集まり、経験や知識を共有しています。また、地域ごとの交流会でも、日常的に養親同士で情報交換を行っています。こうした継続的な支援体制が、養親さんたちの大きな支えとなっています。
未来への展望:誰もが幸せになれる社会を目指して
ー今後の展望についてお聞かせください。
竹内:理想は、私たちの団体が必要なくなることです。そのためには、女性が孤立しない社会づくりが重要だと考えています。相談者の多くは、家族や関係者からの適切なサポートがあれば、違う選択肢を見出せた可能性もあります。特に、男性の責任ある関わりが重要で、性教育を含めた社会全体での取り組みが必要だと感じています。
ー最後に、支援を必要としている方々へメッセージをお願いします。
竹内:特別養子縁組という言葉は、まだまだ多くの方にとって馴染みのない言葉かもしれません。しかし、このハードルを高く考えすぎないでいただきたいと思います。子育てに悩む方も、子どもを望む方も、まずは気軽にご相談ください。特別養子縁組は、生みの親も、子どもも、育ての親も、すべての人が幸せになるための一つの方法です。私たちは、それぞれの立場に寄り添いながら、最適な支援を提供していきたいと考えています。